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あ、

僕は僕を自由にしていいだろうか

慎重に 正解を出せ

僕のこの体が、僕のものじゃないのなら

詐欺まがいのとんだ冤罪だ。

僕は僕を僕と信じて生きていた僕は僕でなくてそしてそのことを、

僕だと思っていた奴は知らなかった。

知らないのにどうして僕じゃない僕はソイツであることに不安を持っていたのだろう。

どうしてソイツはソイツでいられたのに悲しむのだろう。

僕はなぜ僕なのだろう。


僕が僕でなければ、もう少し僕を知ることができたのにな。


だからこそ

僕じゃない僕は僕自身になりたかった。



―――



1日を大切に生きて

その言葉は一体どこで消えちゃったんだろうか 僕らの近道

翼で羽ばたき飛んでくよ また一緒に、笑いたいなぁ また一緒に、泣きたいなぁ 君は笑ってこういうだろう あなたに翼なんて生えてないでしょう

また今日も遅くなるよ 仕事が溜まってるんだ なるべく早く帰ってくから 怒らないでいてください 君の誕生日覚えてないわけじゃないよ 祝いたくないわけなんかじゃないよ 出来ることなら僕の翼をむしって、プレゼントだけでも乗せて飛ばしたい 君は笑ってこういうんだ、あなたに翼はないでしょう

ずいぶん遠くに来ちゃったな もう君とは会えないのかな 翼はいつかほどけて羽になって 君のペンの飾りになればいい



―――



mydream

一度忘れた夢だから もう二度と手放したくないんだ 昨日の軌跡を覗き込んだら 僕が楽しそうに笑ってた 何と言われたっていい 何だっていいよ 何だっていいよ 自分を信じてみよう それだけが僕を信じたから



―――



並木道

当たり前のように君が僕の手を引いて 進む世界 君の道は僕の道で 桜が舞い、青葉が揺れ、紅く染まり、散り始める並木道で わき道なんか何処にもなくてただただ一方通行 反対方向に走り去る人はきっと間違えてしまった人で、また新しい出会いをすれば戻ってこれると思うんだ 色とりどりに飾られた写真のように 美しいのだけれど ああ、美しいだけなんだ それだけなんだ 表面的な君じゃなくて儚さや醜さすら分かち合えるようなそんな君がいいんだよ 直に触れて感じること以外に全て解りあえることってあるのかな 桜が舞い、青葉が揺れ、紅く染まり、散り始める並木道で わき道なんか何処にもなくてただただ一方通行 思いつきを現実にすることがこんなに難しいなんて 願いを真実にすることがこんなに大変だなんて 桜が舞い、青葉が揺れ、紅く染まり、散り始める並木道で わき道なんか何処にもなくてただただ一方通行 反対方向に走り去る人はきっと間違えてしまった人で、また新しい出会いをすれば戻ってこれると思うんだ そして僕は たぶん間違いを犯したのだけれど 証拠に隣に君が居ないのだけれど 反対方向に歩きだすことが出来なくて もちろん一人だから進むことも出来ないまま 並木道は移ろい僕だけを置いてゆくんだ


―――



心的距離

突然僕らは出会った 唐突なまでに出くわした電車の急ブレーキさながらに皆一緒になって倒れてく まっさかさま 急降下 そんな言葉が似合うと思うんだ 「ここ、いいですか?」「どうぞ、空いてますから」 だ、なんてさ。綺麗とかなんとか思わずにただ笑っているのは楽しくて この微妙な距離がなんか好きで 恋 はさすがに無いでしょ?(さぁ? 一体これはなんですか 心の病ってものですか「いやいや違うきっとそれは“恋”の病です、ね」友達の言葉繰り返し そんなまさか、と言ってみる「そのまさかだよ」と言ってくるソイツには後で奢らせよう 心臓の音うるさくて ちょっと黙れよ黙れってマジ死んどけ そしたら僕も死んじゃうのか 会えない 会えない 会えない、だって偶然 知らない 知らない 知らない、心的距離 心地良かった距離感も 今では憎むしかないだろう ドキドキしちゃうからって 出来るだけ端に寄ったんだ だけど話しかけてくれた その優しさだって嬉しかった でも遅刻なんて出来ないから 通勤時間帯に乗っていて欲しいんです 次の電車まであと3分



