性感帯のお話 * 微エロ注意
マリーの部下として、ヨーゼフ・マイジンガーは一度目の夏を迎えた。
正確には一度目ではなくて二度目の夏だが、世間一般的な「一度目の夏」とやらを、マイジンガーはただ、親衛隊内――あるいは警察組織内での権力闘争に明け暮れていたからほとんど覚えていない。
大きく背中を開けたワンピースは、マイジンガーが彼女のためにとわざわざ身の丈には合わないだろう仕立て屋でデザインして仕立ててやったものだ。
あいかわらず儚げな華奢な印象の彼女は病的に白く細い腕を伸ばして麦わら帽子のツバを指先でつまんだ。
腰の辺りまで夏の日差しに晒された白い肌は、どこか息を呑むような色香さえ感じさせて、マイジンガーは我知らずごくりと唾液を飲み込んでから自分の感じたそれを否定するように左右にかぶりを振った。
少しは日焼けをしたほうがいいと薦められて、こうしてマリーは信頼できる護衛官でもあるマイジンガーと共に夏の湖と山を見下ろす自然公園を訪れていた。
湖の水際を裸足で歩いたり、森を散策したりする少女はそうして湖畔の倒木に腰掛けて昼食を取ってから、そのままマイジンガーに寄りかかって眠り込んでいた。
燦々と降り注ぐ夏の日差し。
日照量の少ない北ヨーロッパに住む者にとって、健康的な問題から日光浴は重大な問題だ。
眠り込んだ少女をそっと横たえてやると、男の指がうっかり彼女の背中を触れた。
いや、そうではない。
彼女に触れるのはいつものことだ。
だから、他意はなかった。
「……う、ん」
マイジンガーの指先に少女が体をかすかに震わせる。
ちょうど腰の下辺り。
上からであれば、わずかに尻の割れ目が目に入ったかも知れない。ちょうどその上だ。そんなマリーの反応に、マイジンガーがぎょっとしてから硬直するが彼女は目を醒ます様子もなく腰をわずかによじっただけで眠り続ける。
「マリー……?」
問いかける。
けれども、もちろん彼女は目を醒まさない。
思わず辺りを見回して誰もいないことを確認してから、彼は一瞬でからからに渇いた喉を潤そうとするように何度も唾液を飲み込んで太い指を伸ばした。
警戒心のない彼女の、開放的なワンピースでは少し布をずらしただけでその体は簡単に触れることができるだろう。
そっと壊れ物に触れるようにもう一度白い素肌に指先で触れてみる。
声もなく反応を返した彼女は無意識か気持ち良さげにマイジンガーの膝に頬をすり寄せた。
ここが気持ちが良いのか、と半ば無意識に少女のそこを撫でてやりながら、しばらくしてマイジンガーは我に返った。
「ふ……、ぁ」
マリーの吐息が聞こえて、ヨーゼフ・マイジンガーは真っ青になって強くかぶりを振ると、少女の腰から手のひらを引きはがす。
「マリー!」
怒鳴りつけるように彼女の名前を呼んだ。
「お、起きろ。そろそろ下山しないと電車に間に合わない」
時刻はまだ一時過ぎで焦る時間でもないのだが、マイジンガーは緊張しきった声を張り上げて少女を抱き起こした。
「マイジンガー上級大佐?」
気持ちよく寝ていたところをたたき起こされたマリーは不満げに唇を尖らせた。
「……夢で、誰かがずっと撫でてくれてたのに」
不満を訴える少女に、マイジンガーは半ばドキリと心臓を高鳴らせてからそうして視線を彷徨わせるのだった……。