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二二二二年  作者: 多堕野 吾圃
真実
17/22

 彼は状況が呑み込めなかった。真は今、棺の中。なのに外の様子は見える。坊さんのドスの聞いた低い念仏が聞こえてくる。動くことができない。喋ることもできない。

 助けて、親父、おふくろ。俺は生きてるぞ。

 彼はそのうち自分は本当に生きているのか不安になった。本当は死んでいるのではないかと思った。しかし、どうして死んだのか思い出すことができない。ただ時間だけが過ぎていく。お坊さんのお経が終わり、ちょっとしたお話に切り替わった。彼の疑問は焦りに変わっていく。話の内容はそっちのけで思い出そうとする。

 一体、どれだけの時間がたったのだろうか。それさえもわからない。ただ、確かにいえることは、通夜が終わったことだけだ。しかし、何も思い出せない。悲しいほど何も。次第にすすり泣いている人の顔さえ思い出せなくなっていく。

 なぜだ?なぜ何も…?これが…死?


 彼は目を覚ます。謎の液体の中。息することすらままならない。ガラスが液体ごと彼を覆う。中からはよく見えないが、何かの施設のようだ。

 苦しい、苦しい。誰か、助けてくれ。

 不意に力が湧き出る。彼はガラスに手を当てる。ガラスは凄まじい音を立てて破裂する。警報が鳴る。警備員が駆け付ける。

「緊急事態だ!実験生物が逃げるぞ!」

 実験生物?冗談じゃない。実験されてたまるか。か、体が言うことを聞かない…!?

 彼は彼の意志とは違う方向に動き出した。警備員の方だった。彼は警備員を殴りつけていく。警備員は力なく吹き飛ばされていく。ほかの警備員も次々と吹き飛ばしていく。顔を殴られた警備員の顔は原型をとどめていなかった。詳細は割愛させていただくが。

 いいから逃げてくれ!早く!銃殺してもいいから近寄るな。

 彼の思いは届かず次々と向かってくる。彼はスイッチを蹴った。アラームが鳴る。赤い回転灯が回る。

「まずい…。逃げろ…。」

 止まれ、俺。逃げるな、俺。ここで爆死するんだ。

 彼の心はそうだったが体はそうはいかない。逃げようとする。激しい爆音がする。爆炎が巻き起こる。彼は力なく吹き飛ばされた。

 ちくしょう、死んでない。なぜだ…。

 彼は消波ブロックの間にとんでいく。


「宮城君!宮城君…!宮城君ーーーー。死なないで。死なないで。ね。もう一度アンパン食べようよ…!」

 ああ…!あーー!梓!

 彼のゴタゴタな記憶は梓の声で一気にまとまった。

「あず…さ…。」

「宮城君…。生きてるーーー。ぐすん。」

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