―――



思春期

苦しみそれが唯一の僕らに課せられた使命だとしたら 誰も彼も気づかない間に夜は明けて、心の闇だけ明けきれない 正体なんて知らないよ いつまでも続くと思ってる「「待って」は無しです。だって、皆スタートラインは一緒だから」 なんて問答無用でピストル鳴らす そんな大人が大嫌い いつかその爆竹が、実弾に変わる日を恐れてる 知らないことを恐れるなんて当たり前を、僕たちはゴミ箱に捨てたんだ 迷っては振り出しに戻る僕たちを 客観視したとき とても馬鹿に見えて恥ずかしかったから



―――



言いたいことは 言ってよ イライラ 嫌嫌 嘘臭い 何なの一体 私はワタシで君はキミ 苦しい言葉 口から延々と 混ぜて混ぜて いつのまにか 本物へ ああああ 聞いてよ 本音より本音な私のウタ 裏を読んじゃいけないウタ、そのまま受け止めて 心臓、鼓動 トマラナイデドクドク 感じたい なんて我が儘 私はワタシで君はキミ 優しい言葉 中々言えない 冗談混じりは いつも通り冗談に ああああ 聞いてよ 本音の反対その反対 裏を読んじゃいけないウタ、そのまま受け止めて ああああ なんでよ どうして 間違ってなんていないでしょ? 愛した君 もう居ないの



―――



それが残念だと感じたのは僕だけじゃないはず 待ってよ 体外受精な君 僕はとうとう、何から生まれて何に育てられたのかさえ忘れてしまったよ してやったり顔を潰して、もう君じゃなくなれば君は永遠に自由じゃないか そして僕はなにをするでもなく永遠に僕だ 羨ましいんだろう、間違っちゃあいないよ そうあからさまに嫌な顔をしないでくれ 僕が君を好きだということは 不変で不便で不憫だ そうだろう



―――



ノック

ねぇ ノックしたよ 扉を開けてよ 仕方ないから ドア越しで ねぇ 耳を塞がないで 怖いのは知ってるよ だけどね ねぇ 泣かないで 悪い夢は夢のまま 消えてなくなるから 僕はあの本を読みながら君が泣きやむのを待てばいい 苦しまないで 真っ直ぐでいい 曲がらないといけないと思っているだけ ならそんなのもういらない このままほら 愛してるだけでいいじゃないか ノック ノック もう一度ノック 僕が泣きそう 手がかじかんで ねぇ ねぇ 悪いけどさ 辛いのは君だけじゃない ねぇ ねぇ 悪いけどさ 辛いのは君だけじゃないの



―――



居る

居なくなればいい 全部とは言わないから 僕といらない何かだけ 死ぬ じゃない 死ね そんなこと考えてられない忙しさにだって 耐えられないんだろう 消えてしまえばいい 消えてしまえばいい 居なくなればいい なんで なんで なんで?僕はここにいるから消えてしまえばいいと願うのだけれど ここじゃないどこかにはきっと順応出来ないんだろうな じゃあさ 僕はさ 一体どこにゆけばいいの?教えて誰か 教えて 僕はマチガッテナンカナイ その理由を生まれたての命でも分かるよう説明してよ 消えかけた命に悲しみの反動を渡してよ 知ってほしいだけなんだ できれば微笑んで欲しいんだ 僕の人生そのものと この心の葛藤に たぶん僕が見せた初めての「涙」は 誰かの苦しみを受け取ってしまった証 だから僕はそんなアナタの分笑って生きてやろうとしたんだ「今日もイキテル」そう言うために そうだ 生きてるだけで幸せだったあの頃へどうすれば戻れるの 今まで何を犠牲にして何を得てきたの どうして涙を流すほど悩み抜いた答えが 数年という短い間にただの言葉になってしまったの 急いでいると見落とすのに 急いでなくとも見落とすのは どの式でも成り立たないと知っているからなのかな 悲しいよ だから君が僕の苦しみを背負って生まれてきてくれた時 それだけで嬉しくて また泣いた 泣いている君を見て やっぱり泣いた 君ほど大きな声じゃないけれど 大人としては笑われてしまうくらいの声で 必要以上に愛してる だって君は僕であって 僕の涙はまだ枯れていないから だから君の命を守るために まだ僕は死んでやらないんだ 消えてやらないんだ 居なくなってたまるか ごめんね 僕の居場所は今はここにある その答えで許してほしい 変わることもあるかもしれないけれど 今は許してほしい



