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アルとルートニックの旅は続いていた。
「ねえ、ルートニック。僕たちってこれからどこへ行くの?」
「知りたいか?」
「当然じゃん!」
にぱっとした顔で言うアル。
「……お前、帝都は知っているか?」
「テイト?それってどこにあるの?」
「いいか、お前はこれから俺と一緒にこの国の都に行くんだ」
「ミヤコ?」
「大きな街だ」
「それって、どのぐらい大きいの?」
「この国で一番大きな街だ。そうだなここからあの地平線まで続くぐらいの街だな」
「へー、それってすごいね」
いま一つすごさを分かっていない様子のアルだ。
しかし、そんなアルの姿に、ルートニックは気になることがある。
「なあ、お前、俺についてきてるけど。本当にいいのか?」
「いいって、何が?」
無邪気な顔でアルが訪ねてきた。
アルの黄金色の左目がルートニックを見つめている。伝説ならば、アの瞳はすべての人間の心を見透かすのだという。
ならば、ルートニックが思っていることも、アルには分かるはず……
だが、そんな様子などまるでアルには見られない。
「あのな、お前は知らないお兄さんについてきてるんだぞ」
「お兄さんって、もしかしてルートニックのこと?」
「そうだ」
「ルートニック、そんなの冗談言える年齢じゃないでしょう」
もう、40近くのルートニックだ。
実年齢は伏せるにしても、確実に中年オジサンなのだ。
そんなルートニックのあまりにも無謀な見栄に、アルは冷淡だった。
「ゴホン、とにかく、お前は俺についてくるんでいいんだな?」
「だって、そうするしかないもの」
「そうするしかないもの」そう言ったアルの表情は、妙に澄んでいた。しかし、そこにはまるで感情がない、ガラスのような透明さだった。
「お前」
「ねっ、だからいいんだよ」
「……」
小さな子供が、そんな言葉を口にしたことにルートニックは何も言えなくなってしまった。
ただ一言、
「わかった」
それだけ言い、ルートニックは静かに歩き始めた。




