金髪の珍獣 マンシュタインとグデーリアンの対話
戦車教本のための虎耳と尻尾。
ついでに手袋。
……は、たいそう気に入ったようだ。
「頭の固いハルダーのじーさんが首を縦に振るかどうかそれが心配だったんだ、エーリッヒ」
力説する友人に、マンシュタインは肩を落とした。
友人の言う「じーさん」とほとんど年齢は変わらないじゃないか、と思うエーリッヒ・マンシュタインだったが、言うだけ無駄であることを理解している彼は口にはしない。
「そのうえ、これはおまえの趣味なんじゃないか?」
「かわいいだろう」
カラー写真は珍しい。
キラキラと光る金色のまっすぐな髪を、毛先は少しだけカールしているのか、内側に巻いている。
青い眼を細めて笑っている少女の笑顔に、マンシュタインはやれやれと首を左右に振った。
「それで、このちっさい戦車兵の軍服はどうしたんだ?」
「本人が気に入って持って帰ったそうだ」
「なるほど」
それなりにかわいらしい腰丈の黒いジャケットはなかなか現代的だった。
髑髏を掲げる鉄の騎士。
――栄光あるドイツの戦車兵。
「……いろいろ間違ってないか?」
「かわいい女の子の写真付きなら若い連中だってやる気になるだろう」
「……――」
かわいいには違いない。
……が。
「虎というより子猫だな」
なぜか胸をはって得意げな顔をしているグデーリアンにマンシュタインは溜め息をついた。
溜め息をつきつつも目尻を下げたマンシュタインは、虎耳、尻尾に手袋をした少女がグデーリアンの長身を見上げて無邪気に話し込んでいる様子がファインダーに映りこんでいて、それがなぜだかほほえましかった。
グデーリアンはいつも自分に正直だ。
それがマンシュタインには羨ましい。