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それぞれの夢

『リオン、十二歳の誕生日おめでと~!』


 子ども達の元気な声で祝福され、リオンは魔力灯に魔力を注ぐ。魔力を通した魔力灯は十二本。テーブルに並べられた魔力灯の全てに淡い光が点った。


 それと同時に一際大きな拍手が沸き起こり、パンパンとクラッカーのようなものが軽快な音を打ち鳴らす。これがこの国の誕生日のお祝いだった。


 この国にはバースデーケーキという風習は無く、誕生日の祝いにはその年齢の本数だけ魔力灯が並べられる。本数が増えると、サイズの大きな魔力灯を用意して十の代わりにするのは、ケーキに立てるろうそくと一緒だ。


 そしてそれらに祝われる本人が魔力を通す。全ての魔力灯に灯りが点れば、その一年は幸せになれるというジンクスがある。魔力制御を習えばこれくらいは簡単にできるので、本気で信じている人はいないだろうが。


 ちなみに魔力制御を習うまでは、親が代わりに魔力を通す。これは、魔力制御ができるようになることが、親からの自立の第一歩と考えられているためだ。


 毎年これをやるたびに、魔力のない世界にいたリオンは思ってしまう。「ああ、魔力があって本当に良かった」と。


 そんなリオンが今年もこっそり心の中でしみじみとしていると、傍に来たティアが天使のような微笑みとともに声をかけてくる。


「リオン、誕生日おめでとう。これプレゼントよ」

「ありがとう、ティア。開けてもいいか?」

「ええ、いいわよ」


 しっかり断りを入れてから、リオンはティアのプレゼントの袋を開いた。


「これは……ポーション、それとペンダントか」

「ええ。リオンなら実用的な方が喜ぶと思って。そのペンダントは魔術が施してあって、少しだけど防御魔術と自己治癒促進魔術がかかっているから」


 実にティアらしいプレゼントだ、とリオンは思った。


 ポーションは傷を治す魔術薬であり、冒険者の必需品だ。ペンダントもリオンの身を守るための魔術が二つも施されている。心配性で、いつもリオンの身を案じてくれるティアの想いがこもったプレゼントである。


「ありがとう。大事に使うよ」

「そうしてくれると嬉しいわ。もっとも、ポーションの方は使わないでいてくれる方が良いのだけど」


 イタズラっぽく笑うティア。


 確かにポーションを使う時というのは、リオンか他の誰かがケガをしたということだ。使う機会が来ないに越したことはない。


 そんなティアの可憐な笑みに、リオンが若干骨抜きにされかけたところで、ジェイグが声をかけてくる。


 実に楽しそうな、イラッとくる笑みを浮かべて。


「いや~さすがティア。リオンに最初にプレゼントを渡すのは私よ! と言わんばかりの電光石火。しかもそのプレゼントは、何ともリオンへの愛に溢れたげふぉっ!」


 その空気の読めない、いやあるいはバカが空気を読んだ結果なのかもしれないが、いきなり現れて散々二人を焚き付けるジェイグの言動にイラッとしたリオン、完全に空気を読んで二人から距離を取っていたミリル、さらに実は周りの空気を読むのが一番上手いファリンが、ジェイグに総攻撃を仕掛けた。


 左右の横っ腹(左がリオン、右がファリン)と、後頭部(ミリル)に強烈な一撃を食らった皆のお兄さん(自称)は、主人公に絡んであっさりと返り討ちに合う三下みたいな奇声を上げて、力なく崩れ落ちた。


