表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二二二二年  作者: 多堕野 吾圃
魔都・浜中
16/22

研究室

 次の日も調査だった。メモ帳は三日目にしてすでに半分は使っていた。

「はい。」

 真が梓からアンパンを受け取った。すでに六食連続でアンパンだった。食べ飽きた、と言いたいところだが、それでは買ってきた梓に悪い気がして心の中にしまっておく。アンパンを食べ終わった梓は缶コーヒーを飲む。そして、顔をしかめる。

「あー。これであと十本。調査中には飲みつくせるかな。」

 手には缶コーヒーが十本入った大き目のポリ袋。

「一本、くれ。」

 真は梓からコーヒーをもらった。

「なんか、コーヒー飲むの義務になってない?」

 真は梓に聞いた。

「そう。お父さんがくれるんだけど、それが一回に五十本くらいくれるんだよね。捨てるのももったいないから毎日飲んでるんだけど、なかなかなくならないんだよね…。」

 表情から我慢の色が毎回見える。真もコーヒーを飲んでみたが、かなり苦い。一体どんな入れ方をするとこんなに苦くなるのか分からない。それとも、二二二二年のコーヒーはこれほどまでに苦いのか。普段コーヒーを飲まない真には知る由もなかった。

「苦いでしょ?」

「かなり…。」

「お父さん、コーヒー見る目はないみたいね…。」

 梓、その笑顔もなかなか苦いぞ。


 その頃、隆弘は別行動をしていた。梓に嫌われたことが余程傷付いたようだ。隆弘の好みのタイプで半ば一目惚れだった。いくら何でも傷つきすぎな気はしたが、しばらく一人にしておいてくれ、と言われたので放っておく。

「何で俺がキザっぽく見える?」

 隆弘は足元の瓦礫を蹴飛ばす。

「せめてチャラいと…。イテッ。」

 隆弘は瓦礫を蹴飛ばそうとするとコンクリートの塊に当たった。

「それに、あんな遠ざけなくても…。真は呼び捨てなのに…!」

 と、うつむいて歩いていると、隆弘は何かを踏みつけた。


「あはははは。」

 真と梓が仲良く談笑していると遠くで爆音が聞こえた。

「何だ?行ってみよう。」

 真は歩き出しながら言った。煙が立ち上り始めた。墓場より奥の方だった。幸い清水に被害はなさそうだ。

「何だこれは…?」

 爆発が起こったところに行ってみると、丘のふもとに鉱山の入り口のようなものができていた。真はすかさずメモを取った。

「大丈夫か、真?」

 後ろから隆弘の声が聞こえた。振り返ると隆弘が血相を変えて走ってきた。

「安藤さんも無事でしたね。それよりもこれ…。」

「なんだこれ。」

 真は丘にできた穴を指差した。それを見た隆弘は口だけ何だこれ、と言っていた。

「入りましょう。」

 真は言った。それに二人は頷いた。


中は広く薄暗い。申し訳程度についているライトのおかげで少しは見える。何かの施設のようだ。それも今も稼働しているようだ。三人は百メートルくらい歩いたころ、コンクリートの壁に突き当たった。

「行き止まり…?」

梓がつぶやいた。梓には期待外れだったようだ。

真は壁を触る。何かが手に引っかかった。その引っかかったものをなぞって行った。すると、ドアか何かのようだった。真は一歩離れて蹴飛ばした。しかし、動かなかった。真はレーザーウェポンで斬りつけた。すると、ドアは力なく右に動いた。

「これ…。スライド式かよ!」

「あーあ、無駄に切っちゃった。」

 梓は真を茶化す。それを無視して中に入る。中は研究室のようだった。かなり息苦しく、白骨死体が多数あった。刺激臭が三人の鼻に容赦なく襲いかかる。

「ゲホッ、ゴホッ。一度…、出よう…。」

 隆弘は苦しそうに声を上げる。

「その方が…、よさそうですね…。ゴホッ。」

 走り書きでメモ帳に書き留めた真は隆弘に返した。

「あ、待って宮城君。…苦しい…。」

 梓はあまりの刺激臭で意識がもうろうとしているらしい。

「安藤さんは先に行って下さい…。俺は梓を…。」

「分かった…。」

 隆弘は先に出た。真は先走って奥に行った梓に肩を貸した。確かに奥は臭いだけではなく、毒も充満しているようだった。手足が少しずつしびれていく。

「…たく。先走りすぎだって…。」

 真はそうつぶやいて歩き出した。普通に歩くと大したことのない百メートルでも、体力を奪われ尚も、毒に侵されつつ気絶した梓を引きずりながら歩くのは厳しかった。彼は通路を出たところで意識を手放した。


 彼は微睡の中、女性がすすり泣く声が聞こえた。梓ではない他の人だった。目にしたのは黒い服に身を包んだ真の母親と父親だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