―――



体不必要精神完璧主義者

灼熱に妬かれて爛れた皮膚ならもう必要はないからフィルムのように千切って剥がして 腐れ果てた内臓など引き摺りだして小さく刻んで只の肉塊にしてしまえば良い 頭痛がしてきたのなら止める為に脳髄を麻痺させて 本当に何も感じなくなったならそれはそれで良い結果。 全てが解決したあと残っているものはなんだろうか ただ辺りを意味無く見回すだけの眼球? 声帯が居なければ何も出来やしない薄い唇? それとも、心? 形が無いものが一番だったりする一例 だったら人間なんて『形』は必要無いじゃない 全て『心』だけだったら、欲望も憎悪も醜態もその他諸々さえ無くなるんだ だのに皆、形を持ってしかもバラバラで生まれて来たものだから相手の事何も解りきっこないから確かめ合って蔑み合って愛し合って憎み合って認め合って疑い合って笑い合って、 抱き合って殺し合って教え合って離れ合って救い合って どちらに進むのかとか 難しいことは考えないでおく すっかり退化してしまった僕らの脳では処理しきれない情報だから。 考えるより早く行動に出るのはその証だと君の赤く腫れた頬に手をやる。 ほら、やっぱり。 僕らは怯え合う。 君は、手をあげた僕にまた殴られるのではないかと。僕は、君に嫌われるのが酷く、怖いから。 心だけだったら、怒りも君に振り上げた拳さえもなかったのに。だから、と言ったの。別に特別な事でもないからふ、と一言。別れ合う。『心』が痛かった。



―――



うろ覚えすぎた君の目は あやしく虚空を眺めて そして雪はちらついた むしろ、が危ぶまれるこのご時世

逆転の発想は切り捨て、の割に紛い物は見逃すタチで いつの間にやら君が君なのかもわかんなくなった 外はまた じゃない、まだ 空に背中合わせでずっと目を赤くしてる僕をなだめようとして けど、やっぱり泣いていた



―――



りぴーと・みすていく


あの娘はさ 幾度となく間違いを犯したよ 正気の沙汰じゃないね なんて言葉すら、もう君の耳に 鼓膜に 脳に 届きやしないさ

まあるい瞳の奥で 何を考えてるんだろうね 人の殺し方や どうやったら星に触れられるのかとか 夜を二度と来なくさせる方法だとか 本当に君はいつでも楽しそうに話してくるから僕はわくわくしてるんだ! ねぇ 実行に移す日はいつにする? ほかの奴らに何が解るのだろうね 人の考えを推し量って理解出来た振りしていつだって否定して。 君には君の夢があって 誰も止める権利なんかない ねぇ 実行に移す日はいつにする? ねぇ 早めにしようよ 必要ない奴らが居なくなって 君が星を抱き締めて 暖かい日差しでいつまでも笑っていられるように もし仮にそれが間違いだったとしても そんなこと関係ないじゃない ねぇ 実行に移す日はいつにする?