「あんたはいい加減空気を読むってことを学習しなさい、このゴブリン脳みそ!」

「そうニャそうニャ。さすがにさっきの空気はファリンちゃんでも行ったらダメってわかるニャ」

「いや……俺はプレゼントを渡したいと思ってるだろう、チビどもの為に……」

「そのチビどもだって、皆空気読んで大人しくしてるわよ! まぁ何人かはご飯に一直線なだけだけど……」


 ちなみにそのご飯に一直線の中にはアルも含まれている。ファリンよりも一歳年上だが、男の子らしくそこら辺の機微には疎い。


「いや……俺は二人の仲おうふっ!」

「いらんお世話してんじゃないの! あんたがでしゃばると碌なことがないんだから!」

「そうニャそうニャ! 脳筋なジェイグにはそんな気遣いは無理ニャ。あっちで大人しく飯でも食ってろニャ」

「……もうその辺にしてあげたら?」


 倒れ伏しているところをミリルにお尻をゲシゲシと蹴られ、ファリンにツンツンと頬を突かれて可愛らしく罵倒されるジェイグに、ティアも哀れに思ったようだ。怒り狂う二人に優しく諭すように声をかける。ジェイグの発言に一番怒ってもいい立場なのだが、こういうところは相変わらずである。


 もっとも、自分が怒る前に他の連中にボコボコされてしまったので、怒るに怒れなかったのかもしれないが。


「ティアが言うから、今日はこれくらいにしてあげるわ」

「さあ、良い子はあっちでエサでも食べるニャ~」


 ティアの言葉に怒りを収めた二人が、ジェイグの両足を掴んで引きずっていく。体格の大きいジェイグを軽々と引きずっていくのは、二人の鍛錬の賜物だろう。何気にミリルもファリンも結構力が強かったりするのだ。


「行っちゃった……」

「ああ、まぁジェイグは自業自得だろう……全く、余計な気を使いやがって……」

「え、何か言った?」


 連れていかれるジェイグに視線を向けながら、リオンが微かに呟く。最後の方はティアには特に聞かれたくなかったので、声になっていたかも怪しい。


 聞き取れなかったティアが首を傾げているが、リオンは「何でもない」とはぐらかした。ティアも特に詮索してくることもなかった。


 こうして始まった誕生日パーティーでいきなりの暴力沙汰はあったが、そのあとしばらくは楽しいパーティーが続いた。


 結局あのあとは、ティアとの甘い空気が無くなったのを察知した子ども達に囲まれ、リオンは子ども達のプレゼントに埋もれることになった。中身は近くの林で摘んだ花やお菓子、さらには珍しい虫の抜け殻など。子ども心に溢れたプレゼントの数々にリオンも温かな気持ちさせられた。


 ちなみに他の仲間からのプレゼントだが、ミリルからは方位磁石のような方角の分かる魔導具、ジェイグからはわずかにミスリルが混ざった合金で作られたお手製ナイフ、アルとファリンは二人で作った小さな魔石入りのバングル(間違いなく発案者はファリン)、リリシア先生からは野営の時などに使えるライターのような魔導具をもらった。


 最後の方にはリオンが明日、孤児院を出ることがわかっていた子ども達が、寂しさに泣き出してしまうという事態が発生。リリシア先生と年長組が総出でそれを宥め、大変な苦労をすることになった。





「リオンがあんなに焦ったところ初めて見たわ」


 ミリルが少し疲れた顔でそんなことを言った。


 あのあと、なかなか泣き止まない子ども達をどうにか寝かしつけ、一仕事を終えたリオンたちがテーブルに集まっている。


 ちなみにファリンとアルも宥める側に回っていたが、今はリリシア先生と一緒に片づけを手伝っていた。なので、今ここにいるのはリオン、ティア、ジェイグ、ミリルという、年長組のいつものメンバーだけである。


