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「おい、そこのお前!」
ラーベラムとの話が終わった直後だった。
突然、アルとラーベラムの2人は、突然兵士に呼びとめられた。
「うん?」
「違う、お前ではない。
そっちの老母をきている少年」
「僕ですか?」
「そうだ。黒いローブの少年を探している。
もしかしたらお前かもしれないので、我々と同行してもらおう」
いきなり呼びとめてきた兵士は居丈高に言い放つ。
「おいおい、黒いロープをきている子供なんて珍しく……いや、やっぱこんなダサいロープ着てる奴なんて、珍しいわ」
「ラーベラム、ヒドイよ。
僕だってこれ、好きで来てるわけじゃないんだよ」
「だろうな。
そんなのを好んできてるんだったら、俺はお前の服装のセンスを疑うぞ」
「お前たち、静かにしろ!」
無視して2人だけで話すものだから、兵士が誰何の声を上げる。
「おっ、すまんすまん」
と、たいて悪びれた様子もなく謝るラーベラム。
「ごめんない」
一方のアルには、少年ながらも素直に謝った。
「いいか、お前には私たちの命令を拒むことなどできないからな」
兵士がそう言うと、その背後からぞろぞろと兵士たちの大群が現れた。皆、武骨な鉄の鎧に、長い槍をもって武装している。
こんなに大勢の兵士を見たことのないアルは、兵士たちの威圧するような雰囲気に怯え、片手がラーベラムの服をギュッとつかむ。
「なあ、あたんら子供1人に何もこんな大勢で出張る必要はないだろう」
「お前には関係のない話だ。
さっ。そこの子供、こっちに来なさい」
「イヤだ!」
兵士は穏便に話しかけたものの、アルが大きな声で拒絶した。
「……捕まえろ」
だが、兵士たちは少年相手に手加減をするつもりがないらしい。兵士たちは武器こそ構えないが、アルに手をかけようとした。
「お前ら、礼儀ってものがなってないな」
そんな兵士たちの姿に、ラーベラムが不満を表す。
「なんだお前、まさか我々に楯突く気か?
我らはリャーシャン帝国を守護する……」
―――ドガッ
居丈高に語ろうとした、兵士たちの隊長にラーベラムの拳が命中した。
ドカリと隊長が地面に倒れる間、兵士たちは突然の出来事に身動きもできない。
まさか、目の前にいるラーベラムが、この人数相手に反抗してくるなど、思ってもいなかったのだ。
「アル、全力で逃げるぞ」
「えっ、わ、分かった!」
ラーベラムがアルの片手をつかんで、その場から全力で逃げ始める。山賊を相手にしていた時は、数で勝る相手にあっさりと勝ったラーベラムだが、さすがに兵士たちのやり合うつもりはない。
「お、追え!
あの2人を逃がすな!」
逃げる2人を慌てて兵士たちが追いかけ始めた。
そんな逃げる中で、アルは一つ確かめる。
「ねえ、ラーベラム。
逃げるなら、殴らなくてもことよかったんじゃない?」
「ああ、俺もそう思う。
だが、どうも体が正直過ぎて困るな
ハハハハハ」
「ええー!
笑ってる場合じゃないよ、ラーベラム」
「何言ってんだ。
こういうヤバい時ほど、面白くなるもんだろう」
「うわーん、ラーベラムのバカ。
僕たちきっと兵士に捕まったら、ただじゃすまないよ!」
不適に笑ってみせるラーベラムに、悲鳴を上げるアル。
なんだか、とんでもない人に出会ってしまったなと思うアル。この前の女性の時のラーベラムは、こんな性格じゃなかったのに、今のラーベラムはヒドイ。
幼い少年は、そう心に思うのだった。