―――



合唱

蛙が一斉に歌う もう二度と止まないのではないかというような大きさで 蛙が一斉に愛を語る もう二度と巡り来ることはないだろう季節に向けて 蛙が一斉に夜に飛び込む もう二度と帰れないと悟ったような儚さを携えて 蛙が一斉に鳴き止む もう二度とあの合唱は始まらないかもしれないという あなたの不安を連れ立って



―――



純粋

性善説と性悪説 どちらにせよ片方に突き詰めていることには変わりはないんです 純粋な“ナニカ”の上に“ナニカ”が更に混ざっているという考え 性混説は見当たらない とにかく僕は問うてみたくてしようがない 最初から混ざっていて、それはもうどうにも、分離することが出来ない場合は それは“純粋”で良いんですか 純粋って、何でしょうか 答えなんて分からないと分かっているのに 考えてしまう そんな思いは“純粋”ですか まっさらで透明ではなく 濁り、せき止められぬような氾濫が時折起きても ただひたすら真っ直ぐなら それは純粋ですか と



―――



誕生日

きっと誰もが誕生日

毎日誰かの誕生日

あなたが愛されることを確信したのも誕生日

名前をつけて

あなたは初めて人になる

身近な人からの愛情で

あなたは初めて人間になれる

真っ直ぐに愛して欲しい

それだけ望んでたよ

すれ違って心が締め付けられるような

そんな愛は知らなかった


きっと誰もが誕生日

涙流してたって誕生日



―――



遅刻

あれ、僕はいつの間に 唇をきつく噛んでいたのか 黒猫は死んだ 望まれない命だと知ったから 足りない幸せは か細い声で僕を呼んでいたというのに もっと大きな幸せを欲した僕の声はそれを掻き消し 悲しみと言うにはあまりに穏やかだったから 僕は切なさと勘違いをした



―――



手探り

「悲しそうだね」

「悲しいもの」

「悔しそうだね」

「悔しいもの」

「嫌そうだね」

「嫌だもの」


そんな感じで生きてってもいいですか、神様


残念ながらどうも出来の悪い僕が人に恋をしてしまったようです


どうですか、神様

メールの返信は早めにお願いします


「かみさま、」

助けてください

あなたは健在ですか

退屈を持て余し泣き疲れてはいませんか

だとしたら話し相手くらいになら僕はなれます

だから悲哀で世界を満たさないで


「泣きそうだね」

「泣きたいもの」


神様、

明かりが一つもない暗闇は大嫌いです


「そばにいていいかな」

「ごめんね」


神様、

泣いてもいいですか

神様。



―――



短いの

ビタミンウォーターの黄色は多分 雷とは似ても似つかない それでも絶え間なく様々な方向から見える稲光を、僕はなにか活性剤のような目で見ている 雨は降るだろうか どちらでもいいが、僕は雷鳴を聞きたい



―――



雨合羽

濡れた透明な雨合羽がヘッドライトに反射して ああなんてあの人は格好が良いのだろうなんて自分は濡れる心配のない場所で見ている 雨が止み、その人は雨合羽を脱いだが まだ輝いて見えたのは 水溜まりに映った やはりヘッドライトのせい



―――



屋根

車の屋根を打つ雨粒は

線香花火のはじける音に似ていた そうだ、昨日花火をしたばかりだった 次は三本くっつけて落とさぬようより大きくしようと小さな目標をメモ帳に記入して 車を稼働させる



―――



雨の前の この生暖かい風は嫌いじゃないと君は言ったっけね じゃあ僕が何に怯えたら、君は幻滅したの? 雲の隙間にはまた雲があって 太陽は見えずにいる



―――



ここが大切な場所だと知っていたなら 駆け抜けず 大事にしただろうかここが大切な場所だと知っていても 時間に流され 胸が締め付けられた 間違いの在り方 たぶん考え方はどうであれ 進むことには変わりない 昔の自分とは別離したのだと 言ってもきっと どこかの記憶はそれを支えにして保たれていて



――



涙がこんなにも綺麗だと知った日 僕は久々に朝日をみてみようという気分になった。爽やかなのは快いことであり、僕らはそれを待ち望んでいたりする 単純かつ素晴らしい答えだと思ったね 人生に答えなんかない だから自分の人生は自分で決めろと言われるらしい 納得して、あ、僕はこんなにも無知だったのかと思い知らされて夜は更けていく いいんじゃないか、明日が来るならば