「さすがにあんなに泣かれると思わなかった」


 リオンも少し疲れた様子ではあるが、その胸はくすぐったくなるような優しい何かで満たされていた。


 自分との別れを惜しんで子ども達があんなに泣いてくれたのだ。そのことを考えれば、疲れなどすぐに吹き飛んでしまう。


「ミリルもちょっと泣いてたじゃねぇか」

「うっさいバカ! 泣いてなんかないわよ! 変なこと言うな!」


 ジェイグに茶化されたミリルが、怒ってジェイグの頭を叩く。いつものお約束のやり取りだが、そのミリルの目元に涙の跡があるのが分かった。


 つまり完全な照れ隠し。八つ当たりとも言う。


 そんな二人のやり取りを見て、リオンの胸にもいくばくかの寂しさが込み上がってくる。


「皆、孤児院のルールもわかってるし、いつかは皆この孤児院を旅立つってわかってる。それでもやっぱり寂しいのは堪えられないのよ」


 穏やかな笑みを浮かべるティアの目元にも涙の跡が。自分が孤児院を出た日を思い出しているのかもしれない。


「でも、何日かはエメネアで冒険者やるんだろ?」


 ミリルに叩かれた後頭部を擦りながら、ジェイグがリオンに尋ねてくる。


「ああ、少しランクを上げてからの方が、移動が安いからな。金はしっかり溜めてるが、この先何があるかわからないんだ。節約できるところはしっかり節約した方が良い」


 そんなリオンの発言を聞いていたミリルが、「意外」とでも言いたげな顔で呟く。


「へぇ、空バカのあんたなら何も考えずに魔空船に特攻していくかと思ったのに」

「魔導具バカのお前と一緒にするな」

「何よ!」

「何だよ」

「やめなさい」


 ちょっとした小競り合いを始めたバカ姉弟(ミリルの方が数か月誕生日が早い)を、止めるティアお姉さん。


 こんな四人でのやり取りをもう五年以上も続けてきたわけだ。そう思うと、自分で決めたことでも、やはり少し寂しくなってしまう。


「もし旅に出たら、お前達ともしばらく会えなくなるな……」


 そんな寂しさからか、半ば無意識に出たリオンの発言。


 そんな言葉に返ってきたのは……


「え?」「あん?」「は?」


 三人同時に発せられた疑問の声。


 ちなみに「え?」がティア、「あん?」がジェイグで、「は?」がミリルである。


「ん?」


 三人の声にリオンも首を傾げる。


 多分、理由は違えど今考えてることは四人一緒だろう。


 すなわち、「は? 何言ってんのこいつ(ら)?」である。


「リオン……まさかとは思うけど、一人で旅に出るつもりだったの?」

「え? もしかして一緒に来るつもりだったのか?」


 質問に質問で返すリオン。


 そんなリオンの反応に、ティアとミリルは完全に呆れ顔である。ジェイグだけは何故か、「それでか……」と何かを納得したような表情で呟いている。


「というか、そんな話したことあったか?」


 リオンの記憶には、三人が一緒に来るなんて言われた覚えはない。


「だって、あなたと旅の計画を話すときはいつも四人一緒だったでしょう? だから、リオンが旅に出るときは皆一緒だと思ってたのに」


 ティアの発言の前半は確かにその通りである。だが、リオンとしてはただ自分の夢を語っていただけであり、それに皆を付き合わせるつもりなど毛頭なかったのだ。


「なぁリオンよぉ……俺は悲しいぜ。お前とは長い付き合いで、良い相棒だと思ってたのによぉ……」


 ジェイグがリオンの肩を掴み、わざとらしく肩を落として「悲しいなぁ……悲しいなぁ」と呟く。わざとオーバーに見せているのは明らかだが、おそらくその言葉は嘘や冗談ではないだろう。


「いや、俺もそう思ってはいるが……そもそもお前、鍛冶屋の手伝いはどうする?」

「問題ねぇよ。今日で辞めてきたから」

「はぁ?」


 あっけらかんとしたジェイグの発言に、リオンの口から珍しく素っ頓狂な声が漏れた。


「いや、辞めたってお前……」

「前から親方とは話をして、そういう約束もしてたからな。餞別も貰ったし、もうあの店には戻れねえよ」


 ジェイグは親方から貰ったという餞別の金槌を取り出した。多少使い古された跡があるが、ミスリルコーティングされたかなり上質なものだ。おそらく親方の愛用品か何かを譲り受けたのだろう。


