マサヤ
なんなんだこいつ。
・・・・・。いつまで待てばいいんだ。あたりは本部の世界と同じくらい暗くなっている。これが夜なのか
ギルドの中が騒がしくなる。
・・・・・。
中から一人の男が出てきた。堕天使だな。
「おい、マサヤ。」
マサヤは振り返った。
「だれ君?」
・・・・・。そう聞かれるとは、ボスはなるべく人との接触を避けるようにとは言ってたけど。名前は教えても大丈夫か。ほんとの名前さえもわからない。
もしかしたら、マサヤの記憶にナインて言う名前の俺がいるかもしれないな。
「俺はナインだ。」
「ないん?漢字でどう書く。」
漢字・・・。
「漢字は使わずカタカナでナインだ。」
「ふ~ん。」
話がずれてる気がするな。
「それで俺は、お前と戦わないといけない。」
「なんで?」
・・・・。それは知らないな。
「俺には分からない。」
「ほ~。じゃ、始めようかな?」
「ああ。」
マサヤが剣を抜くのが見える。あれは妖剣だな。俺には魔法が効かないからたいした凶器じゃない。
剣も俺には物理無効化があるから、おもちゃみたいなものだな。
「それじゃ、倒せないぞ。」
マサヤは顔をしかめて。
「お前もすでじゃ倒せないぞ。」
確かに。
「俺には関係ない。」
い。と言い終わらないうちに喉に向かって剣が突かれてきた。俺は体を空してかわして妖剣をつかむ。
つかんだ手からは血も何も出てこない。
力を入れると妖剣にひびが入る。
「お前、なんなんだ。」
マサヤは驚いているようだ。
「え?俺には分からない。」
「またそれか。物理は効かないんだな。」
俺はうなずく。
「じゃ、これは。」
妖剣が赤く光る。
?????
次の瞬間体は炎に包まれた。
熱い。なんて感じない。魔力無効化は魔力自体を触れて消すものじゃない。自分に向かってる魔力の威力を
打ち消すので。魔法は消えない。
とヴェイルが言っていた。
「な、魔力も効かないのか。」
俺はうなずく。
マサヤはにやりと笑った。
「もう攻撃する手段はないだろ?」
「いいや。」
マサヤは妖剣を地面に突き刺した。
武器を捨てて殴る気か?
徐々に地面にひび割れが出来てくる。
「なんだ?」
「教えるわけないだろ。」
・・・・。俺ただひび割れを見ていた。
ひび割れはどんどんこっちに向かってくる。
俺の足元に来た。とたんに地面から炎が噴き出してくる。
俺は後ろに下がりとりあえず避ける。
ギルドの人たちが炎に気付かないはずもなく。
ギルドは大騒ぎだった。
「俺は緑に銀貨2枚だ!!。」
とか聞こえる。なんのことだ。
俺は目の前で起きてることに気付いた。
炎が動いてる?
炎は意志があるかのようにくねくねと動いていた。
ひび割れはいろんなところに出来てきて、剣から少し離れたところに来たら炎が噴き出してきた。
・・・・なにをするつもりだ?
魔法は効かにのに。
そのときマサヤが喋った。
「魔力無効化ってのはさ、魔法で出来た物をぶっ壊す
あの右手と違って、威力のみを消す。つまり。」
ニヤリと笑った。何が面白いんだ?
「こうしたら、逃げれないってことだろう?」
炎と炎がつながった。外から見たら巨大な火柱。
だが中には空間がある。空も中から見えるし酸欠にはならない。でも、逃げれないというわけじゃない。
「・・・。炎には実体がない。だから逃げれると思うが。」
「やってみろ。」
俺は頷くと炎に触れた。とたんに炎の壁から鞭のような炎が何本も俺に向かって伸びてきて俺を拘束した。
「な。」
力を入れれば入れるほどきつく締まる。
「いやあ、ひっかかってくれるってのはうれしいね。
戦争でもウクダリア王国を力で乗っ取てた堕天使もさ
この技にひかかってくれて、俺はそいつにとどめを刺してきた瞬間、そいつが大剣の妖剣デュランダルで俺の肩から足までスパッと切ってきてな。おりゃ相打ちになったと思ってたんだけど。なんか神父のじいさんの知り合いが俺を助けてくれたみたいだったし。」
マサヤは妖剣を抜く。
「まあ、あれは俺が油断して3本のそれで縛らなかったのがいけねえな、片手フリーだったし。」
今のおれは両手も足も縛られてて。膝を地面につけて座ってる。これじゃ抵抗もできないな。助太刀にくるはずのボスもこの壁じゃ俺の様子が分からない。
「でも、今回はちゃんとできたな。これぞ、戦争前に茜さんと謎の修業をして手に入れた技・・・。」
マサヤは俺に一歩で間合いを詰める。
この距離ならあの剣は俺の体をさすことが出来るだろう。
体に激痛が走る。
あ、腹刺された。
「これが『地獄』だ。」
その言葉は俺に届いていなかった。
~?~
