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そうだ! お迎えに行こう!

「……というわけで」


 エーリッヒ・レーダーが少女に紅茶のカップを差しだしながら提案したのはある週末の午後だ。


「デーニッツの海軍の潜水艦が寄港するから出迎えに行くのだが、一緒に行かないかね?」

 そう言われて、少女は物珍しさも手伝って快くレーダーの提案を快諾した。


 元々、デーニッツと余り友好的ではないレーダーだったから、どうにも出迎えるといっても余り心楽しくはない。

 けれども前線で戦う兵士達には上層部の関係性など関わりのないことだ。


 たとえ面白く思っていなくても、仕事をしなければならないのだ。


 そんなわけで、キールに潜水艦の帰還を出迎えたマリーとレーダーだったのだが。


 異臭を放つ潜水艦乗りたちにねぎらいの言葉をかけるレーダーに反して、その隣でベックから贈られたコートを身につけた少女の方はギョッとした様子で青ざめる。


 かわいらしい少女の出迎えに浮き足立つ水兵達がなにげなく手を伸ばしてその頭を撫でようとした瞬間に、マリーはさっとその手から逃れるとレーダーの背後に姿を隠した。


 確かにしらみにまみれ、異臭を漂わせる水兵たちは、ベルリンで清潔で快適な生活を送る少女にとっては異常な相手だったのだろうともレーダーは思った。


 とにかくすごい異臭なのだ。

 それはすでに異臭を通り越して悪臭といったほうがいいだろう。過酷な任務を終えて命からがらドイツに帰りついた水兵たちには残酷な話だが、そんな状況にマリーがたえられるわけもなかったのは言うまでもない。

 そんなマリーの様子に驚いたレーダーと水兵たちだったが、一方でマリーは参謀将校出身の貴族的な男の背中にぎゅっとしがみついてからレーダーの良い香りを漂わせるコートに鼻を押しつける。

「臭い……」

 半泣きの少女の声に、レーダーは苦笑いを浮かべると暖かな手を後ろに回して彼女の頭を軽く撫でやった。


「申し訳ありません、閣下……」


 困惑した艦長にそう言われてレーダーは「いや」と言葉を返して軽く片手を振って見せた。


「無事に帰ってきてくれてなによりだ」

「航空支援のおかげです」


 潜水艦隊に必要なものを、デーニッツ同様にレーダーにもよくわかっている。


「ご苦労だった」

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