 確かにあんなものを贈られたあとに、「やっぱり戻ってきました」では格好がつかない。戻れないのは確かなようだ。


「お前はそれでいいのか?」

「当たり前だろ。そもそも俺が旅に出たいと思った切っ掛けはリオン、お前なんだぞ?」

「……俺、何かしたか?」


 初めて聞いた事実に驚きを隠せないリオン。頭の中でそれらしい出来事を探すも、全く見当がつかなかった。


「お前に言われて作った刀だよ」

「刀?」


 自分の部屋に置いてあるジェイグ作の愛刀の姿が、脳裏に浮かんでくる。


 だがそれがジェイグが旅に出る理由と何の関係があるというのか。


「ああ。この国の剣しか知らなかった俺に、新しい剣の作り方を教えてくれたのはリオン、お前だろ?」

「いや、あれはどこかの本で読んだのを無理やり――」

「だとしてもよ……そのお陰で俺は、世界には俺の知らねえことがたくさんあるんだってわかったんだ」


 リオンの言葉を遮って、ジェイグが自分の夢を語る。


「この国の鍛冶屋で修行してるだけじゃ出会えない武器や金属が、この世界にはまだまだあるかもしれねぇ。胸が高鳴るような武器を、自分の手で作り出せるチャンスを逃しちまうかもしれねぇ。そう思ったら、もうただの街の鍛冶屋じゃ満足できねえよ」


 いつか巡り会うかもしれない何かを見つめるように、ジェイグが視線を遠くへ向ける。


 その姿は、まるで空を見つめるいつもの自分を見ているようで、リオンは少し呆然としてしまった。


 だからよ……と前置きをして、ジェイグがリオンの目を真っ直ぐに見つめて告げる。


「俺にそんな夢を与えてくれたお前には感謝してるんだよ」


 突然告げられたジェイグの想いに、リオンは返しの言葉の一つも出てこない。


 ジェイグがこんなことを考えていたとは知らなかった。


 いつも一緒にいた良き相棒に、自分がこんな風に影響を与えていたなんて気付かなかったのだ。


 刀を作りたいと言ったのは、完全に自分の我儘だ。


 見たこともない武器を素人の話だけで作れ、なんて無茶なお願いを軽口一つで聞いてくれたジェイグには、本当に感謝している。


 いつか自分が一人前の冒険者になった時には、手土産にオリハルコンの塊でも持って礼を言いに来るつもりでいた。ただ、自分の我儘に付き合わせていただけだと思っていたのに、まさか自分が感謝されるとは思ってもみなかったのだ。


「それによ……」


 驚き立ち尽くすリオンに、ジェイグはさらに言葉を続ける。


 その顔はどこか照れ臭そうで、指で頬を掻き、視線を逸らしていた。


「せっかく作った武器ならよぉ、やっぱり最高の剣士に使ってもらいてぇだろ? だから、俺はお前に付いて行きてぇ。俺の最高傑作が、俺が見込んだ最高の剣士に振るわれるのを、この目で見てぇんだよ」


