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「好き」と「特別」

「だーい好き」


 って言ったらどうする?


 マリーがいつものようににっこりと笑いながら、そう問いかけた。


 机についてペンを走らせていたヴェルナー・ベストは思わず、ずるりと椅子からずり落ちかけて自分の耳を疑った。


 思わず室内を見回して、ハインツ・ヨストが不在であることを確認する。


「そんなことを軽々しく言うもんじゃない」


 ベストの咎めるような言葉にマリーは華奢な指先で男の二の腕を押さえながら、頬をすり寄せる。

 筋肉量の違いからベストのほうがずっと体温が高いため、くっついていると暖かいのだろう。

 少女の補佐をするようになってから、今まで以上に身だしなみに気を遣うようになった青年官僚は少量の香水を身につけるようになった。もっとも、そんなベストは少女自身が香水を身にまとうことについては否定的だ。


 ――香水はね、下着みたいなものなのよ。


 誰だったか、女から聞いたような気がする。


 そう考えると、なぜだか性的ないやらしさを感じてしまって、少女がことさらに香りをまとうことについて好意を寄せられない。


「良い臭い」

「……そうか」

「本当よ?」


 青い瞳でにこりと笑った彼女に、ベストは理知的な光を瞳に閃かせて瞠目した。


「本当よ、ベスト博士のこと、大好きよ」


 マリーはそう言って笑っていた。

「――ありがとう」

 自分だけが特別なのだろうか。

 それともその他大勢の人間たちと同じように「特別」なのだろうか。


 そんなとりとめもないことを考えてしまいそうで、ベストはそうして黙り込んだ。



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