研究の目的、真の存在
研究員を警察署に連行した。
「名前は何と?」
取調室に研究員を連れ込み三対一の取り調べが行われた。まずは型どおりに進めていく。
「原田幸一です。」
と、研究員は名乗った。
「職業は?」
「無職です。あ、データはありません。ずっとあの穴倉で暮らしてきたので…。」
言われてみれば肌は真っ白で一度も日に当たったことがなさそうな不健康な色だ。穴倉で研究し続けた。
「なるほど。」
彼は型を逸脱した質問を重ねる。
「俺をどうしたかったのですか?」
「人類の繁栄のため、君を生き返らせたかった。死体の君を引き上げ生きている細胞を保存した。それから百年後、君は生き返った。しかし、君は暴れだした。ホルマリンが苦しかったようでね。君は自爆システムを作動させてしまった。」
それで大爆発を起こし、浜中は火の海になったという。それがあのがれきの山を作り出したようだ。この話が本当なら彼は研究所の人だけでなく、浜中の市民全員を殺したことになる。友人の子孫。年老いた近所のガキ。関係も罪もない人々を町ごと吹き飛ばしてしまった。
「その時に飛んだ電子や電磁波がフォンを動かなくさせていた。」
俺は生きてていいのか?多くの命を犠牲にして俺が生きてる。
疑問が残る。そもそも堤防から落ちて死んでいた。疑問がもどかしさに変わり、さらに憎悪に変わっていく。
「君はそのあと百十年間、死んだところで眠ってたね。君は知らないかもしれないが、冷凍されていたのだよ。」
彼は放心状態に陥った。彼は自分自身が怖くなっていた。
「君に話せるのはこれぐらいだ。私も実験された身でね。先祖のクローンなんだ。知識も先祖から移されたものを使っている。」
「あなたは…、あなたはいいですよね!!!!」
真が立ち上がりながら発した叫び声は多分外にまで轟いただろう。部屋にいた三人はしりもちをついた。自分でも何を言ったのか覚えていない。どうやって来たのか彼は九階建ての屋上にいた。それも自殺モーションで。
「真!」
「真君!!ダメ!」
後ろから隆弘と梓が追いかけてきた。
「俺は…、殺人鬼だよ。」
「だから…、だから何?それで死んで、死んでどうするの?」
梓は声を震わせる。
「さあな。ただ…。ごふぅ!」
隆弘は真を引き倒しボディーブロウをかける。
「死んで逃げるな!罪を償いたいなら生きろよ。生きろよ臆病者!」
逃げる。確かにな。だが、お前には不当に生かされた気持ちは分からない。元に戻すつもりで死のうと思ったけど、タイムオーバーだよな…。済まない。
「あーあ。どうしてこうなるんだろう…。」
彼は仰向けのままあきれた声を上げた。夕方の茜色の空を見上げた。
「答えは生きてると見つかるかもよ。」
梓は真の手を取っていう。
「済まない、みんな…。」
彼は目を閉じて涙を隠そうとするが閉じた瞼の間から涙が零れ落ちる。
それから数十日が経った。
彼は少しの間、気持ちを整理するため旅立っていた。生きたい、生きようと思えるその日まで旅していようと思った。そして、ようやく清水に帰る決心がつき清水に帰った。浜中の柵を越えようとしたとき梓の声がした。
「真君。やっと帰ってきた。ずっと待ってたんだよ。」
「そうか。ありがとう。」
彼はそう言って優しく梓を抱きしめた。浜中の海に生きると誓った。
ありがとう、安藤さん、梓、課長。仲野課長、俺は絶対に梓を幸せにします。楽しみにしていて下さい。
ご愛読ありがとうがざいました。




