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黄金樹の瞳  作者: エディ
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「ねぇ、ルートニック、ラーベラム」


 ドアを開けて出てきたアルは、2人の姿を見た。


「アル、お前どうしてここに!」

「兵士の人に聞いて、2人がここにいるって聞いたの」


 ルートニックの問いに、アルが答える。


「ねえ、ルートニック。

 ラーベラムは悪いことをしたんじゃないんだ。

 僕を守ってくれようとしただけなんだ。

 だから、お願いだから、牢屋から出してあげて」


 と、アルが願い出てきた。


「お前……!」


 アルの願いに、答えようとしたルートニックだったが、その言葉がつまり、表情が驚きに変わる。


「お前、どうした!

 左目が青いぞ!?」

「えっ、僕の左目が青い?」


 黄金の色をしていたアルの瞳が、右目と同じ青い色に戻っていた。その様をみて、ルートニックは驚いた。

 黄金樹の瞳かもしれない人間の目が、ただの青い色に戻ってしまったのだから、驚かずにはいられない。


「おかしいな……僕の左目は……」

「おーと、何言ってるんだ!

 ルートニックのおっさん」

「おっ、おっさん!」


 突然、おっさん呼ばわりされて、別の驚きに包まれるルートニック。

 俺はまだお兄さん。

 などと、少年のアル相手に言って他ぐらいだから、オッサンとい言われて、衝撃を受けたのだろう。


「おっさん、アルの左目が、金色なんてバカなこと言っちゃいけないぜ。

 こいつの眼は両方とも生まれたときから、青い色だぜ」

「そんなバカな、確かに青かったぞ」

「そうだよ、ラーベラム。

 僕、確かに金色……」

「はあっ?

 お前何バカ言ってるんだ?

 青い目が、金色になるなんて、そんなバカな話があるわけないだろう。

 どうせ寝ぼけて、夢でも見てたんじゃないのか?」


 胡散臭げに言う、ラーベラム。

 そして、ルートニックに向かっても言い放つ。


「オッサン、何を勘違いしているのかは知らないけど、俺の弟は変な色の目をしてないぜ」

「だが、私は確かに見たのだ。

 金色の瞳を。

 黄金樹の瞳かもしれない、目の色を……」

「はあっ?

 どうやら、おっさんもアルと同じで、寝ぼけてるみたいだな。

 見てみろよ、こいつの眼は青い色だぜ」


 ラーベラムに言われて、もう一度アルの左目を見るルートニック。だが、アルの瞳は見間違えるはずもなく、青色をしていた。


「おかしい、確かに黄金の色だったはず……」

 と、納得のいかないルートニック。

「まったく、その歳でボケるなんて、困ったもんだな」

 一方のラーベラムは、これでとどめとばかりに言い放つ。

「そうだ。そんなに疑うなら、あのときの兵士たちに聞いてみたらどうだ。

 目の色が金色の子供だったら、兵士たちも覚えているはずだろう。

 うっ、うむ。確かにそうだが……」

 納得できない様子のルートニックではあるが、結局ラーベラムにいいように言いくるめられて、兵士たちに、アルの瞳の色を聞き出すために牢を出て行った。

 2人だけになると、ラーベラムはアルにこっちに来いと手で合図する。


「ラーベラム、ゴメンね、僕のせいで捕まったんだよね」

「なーに、安心しろ。

 別にこんなの初めてじゃないから、俺は全然平気だ」

「そうなの」

「ああ、もちろんだ。

 それより、お前の眼のことだがな」

「僕の目のこと?」

「お前は、自分の目が金色だったことを人に言うなよ。

 あの目が見つかると、結構面倒なことになるんだ。

 だから、俺が青色に戻しておいてやった」

「もどしておいた?」

「そう、こうやったときにだ」


 ラーベラムはそう言いながら、アルの左目を隠すように手を伸ばす。

 それは、この街でアルがラーベラムと再会した時にした動作だった。


「ああ!

 あのときに僕の目の色が元に戻ったんだ!

 でも、どうやったの?

 手品みたいですごいよ、ラーベラム!」

「コラコラ、あまり大声を出すと、おっさんに聞かれるだろう。

 ……あれは手品じゃないんだが……そのうちお前にもできるようになるよ」

「そうなんだ。

 よーし、それじゃあ今から、頑張って練習しよう」

「練習ねえ……練習したからできるようになるってもんでもないけどな」

「えー、じゃあどうやるのか、教えてよラーベラム」

「だから、そのうち自然にできるようになるって」

「ムー、けち」

「よし分かった。

 教えてやるが、簡単にはできないぞ」

「大丈夫、僕がんばる!」

「なら、今から腕立て伏せを百回に、腹筋を五十回。それから会談があるところでは、ウサギ跳びをしながら移動てだな……」


 百パーセント純正の嘘をついていくラーベラム。しかし、本人は、適当に言ってるのだが、少年のアルはキラキラと輝く目をしながら頷いている。


「……てなことを、毎日欠かすことなくやり続けるんだ。

 1日でも忘れたら、また始めからやり直しだからな」

「よし、分かった!

 それを毎日すれば、できるようになるんだね」

「頑張れよアル」


(さっさと諦めろよ)

 心の中で真逆のことを言って、ラーベラムは心にもない応援をアルにした。


「ああ、それとアル」

「なにラーベラム?」

「今日から、俺はお前の兄貴になってやる」

「……本当、ラーベラム?」

「おう、俺は本気だぞ」

「やったー、よろしくねラーベラム……兄さん」

「ん、よろしくな、アル」


 アルは、輝くように笑った。

 ラーベラムは、不遜な笑みを浮かべた。

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