マリーが一番大事
最近、国防軍の首脳部と仲が良すぎる件について……。
割と真剣に頭を痛めていたカルテンブルンナーは、思い切ってハルダーとベックを問い詰めるに至った。
陸軍参謀本部の中庭で、童心に返ったように雪まみれになって遊んでいるグデーリアンとカイテル。
さらにお上品を絵に描いたようなレーダーまで混ざっている有様だ。
身長の高いカイテルに肩車をされたマリーが、喜んで自分の視線よりも下になったグデーリアンに手を伸ばす。
「軽すぎる、もう少し食事をきちんととらなければいかん」
健康的ではない、というのはともかく、実際、貧弱なことは問題だ。
白いミトンをした少女の手に、雪兎を作ってやったレーダーに、マリーは花が咲いたような笑顔を向ける。
「あれのことか?」
カルテンブルンナーの苦情に、ハルダーがしかめ面のままで窓の外を見上げた。
仲良きことは美しきかな。
「……そ、そうだ」
「別に本人たちに悪気があるわけではなかろう」
馬鹿なことに苦情をいれにきたカルテンブルンナーを一蹴するハルダーは二メートルにもなろうかという長身の青年をけしかける。
「貴官もまざってきたらどうかね?」
屈託のない笑顔で、国防軍の重鎮たちと遊んでいるマリーには、確かに裏はなさそうだ。
カルテンブルンナーとしてもマリーが傷つけられず、楽しそうにしていればそれはそれで良いのだが、ヒトラーとヒムラーの目もあることを考えると頭痛が再発した。
「しかし……」
「若いのは元気なことがいちばんだからな」
素っ気なく言ったハルダーに、カルテンブルンナーはすごすごとその場を引き下がることになった。