なんだ、この感覚。何も分らない。何も・・・・
~外~
マサヤは俺の腹(剣が刺さってないところ)を乱暴に蹴って剣を引き抜いた。
そして止めをさすべく剣で首を切ろうとしたとき。炎の壁がかき消された。
「なんだ?」
炎の壁を消したのは灰髪の男。フェンだった。
(めんどくせぇ。どうせなら勝ってくれりゃ、俺の仕事も楽だったのにな)
フェンは地面でのびているナインを脇で抱えた。
そしてその場から去ろうとして歩き出す。一歩。
「おい、そいつは俺と戦ってるんだ。邪魔するなよ。」
「アハハハハハ。すっかり踊らされちまって。お前ら。もうちょっとは自分たちのことを考えてみな。ほら、こいつやるからよ。」
フェンは握り拳サイズの氷の塊をマサヤに向かって投げた。
きれいな放物線を描いてマサヤはキャッチ・・・せずに剣ではたき落そうとした。
氷の塊に剣が触れた瞬間。
おおきな氷の塊になってマサヤを飲み込んだ。
(これで仕事終了だな。だいたいマサヤの力量は分かったし)
前を歩きだすが2歩程度歩いた時。うしろが熱い。
「まだだぜ?」
疑問形で言葉をかけてきたのはマサヤ。どうやら妖剣の力で氷を溶かしたらしい。
水たまりも残ってない。全部蒸発しているようだ。
(めんどうだな。まあこいつがあるし)
フェンはポケットからなにかウニョウニョしたものを取り出す。それを地面に置き。
「こいつでも相手にしてな。」
フェンは本部に戻るべく歩き出した。
~邪魔されずに本部~
「やはり負けたか。」
ボスがフェンに向かって話す。
フェンはめんどくさそうに答えた。
「負けたよ。あいつら、ブレイクドールに驚いてたな。」
話題を変えられた。
「ふ、あれは最近できた、ヴェイルが発明したものでな。だから探求者さえも足止めできた。が、探求者はどうやって倒すのか分かったらしい。」
「へ~。」
フェンは立ち上がる。
「帰るのか?」
「言わなくてもわかるだろ?」
フェンは部屋を出ていきボスだけが一人残された。
~次の日~
俺は目を覚ました。いつもと変わらない目覚ましの音で。俺は気絶した。で、起きた。今はあれから何日たったんだ?
その時部屋のドアノブが回り中に誰か入ってきた。
「よ、3日ぶりだな。」
「俺は3日寝てたのか?」
フェンはうなずき
「そ、ほら鯛焼きだ。」
俺は鯛焼きを受け取る。・・・・・フェンは俺が寝ている間に見舞いに来ていたのか?そして毎回鯛焼きを二つ持ってきていたのか?効かなくても確かめる方法は
・・・・・・。俺は鯛焼きを食べ終わるとゴミ箱を引き寄せ捨てた。そのときゴミをちらりとみたら。鯛焼き屋の名前が入った紙袋は二つあった。
「俺が眠ってる間ずっと見舞いに来てたのか?」
フェンは顔をしかめると
「ああ。まあな。ボスに命令されたからな。」
・・・・・。ボスは仕事以外のことは頼まないと思う
がフェンが言ってるならそうなんだろう。
「・・・変な街だな。人が一人もいない。」
俺は気になっていたことを言う。窓から見える本部がある町はたくさんのビルが立ち並んでいる。が人が一人もいなし虫すらもいない。
「・・・・・。まあな。この世界はボスが造った世界だ。」
「そんなことができるのか?」
「まあな。神も見抜けなかった力だ。」
・・・・・。
「なあフェン。あの月を見てるとなんかおかしくなるんだ。」
「狼男にでもなったのか?」
おおかみおとこ?
俺が黙っていると。
「冗談だ。」
と言われた。
「あの月を見てると、胸から何か抜け落ちるような。そんな感じになるんだ。」
「ん?なんだそりゃ。」
「俺たちには心がないんだろ?」
「ああ。」
「だったら、これは体がまだ痛むのか?でも俺はマサヤのいる世界の夕陽を見たときにも同じ感覚になったんだ。」
フェンは考え込んで。
「もしかしたら、過去の記憶。まだ心を捨てなかった時の記憶が関係してるんじゃないのか?」
・・・・・。
「俺には過去の記憶がない。だから名前も分からない。」
「そうだな、頭で憶えてなくても、なんとなく。憶えてるんじゃないのか?月や夕日を綺麗だと思った時の記憶を。」
・・・・。
「意外とまともなことを言うな。酔ってるのか?」
フェンは顔をしかめると。
「ふざけんな。俺は酒を飲んでないし。いつも真面目だ。それにどこで覚えたんだ?そんな会話の仕方。人じゃないとできない。『冗談』ってやつだ。俺らには冗談のどこがおもしろいのか分からねえ。昔は分かったけどな。」
・・・・・。
「でもフェンも使ってたよな『冗談』。」
「ん?まあな。あれはまだ人間だったころ使ったことがある冗談だ。」
よく分からない。
ない。