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七不思議部  作者: 尚人
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第二話 噂のタイムマシーン 後編

 『噂のタイムマシーン 後編』


 

 初めてこの古い、いや、まだ新しくそのボディーが美しかった懐中時計がその力を示したのは今から何十年も前のことである。この時計の不思議な能力を始めて使った人間は野球部のピッチャーのポディションにつく麻野 太郎である。彼は大事な試合の前にも関わらずその黄金とまで言われた腕を昨晩の喧嘩で痛めてしまった時であった。彼は他のメンバーの練習の最中、一人部室に籠もり泣いていた。彼は目の前の机に置いてあるその懐中時計を左手で徐に手に取り、その時計の針を戻した。

 

 「昨日に戻れたら、俺はあんな事をしない・・・。俺も試合に出れたのに・・・。」


 カリカリカチ、詰まった様なその感覚と共に彼の目の前が真っ白になった。

 



「で、本当にこれがタイムマシーンなのかよ。」


 明である。彼の思うタイムマシーンとは、未来のロボットが乗ってきたような乗り物をイメージしているためである。徐ろに明がその懐中時計の針を動かそうとした時、翼はそれを明らから取り上げた。


「無暗矢鱈に針を動かさない方がいいよ。」


 何でだよっと明が翼の顔を睨んだ。その横から楓が二人にコーヒーを出しながら言った。


「だってもし、本当にタイムマシーンなら時を越えちゃうよ。」

 

 あっと納得する明を無視し、翼は話を進めた。


「もしじゃなくて、これがタイムマシーンなんだよ。」


 ニッコリ笑う翼はまるで子供のようである。


「じゃあ、それで好きな時間に行けるってか。」

「じゃあまあ、僕の肩に手を当ててよ。」


 言われるままに明と楓は翼の方に手を置き、よしっと翼は手に持つ古い懐中時計の針を深夜の三時に向けて針を進めた。

 ガリ、カリカリカチ。詰まった様な音と共に翼達の目の前が真っ白になった。 

 真っ暗な部室内は不気味に静まり返っていた。辺りは闇に包まれ、聞こえるのは夜独特の音だけだった。

 

「もう、始ってるよ。」


 そう言うと翼は自分の机の上に置いてあるテレビのスイッチを入れた。テレビの映像は言うまでも無く翼の趣味の番組だった。そんな翼を明と楓は呆然と見つめるだけだった。


「ねえ、翼。ここって。」


 まだ状況が分からない二人で最初に口を開いたのは楓だった。


「ん?ここ。ここはそうだな〜僕らが居たあの時間から約十一時間後の世界かな。いや〜俺って寝るの早いからさ〜。やっぱリアルでみたいじゃんか〜。」


 呆れ顔で楓は翼を見ていた。


「ん!?何々。今日は番組を急遽変更して・・・。」


 テイションの高かった翼は一気に鬱状態になった。ゆっくりと懐中時計を取り出し、二人の方を見て翼が言った。


「ほら・・・帰るよ。僕に捕まってください・・・」


 あ・・あぁと明がそんな翼を哀れみ、楓と共にまた彼の方へと手を置いた。


「えっと、あの時間に戻るにわっと・・・。」


 カリカリカチっと詰まった音の後、彼らは又その不思議な感覚に襲われた。目の前には楓の入れたコーヒーが湯気をあげていた。


「これどうやって使うんですか?」


 不思議そうな顔で雪森 蘭は手に持つ古い懐中時計を見ながら言った。明は蘭の横に無理やり座りこみ得意げに説明を始めた。それを蘭は少し距離を置きながら聞いていた。しばらくして、彼女が立ち上がり時計を持ち部室を後にしようとした蘭を翼が止めた。


「我々も同行します。それがイヤなら、それを返してください。」


 蘭は反論をしたものの、翼との口論ではとてもじゃないが勝てなかった。渋々、彼女は同行を承知した。彼女の方に楓が手を置き、楓の方には明と翼が手を置いた。

 目を開けると、夕暮れ時の教室に翼達はいた。そこで突然、雪森 蘭が何故この時計を探していたのかを静かに語り始めた。

 

「昨日、私の親友が交通事故で死んだの・・・。そこで私はこの時計の事を知ったわ。もうすぐここに彼女が私を向かいに来るわ、昨日は断ったけど今日は違う・・・。私が彼女を救うの・・・。」


 彼女が言ったとおり、彼女はここへ来た。

 

「蘭。一緒に帰ろう。あ・・・お友達?」

 

 眼鏡を掛けた女性が教室に入るなり言った。蘭は翼達をチラッと見た後、戸惑っている彼女の方を向き、ううんちがうのっと言いながら彼女の元へ走り寄った。


「僕らも行こう。」 翼だ。それに楓と明が相槌をうち彼女の後を追った。


 楽しそうに話をしながら、彼女達はその現場へと着実に近づいていた。横断歩道を渡るその瞬間にその時は来た。危ないっと歩道に突っ込んで来る車から蘭は見事に彼女を救った。


「やった。大丈夫。大丈夫だよね。」


 涙を流しながら、蘭は彼女をまじまじと見つめた。彼女が口を開き何かを言うのが翼達にも見えた。キキーっと大きなブレーキ音の後に歩道に突っ込んだ車を避けようとしたトラックが彼女へと向かって走って来たのだ。

 イヤーっと大きな声を上げその場で蘭はしゃがみこんだ。急いで、翼達は蘭に駆け寄った。

目の前の恐怖に楓は足がすくんでいたが、無理に翼が楓の腕を引っ張った。時計をセットし、翼達は元の時間へと戻った。

 大粒の涙が蘭の瞳から溢れ出す。楓もあの光景からか蘭と同じく涙を流していた。翼と明は唯黙って居ることしか出来なかった。


「もう一度・・・。もう一度あの時間へ生かせて。」


 そう言った彼女の瞳には怒りのようなものが見えた。


「駄目です。」

 

 翼が言った。勿論彼女からはどうしてっと問いが帰って来た。


「この時計は過去や未来へは自由に行き来できますが、時を変える事はできないようです。だから、何度彼女を救ったとしても、彼女に起こる事は変わらないのです。」


 それを明と楓は黙って聞いていたが、蘭はそれでも反論を続けた。


「やってみないとわからないわ。さっさとあの時に戻してよ。」


「彼方は!彼方は彼女に何回苦痛を与えれば気が済むんだ!」


 普段温厚な翼が起こるのは、明や楓も久しぶりに見る光景だった。そんな翼の言葉で彼女はうつむき唯涙を流すだけだった。

 夕暮れ時、翼達4人は彼女のお墓の前にいた。楓と蘭はお墓に花をそえ、そっと手を合わせた。

 「あの時、彼女は私にありがとうって言ったの・・・。」

 

 涙を流す蘭を楓はそっと慰めた。


「これは、無いほうがいいな。明頼む。」


 そう言うと翼は持っている懐中時計を明に渡した。明はそれを思いっきり握り潰した。


「あ!てことは、今日のアニメは放送されないのか!ビデオ録画切っておかなきゃ・・・。」


 ははっと明に笑われた。


「二人とも〜帰るよ〜」


 楓が二人を呼ぶ。二人は、粉々になった懐中時計を振り返ること無くその場を後にした。風が強くなったその時に彼女がありがとうっと言ったのが聞こえたような気がしたが、それを確かめる術はもう無かった・・・。

 完成度の薄い話になってしまいすいません^^;

 これらを含めてこれからの話を頑張って行きたいと思っています。

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