―――




この高ぶった感情を押さえるには、どうしたらいい 喉元を抉り取られるような、内臓が自ら溶けていくような、居心地の悪い倦怠感 明日がこなくてもいい。けど明日の自分に小さな希望を託して僕は眠る。それが 毎晩



―――



唇を離さないで

ねぇ 溜め息ばかり心に積もるから あなたに何も言えないのかな 好きだよ そう 好き 本当に 泣き出しそうにひくつく、自分の喉を、慰める方法すら思いつかなくて



―――



泣いてもいいかい

感情がいつか僕らを潰してしまうって

誰か 言って


まっくらな世界

遠い羽 持ち寄って

大きな一つの勇気にしたくて


広い海は孤独しか

感じなくて僕はきっと涙をながしてる


僕を知って そう叫んだ声はどうやら車のエンジン音に消されてしまったようだ


悲しみさえ面倒だと打ちひしがれると

なんだか あの大切にしていたゲームを壊したくなってきて


ついでに僕も壊れちゃおうかなって

そう思ったんだ



Pain and Anxiety Night

I not feel everyday,

Many Nobody looking for oneself.



破片が飛び散って

嘘 ああ 僕はどこだろう


泣いても 誰も振り向きもしない


僕、僕の 僕は どこ?



僕を知って そう思った


声さえ枯らしたまま

今 僕は ここにいるらしい


涙の跡をなぞっても

僕は分からなくて

知ってほしくて 今日も

手を伸ばす


僕はここにいるんだよ



―――



血で血洗う世界より お金を積み上げる世界より もっとほしいものが僕には あるはずなんだ 僕が必要だと思っていないものほど いがいと世の中では必要で 僕が必要だと思ってるものほど いがいと世の中には見当たらない 愛を 愛を 教えてください 必要なのは 一体なんなんですか 僕が今泣いているのも 必要なことなんですか いつか いつか 笑えることを 信じていても いいですか

実際問題 一切合切 何ともいえず いらないと思ってたものは便利でした 悔しいから 使わずにいたら みんなから呆れられました 気付いて欲しいということ あなたには言えませんでしたね ああ 愛を 愛を 愛をください 心臓を潰してしまうくらいの 重症との診断 死んだ身体で いつか 僕は満たされて 嘘が 嘘じゃないと すれば これは 多分 愛で そして 愛を 必要とした僕は どうせ 独りで息絶えて 悲しくて 悲しくて 愛を 欲しがって やっぱりあなたを必要として



