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マリーと謎の地獄耳

「大島さーん」


 マリーの呼び掛けに日本陸軍中将が振り返った。

 同じ年齢であれば、日本人の少女でも小柄なほうに入るだろう。


「やぁ、マリー少佐」


 いたずらっぽく言葉を返す大島浩に少女はニコニコと笑顔で駆け寄った。

 胸もなければ尻もないが、それでも充分かわいらしい。


「ガダルカナル島の作戦が成功したって聞いたの」

「あぁ、そのようだ。全く我が国……、いや、世界屈指の練度を誇る機動部隊が壊滅したと情報を受け取ったときは胆が冷えたが。海軍も我が陸軍にもっと歩み寄りを見せていれば、あのような醜態をさらす様なことはなかったのだ」


 ガダルカナル島という言葉を聞いた大島浩が、盛大に片方の眉尻をつり上げてから唇をへの字に曲げる。

 一昨年前の決定的な敗北を思い出したからかっもしれない。

「恐い顔しないで……」

 苛立った表情の大島をマリーがたしなめる。

「あぁ、これは失礼」


 言われて肩をすくめた大島は、自分からマリーを大使館に呼んだことを思い出して表情を改めた。

「お年玉をあげよう」

「お年玉?」

「そうそう、我が国にはそういう新年の習慣があるのだよ」


 気易い言葉をかけながら、大島浩はスーツのポケットを探って、金色の懐中時計を指しだした。

「スイスの時計職人に作ってもらったものだ」

「ありがとうございます」


 両手を差しだすようにして受け取った彼女の素直さに、大島は特に他意もなく少女の金髪をかきまわした。

「ガダルカナル島の作戦にすごく強い兵隊さんが割り当てられたって聞いたわ。日本人もすごいのね」

「そうそう、なんと言ったかな。確か舩坂某と聞いたが、まぁ、末端のことまではわたしのところまでは伝わってきていないが。一騎当千の戦士だな」


 そこまで説明してから、なにやら突き刺すように鋭い視線を感じて大島は顔を上げた。

 金髪の少女にいつも保護者面をしてつきまとっているという、禿げ頭の中年男の姿に日本人の駐在武官は鼻白んだ。


 一応、同盟国の軍人なのだから、なにもそんな顔で睨んでこなくてもよかろうに。


「君は日本人の女の子みたいに寸胴だから、着物も似合うかもしれんな」


 つるりと大島の口が滑った。

「……――マリーのスタイルが悪いとはどういうことだ!」

 ドイツ人の中年男の怒号が響いたが、大島は大島で「少なくともスタイルが良い方ではない」と思ったのは言うまでもない。


果たしてマリーが地獄耳なのか、騎士気取りのおっさんが地獄耳なのかという話(´・ω・`)

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