 なんて胸が熱くなる言葉だろう。


 いつもくだらないじゃれ合いを続けていた兄貴分。十年近い付き合いだが、このジェイグという熱い男の心意気には何度胸を打たれたかわからない。


 だからこそ、そんな男の想いに情けない顔で応えるわけにはいかない。


 胸に込み上げてくる想いを今は抑えて、いつものリオンでこの心意気に応える。


「生半可な刀じゃ満足しないぞ、俺は?」

「当ったり前だ。こっちこそ弱い剣士に俺の大事な剣を使われたくねえからな。不甲斐無い姿見せたら、テメエの刀、目の前で叩き折ってやる」

「自分の大事な刀を自分で折るなよ」

「うるせえ。テメエがちゃんとしてたら問題ねえんだよ。期待外れなことすんなよ?」

「当たり前だ」


 軽口の応酬。


 他愛もないじゃれあい。


 それがリオンとジェイグの普通。


 そんな楽しい時間がこれからも続くのだ。


 文句など何もない。


「まったく、暑苦しい男どもねぇ」


 そんな二人のやり取りに、やれやれとでも言うような顔でミリルが茶々を入れる。


「ミリル、テメエ……人がせっかくカッコつけてるってえのに……」

「はいはい、そういうのはあとで、二人で、たっぷりしっぽりやんなさい。夜は長いんだし。邪魔しないから」


 何かそう言われると凄い嫌な感じがする。


 別にジェイグはリオンにとって良き相棒ではあるが、妙な関係ではない。


 断じて、絶対、この世がひっくり返ってもあり得ない。


「それよりも……」

「いや、そこで話変えるなよ。なんかものすごく変な空気になるだろ」


 リオンとジェイグの二人からジト目で睨まれても、ミリルはどこ吹く風といった様子でそれを受け流す。


「知らないわよ、そんなこと。それよりもリオン。あんた魔空船が欲しいって言ってんのに、操縦とか整備とかできるわけ?」

「いや、それはあとで覚えれば……」

「整備には魔術も必要だけど、あんたにできるわけ? 画伯のあんたに」

「そのあだ名はやめろ」


 過去のトラウマを穿り返されて、リオンの心に深いダメージが刻まれた。


 別にリオンは何も考えていなかったわけではない。


 そもそも自分の魔空船を手に入れるだけのお金を貯めるのは、かなりの時間を要するだろう。どんなにリオンに実力があっても、冒険者ランクを上げるのは簡単ではない。それこそ、数年、あるいは十年近い時間をかけてランクを上げ、そこでさらに長い時間をかけてようやく手に入れられる。


 魔空船とはそんな代物なのだ。


 だからそれまでに操縦は覚えればいい。整備のための技師、魔導具の整備なので魔導技師と言うが、それが必要なら雇うなり仲間を集めるなりすればいい。


 行き当たりばったりとも言えるが、先の長い夢なのだ。焦る必要もないと思っていた。


「つまりお前が操縦の仕方を教えてくれて、おまけに整備もやってくれると?」

「そういうこと。言っておくけど別にあんたの為じゃないわよ。あたしも自分の魔空船が欲しいの。色々改造して、性能上げて、世界最高の船を造って自分で操縦したいの。だからこれは自分のため。勘違いしないでよね」


 淡々と、何でもないことのように言い切るミリル。


 たとえその発言がリオンの頭の中で「べ、別にあんたの為じゃないんだからね! 勘違いしないでよね!」とテンプレなツンデレフレーズに変換されていても、当然ミリルは気付かない。


 というか、さっきからミリルの発言を聞いていて思ったのだが、ミリルの言葉には一切の疑念がない。リオンが魔空船を手に入れることを微塵も疑っていないのだ。


 魔空船を手に入れるのは、そう簡単なことではない。


 きっと同じ夢を抱いても、どんなに努力をしても、その夢に届かない人の方が多いだろう。運だって必要になる。厳しい道のりに途中で諦めてしまう人も、不運に見舞われて諦めざるを得ない人もいるだろう。


 そして、前世の空野翔太のように道半ばで命を落としてしまう人も。


 それだけ過酷な夢。


 遠い夢。


 それをリオンが叶えると、一片の疑いもなく信じている。信じてくれている。


 それがどうしようもないくらいに嬉しかった。


「あ、魔空船には鍛冶工房の設置も頼むぜ」

「はいはい、わかってるわよ。どのみち外装とか、部品の加工も必要になるから工房は作らなきゃだし、ついでに武器も作れるようにしてあげるわよ」

「ミリルさん、マジ天使。惚れちゃうぜ」

「うっさいバカ、キモイ」


 感激したジェイグを、ミリルが容赦ない一撃で沈める。相変わらずの二人である。


 というか、何気にジェイグも、リオンが魔空船を手に入れることを全く疑っていないようだ。


(ホント、最高の仲間たちだな。俺にはもったいないくらいだ)


 未だにバカなド突き合いを続ける二人に、感謝の念を抱きつつ、リオンは最後の一人へと視線を向けた。


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