―――



冷たいから暖めてくれないか

死にそうだ。

嘘だけど、死にそうだ。

構ってほしいだけだよ

気付いてほしいだけだよ

僕が笑うから

君は分かってくれないのかな

でも僕が泣いたら

君も泣いてしまうんだろうな

嫌だよ

君を笑わせたいのに

なのに

僕がどうすれば、君は

僕を気にかけることなく

、笑ってくれるのだろう


―――



例えば黒々とした髪のように

だらしのないスウェットのように

私が思い出すことは

誰かの面影のような気がするのです

ほんとうは全部覚えているのです

言葉に出したくないのです

その誰かのひとつひとつはすべて

私には重すぎました

ほんとうは愛していました

気付くのが遅かったようなのです

足のつま先から もう

私はあなたを愛していたことに 間違いはないのです

どこか遠くの君に伝えたい

私はあなたが好きなようなのです

いまさら、私はあなたが好きなようなのです

恋とは簡単なものですね

ね、泣いてもいいですか



―――



あんな場所に電柱があっただろうか

電線は引っ張られていただろうか

景色になじむようにまっすぐに立つあれは

はたして僕の頭の中に

密やかに存在し続けるのだろうか

代わりに何かを忘れやしないか不安なまま

僕は生き続けるべきだろうか



―――



昔のいやな思い出が蘇って

カーテンを汚した

となりのきみは驚いたまま、真っ白なハンカチを取り出して拭こうとする。

僕は嫌がった。

あれは記憶なのだ。

あれは記憶なのだ。


そしてあれは僕なのだ。


あの時に少しだけ黒と混ざった、多分大人への一歩の、いつまでも心にひっかかる澱のようなもので、

それは独りの中で共有すべきひとつで、


床に転がるポットから出た湯気よりもっと、見づらくて不安定な何かを足枷としてずっと付けていかなきゃいけないんだよって

まだきみに言えないから。



―――




怖いものだらけだ。



子供の頃に言っていた

「怖いものなんてなにもない」

は物質的な、そう、幼いながら必死に回転させた脳内で作り上げ精神と結びつけたようなあの恐怖。おばけやらヒーロー戦隊ものの悪者やらの存在を肯定でしか認められず、ただいつそれが自分に降りかかるのか考えもしないで怯えていたあの日。

疑うことを知らなかった日。

それを疑うことさえ、気がつかなかったあの日。



いまの僕は

怖いものだらけだ。



―――



ふつりと糸が切れたような喪失感に泣いた。

泣くことはなんだか普通だ。悲しいから泣く、嬉しいから泣く、なんだか普通だ。

普通って何だろうね、きっと大事なものだよ

と、それしか言えないけれど。



―――



小さな猫を優しく撫でながら

笑っている兵隊さんたちの写真があった

それだけで泣けてきた

命のあやうさは

心のうつわから溢れていってしまう



―――



デンプシー

空を飛ぶよ

嫌いなタマネギを

碧い星に捨ててきて


デンプシー

息をするよ

夜闇をこぼした空は

果てしないとわかったから



デンプシー

デンプシー

デンプシー

寂しいね

水星を蹴った反動で

僕の胸に飛び込んでおいで



―――



みんな知ってる

暗闇は怖くない

暖かい毛布を重ねて

目をつむって まぶたの血管を辿る

今日残してきた気持ちは 明日きみに言おう

今日はこのまま きみの知らない世界へゆくよ

ごめんね ああ ねむいの

外より暗い部屋は

昼間もなぜだか外より暗い

電灯の橙色の明かりがもれて 夜の怪物は動き出す

夢の中に現れて

ずっと笑っていて

ビルから海へ飛び込んだり

ポケットから数え切れないくらいの飴玉をぶちまけたりしながら

「またあそんでね」と泣いている

夢を見て ひとりじゃ寂しい

言いたくても 言えないから

きみは今日もまた

ぼくの新しい友達



―――



線香花火みたいだ

雫が屋根を打って

はじけて散るだろ

後部座席のわたしは

見ているだろ

聞いているだろ

何を どうやって知ろう

わたしは生きるだろ

あなたはどうだろう

生きただろうか

生きていたんだけれど

どこにいただろう

わたしはここだ

いまはここに 生まれたそばに

わたしは知っている

届かない雷鳴のそばに

あなたは笑って立っている

笑顔が本物かどうか 確かめられる場所にはいない

それでもわたしは

あなたがいたことを知っている

それが正しかったのかは分からない

分からないけれど 分からないけれど わたしは苦しいのだけれど

あなたが幸せなら 真理は すべては変わる



―――



雲は僕らに襲いかかる

また 泣きたいような突き抜けた明るさがある


布は風に乗り絹糸に分かれ

夜店の綿菓子はしずかに怒りを体に蓄えている


僕がつま先を家に向ければ暗く陰り

あの人に向ければ狐が嫁にゆく


確かであれよと思うほど不格好な空は拡大され

次いで僕らは縮小される


いよいよこんなちっぽけな頭じゃ何も考えられないと僕らが思った刹那、とうとう僕らは“僕ら”を亡くすのだ



―――



君の指先は宇宙から生まれ そして君の指先は宇宙を生む

君の命の螺旋のどこかにあるほつれに、常人では得られまいと思うような染色体がある

その染色体が宇宙であるので

宇宙は小さなものであるので

僕の胸に収まりきるだろうとなんとなく高をくくっている

ああ君の澱みを包み込んでいるであろうブラックホールがこわい




爪きりの音がする

きりきりとやすりが響く


指先の宇宙は幸せを眺めているだけに見える

その唇が残虐極まりないホワイトホールと化すことで、一瞬で心の灯が消えそうなのだ



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