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二二二二年  作者: 多堕野 吾圃
魔都・浜中
15/22

調査二日目

「ああ、濡れた。どこかで服乾かしたいな…。」

 梓は困っていた。自分以外男だし、その前でまさか脱いだりできない。しかし、入った建物は運よく釣具屋だった。二階に通じる階段も健在で丁度よく部屋は人数分あった。

「梓、部屋あるよ。」

 真は二階から降りて言った。

「ホント?よかった。」

 梓の顔からは笑みがこぼれる。

「ここはお前の家か?知ったように歩き回るよな。」

 隆弘はいつもの調子に戻り、真に話しかけた。

「まさか。」

 しかし、いろいろとボロが出てきた。

「ま、いいや。もう夜も遅いし俺は寝るよ。」

 隆弘はあくびをしながら言って真の横の階段を上がって行った。

「お休み、宮城君。」

 梓も隆弘に続いた。部屋割りのことを考えていなかったが、それは自然に決まっていた。梓は一番奥の部屋でその隣は誰もいない。つまり、真の部屋。その向かいに隆弘がいた。真は二階に上がり部屋を確認したら、階段を下りて倉庫に向かった。倉庫の扉を開いて中に入った。倉庫の中は乱雑で、真の望み通り釣竿があった。心なしか、以前愛用していたものに似ている気がした。保存状態は極めて良く、今すぐにでも使えそうな気がした。一通りの釣り具をそろえて堤防に上り、海に向かって竿を刺した。さっきまでの雨は何処へ行ったのか、星が輝く夜空の下で秋の始まりを思わせる風の中、真は当たりを待った。が、当たりはなかなか来なかったため真は竿を引き上げ、堤防にもたれかかって眠った。


 そして、夜が明ける。

「……ん、…やぎくん。」

 ん?山羊君?寝ている時に数えるのは羊だろ。

 彼は夢見心地で梓の声を聞いていると激しくさすられ、勢い余って地面に頭をぶつけた。

「あ…。」

「いてえよ。」

「ゴメン、手滑らせちゃった。頭は切れてないし大丈夫だよ。」

 梓は可愛らしく笑った。それで怒る気はすっかり失せる。これが計算ならかなりの悪女かもしれない。

「まだ早くない?まだ五時でしょ?」

 真は釣り好きで太陽の傾きで時間が分かるようになっていた。

「何でわかるの?」

「太陽の傾き。」

 梓はなるほどと言った顔で真を見つめる。


 調査期間は一週間。その二日目が始まった。真は一つ驚いたことがあった。昨日はあの大雨の中調査していたが、メモ帳は濡れなかった。はっ水加工されていた。

「ここ墓場だよな。」

 また、隆弘はグダグダになる。

「そうですけど、それがどうしました?」

 真はケロッとした顔で答える。町の様子とは違いここは火事に巻き込まれなかったのだろう、二〇一二年と変わったところは特になかった。一方の梓はあちこち興味本位で歩き回っていた。

「よく平気だよな、お前ら二人。なんか意気投合してるし。」

「まあ、友達ですから。」

「じゃあ、お前にとって俺は何だ?」

 昨日からすねていた理由はこれだったのかと真は思った。

「尊敬する先輩ですかね。」

 真は正直に言った。

「そうか。それならよかった。」

 隆弘は笑った。真は違う答えを期待していたのかと思ったが、本人がそれで納得しているならそれでもいいか。

 墓場を歩いていると一際きれいな墓石があった。一昨日真が磨いた墓石だ。

「ん?この墓石、なんかきれいじゃないか?」

 これも隆弘だけ知らないことだった。真は墓参りで、梓はそれを追いかけてきた。

「これ…。」

「俺の先祖です。すいません、一昨日ここに来ました。」

「そうか。」

 以外に気にしていないようだった。

「ちょっと、そこで何してるの?早く来て。」

「ゴメン、今から行くよ。」

 遠くから先に走って行った梓が声をかけた。


「どうしてそんなに怖がるんですか?」

 あまりの怖がりにしびれを切らした真が言った。

「お前が変なこと言うからだろ!」

「俺のせいですか?」

「だって、お化けがどうのこうのって」

 ああ…、あの時か…。

 暑いからいたずらでお化けの話をしたことがあった。そのとき、隆弘がお化けはどこにいるか聞いたので、浜中のような所と真が答えた。そのことをまだ覚えていたようだ。子供のような人だ。

「あんなのはったりに決まってるじゃないですか?」

「え…?」

「まさか、その年になってまだ信じてるとは思いませんでした。」

 隆弘はガックリと肩を落とした。

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