理不尽な現実
「いったい全体これはどういうことだ!」
激昂したクルト・クノブラオホに、エルンスト・カルテンブルンナー、そしてカール・ゲープハルトが鼻白む。
一様に「今さらなにを言っているんだ」と冷ややかな眼差しだが、クノブラオホは国家保安本部職員のひとりを調査した報告書を片手にぷるぷると震えていた。
「どうもこうも、あの子とグデーリアン上級大将とハイゼンベルク博士が個人的に親しいと書いてあるだけだろう」
ついでにベックも。
冷静にカール・ゲープハルトが突っ込みを入れると、機密の保全上としてどういうことなのだ、とクノブラオホが怒り狂っている。
「親衛隊の最高機密が漏洩することは考えないのか!」
「……そう言われても」
クノブラオホの様子にカルテンブルンナーが眉をひそめる。
クノブラオホに提出されたファイルに挟まっているのは、特別に作られた小さな戦車兵の制服に虎の耳と尻尾をつけた少女とグデーリアンの写真だ。
ほかにもハイゼンベルクに雪道の競歩に連れだされて辟易している写真など、非情に親しげな様子にクノブラオホは怒り狂っていた。
なにをそんなに怒り狂っているのかと思えば答えは簡単だ。
親衛隊と政府、党と国防軍、そして突撃隊や産業界との間の権力構造の間に唐突に少女の存在が割り込んできたらから、それが余りにも予想外でクノブラオホは激怒しているのだ。
薄手のドレスを身につけた夏の写真は少女らしい色気が漂っていて、これが小児性愛者などが目の当たりにすれば襲いかかったところでおかしくはないだろう。
薄い胸――骨の上の張り付いた白い皮。
とても豊かとは思えない胸と、ドレスを肩で吊る組紐がひどく危うげな色気をたたえていた。
「もしや、グデーリアン上級大将とハイゼンベルク博士がかわいい女の子と仲が良さそうで羨ましいのか? 中将?」
ゲープハルトが投げかけた問いかけに、再びクノブラオホが怒りを爆発させたのは言うまでもない。




