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宮廷に上がった一行は、案内を受けて宮廷の上層階へと案内される。
「しばしお待ちを」
宮廷に仕えている執事は、そう言って部屋を出て行った。
何とも豪勢な部屋に、3人だけがぽつんと残される。
「この部屋すごいよ。
ルートニックの部屋が10個は入るね」
「いや、20は入るぞ」
と、アルとラーベラムはそんなことを言う。
(……俺、この待合室でもいいから、これぐらいの家に住みたい)
と、ルートニックも心の中で、そんなことを考える有様だ。
その後戻ってきた執事に案内され、一行はさらに上層の階へと通される。
途中吹き抜けの大きな階段がり、きらびやかな金縁で飾られた人物画が掲げられていた。
「僕知ってる。
グラガレス皇帝陛下さまだよ」
と、アルが指さしながら言った。
「よく知ってるな、アルは偉いな」
「うん、そうでしょう」
ルートニックに褒められて、自慢げになるアル。
(グラガレス……久しぶりだな)
と、絵画の男に、ラーベラムは心の中で挨拶した。
かつて、ラーベラムはこの絵画の人物と出会い、契約を結んだ。
アルに現れたのは片眼の黄金樹の瞳だが、この絵画の男は両眼の黄金樹。それを人々は、全てを見通す瞳だと言って恐れ敬ったのだ。
誰もが知っている、建国の大帝に纏わる昔話だ。
その建国の大帝の額縁が飾られた階段を上がると、広い通路に通される。
そこにもまた人物画が並んでいる。
どれもこれも古い時代のもので、その中の1人を見つけてしまったラーベラムは、思わず足が止まってしまった。
「これは大変な美丈夫だな。
若さではこの俺に負けてるが、俺にも負けない姿だ」
絵画の人物に向けて、ラーベラムが賞賛の声を上げる。
「そのお方は、グラガレス大帝陛下に仕えた建国の功臣の1人。ラーベラム卿であらせられます」
「あれ?
ラーベラムって、同じ名前だね」
アルが不思議に声を上げる。
「そうだな。
珍しい名前だが、さすがは俺と同じ名前の男。
建国の皇帝陛下の功臣とは、見事なものだ」
ラーベラムは賛辞を惜しまない。
とはいえ、これは自画自賛だった。
何しろ、この絵画の人物ラーベラム卿なる人物こそが、今のラーベラムの昔の姿なのだから。
「いいねえ。
俺も歳をとったら、ああいう味のある大人になるぞ」
称賛をやめないラーベラムだった。