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ラーベラムはすでに8人もの兵士を殴り倒していた。
相当なつわものぶりを見せるが、兵士たちからの反撃も受けている。顔にはいくつもの殴打を受けていて、そこら中が赤くはれていた。
美形の顔も、不遜な表情も、こうなってしまえば、もはや意味がない。
ただ、「あと2人は道連れにしてやる」とか何とか、心の中で強烈に念じていた。
別に刺すや刺されるの戦いではないが、考えていることはそれに近いものがある。
一方の、アルはというと、兵士の1人に捕まっていた。ただし、その腕から逃げようと、捕まえられた兵士の腕にかみついたり、暴れたりして必死に抵抗している。
ただし、鉄で守られた兵士の鎧に噛みついても、全く歯が立たない。
「暴れるな!」
とはいえ、腕の中で暴れるアルには、兵士も手を焼く用で、アルの頭を小突いた。
始めは弱かったが、アルが抵抗をやめないので、次に襲った一撃は強烈だった。
目の前に火花が散って、星がクルクルと回る。
「ま、まだ、僕は捕まらないぞー」
と声は出すものの、もはや暴れるだけの力もなくしてしまった。
腕の中で、グッタリとして動かなくなるある。
「お前たち、そこまでにしろ」
だが、そんな乱闘が繰り広げられていた状況に、声が響いた。
その声は、全員の動きを止めるのに有効だった。
「どうした。
俺に恐れをなしたか?」
とはいえ、ラーベラム1人は元気なものだ。
ボロボロの状態なのに、強気に言い放つ。
全く、いい根性をした男である。
だが、兵士たちはもうこれ以上ラーベラムに襲いかかってこようとはしなかった。
代わりに、おお慌てで、槍を手にして、整列する。
「まったく、リユーシャンの兵士ともあろうものが、男1人と、子供相手に乱闘とはなんたる無様だ!」
一喝する声に、兵士たちは恐縮するように身を縮めた。
そして、その声を出していた男が、ラーベラムの前に姿を現す。
「あんたは、こいつらの上官か何かか?」
「まあ、そんなところだ。
ところで、そこの子供は私の連れだ。
お前がだれかは知らんが、私の保護している子供に手を出さないでもらおう」
ラーベラムの前に立ちはだかる男はそう言った。
「保護者……ああ、そうか。
お前が、ルートニックだな」
「なぜ、私の名前を知っている」
「俺の目が……」
と、そこまで言いかけて、ラーベラムは口をつぐんだ。
(俺の目がお前を見ていたからだ)
アルの左目の黄金の瞳を通して、ラーベラムはアルが見ているものを見ることができるのだ。
それに微かにだけ、気配や音だって伝わってくる。
人でないが故に持つ、精霊ラーベラムの力だった。
だが、そんなことをルートニックにいちいち説明するつもりはラーベラムにない。第一、自分の正体を、アル以外の人間にわざわざ知らせるつもりもなかった。
「……俺は、アルの兄のラーベラムだ。
偶然この街でアルを見つけて、それであんたのことを聞いたんだよ」
「……アルの兄だと?
だが、そんなことを私はアルから聞いてないぞ」
「そうかい。
だが、俺が兄貴だってことは、アルがちゃんと証明してくれるぜ。
な、アル」
と、兵士に捕まっているアルの方にラーベラムが視線を転じた。
だが、兵士に強く頭を小突かれたアルは、兵士の腕の中で、グッタリと動かなくなっていた。
「……」
「……気を失っているな」
「あちゃー、誰だよ。
アルを気絶させたバカは」
バカ呼ばわりされた兵士が、縮こまる。
ラーベラムにバカと呼ばれるのは一向に構わないが、ルートニックが誰何の視線を向けてきたために、兵士は縮こまってしまったのだ。
「まあ、いずれにしろアルの意識が戻れば、お前の正体も分かるだろう。
だが、お前が何者にしても、この責任は取ってもらうからな」
「責任?」
ルートニックの言葉に、眉をひそめるラーベラム。
その周囲に彼が倒した兵士たちが、無言で転がっていた。
「……」
「とりあえず、牢に放り込んでおけ。」
「ハッ」
ルートニックが命令すると、兵士たちがラーベラムを両方から抑えかかった。今度ばかりは、ラーベラムも抵抗しなかった。