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黄金樹の瞳  作者: エディ
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「もう、船なんて2度とのらねぇ」

「ホッホッホ、もっとしゃきっとせんと行かんぞ」


 ユフラス大河の旅を終え、アルとルートニックを乗せた船は、帝都近郊の都市に着いていた。

 久々の大地に足をおろしたルートニックだったが、船酔い続きの旅で、げっそりとやせこけ元気がない。


「バイバイ、オジイサン。

 元気でねー」


 一方、アルは、これでお別れになる船の老い爺さんに向けて元気いっぱいに、ブンブンと腕を降る。

 船乗りのお爺さんは、ゆっくりと片手を上げて、そんなアルに別れの挨拶をした。


 その後、ルートニックは街の安宿に行き、そこで宿泊の手続きを終わらせると、グッタリとペットに倒れ込んでしまった。


「俺、もうダメだ。

 今日はもう動けない」

「ルートニック元気出してよ」


 アルに励まされるルートニックだが、ちっとも元気は出ない。

 ペットに倒れ込んだまま、すぐに寝息をたてはじめ、アルが揺すっても、鼻を詰まんでも、ほっぺたを引っ張っても、全く起きる気配がない。


「ムー、ルートニックってば普通これだけすれば、起きるでしょう」


 疲れているという次元ではない、疲れのせいで、ルートニックは全く起きなかった。

 仕方なく、アルはどうしようかと考える。

 窓を見ると、そこから見えるのは、アルが住んでいた辺境の村では考えられない、都市の光景が広がっていた。


「すごいなー。楽しそうだなー」


 窓の下をのぞいてみると、そこにはアルと同い年ぐらいの子供たちが集まって楽しそうに遊んでいる。


「いいなー。楽しそう。

 それに、ここってトカイっていうところだよね」


 トカイという言葉を、村の大人たちから聞いたことのあるアル。

 建物がたくさん建っていて、人がたくさんいるところ。

 それがアルの知っている『トカイ』なのだ。

 意味はよく分かっていないが、アルの言っている言葉自体は間違っていなかった。


「……ルートニック、僕遊んでくるから、ここで待っててね」


 そう言い、アルは部屋から飛び出していってしまった。

 だが、アルに好きなように扱われても、起きることのなかったルートニックだ。アルが部屋を出て行ったことにさえ気付かず、彼は深い眠りを貪り続けた。





「あれ?

 ここ、どこだろう?

 おかしいな?」


 宿を飛び出して、アルが窓から見ていた子供たちが駆けて行った方に、アルも走っていた。

 しかし、すぐにその方向が分からなくなり、引き返して歩いているうちに、いいにおいがしてきた。

 おいしそうなお菓子を作っている店の傍で、涎を我慢しながらお菓子が焼かれる姿を見ていた。

 砂糖と小麦を使ったお菓子で、焼いているうちに膨らんできていい香りがする。


 ―――グー


 少年の旺盛な胃袋は元気のいい音を出すものの、お金がないから見ているだけだ。

 そのうちに、店の人に「そこにいると商売の邪魔だ」と邪険に追い払われてしまった。


「チェッ、けちだな。

 あんなにたくさんあるんだから、僕にだって暮れてもいいのに」


 そう思うものの、結局お菓子は手に入らなかった。


 仕方なく、トボトボ歩いていると、人通りの激しい場所にアルはきていた。

 大人たちが行き交う場所で、背の低いアルには、大人たちにさえぎられて周りの様子が全く見えない。

 あわてて、この場所から逃げようとしたが、すでに時遅く人ごみに流される形で、アルは全く知らない場所にまでやってきていた。


「あれ?

 ここ、どこだろう?

 おかしいな?」


 そうして出てきた言葉がこれだ。

 完全に、迷子になっていた。

 とはいえ、このまま迷子でいるわけにはいかない。


 アルは、もう人ごみの中はごめんだと、人のいない小さな通りに入り、迷路のようにいる組んだ袋小路を歩いた。


「おかしいなー。こっちの方だと思うんだけど」


 勘だけを頼りに歩いたものだから、アルはますます迷子になってしまった。


「ルートニック。

 ねぇ、どこにいるの?」


 ついには、心ボサくなってしまい。

 貧乏だが、唯一アルが頼りにできる人の名前を呼ぶ。

 だが、宿屋で突っ伏しているルートニックに、その声が聞こえるはずもない。


「ルートニック、ルートニックー」


 ついには大声を出して、アルは名前を連呼する。

 しかし、それでもルートニックは来てくれない。


「ううっ、ええっ、どうしよう」


 ついには大粒の涙をポロポロとこぼし、アルはその場で泣き始めてしまった。

 ルートニックが勝ってくれた、黒いオンボロローブを取って、エグエグと泣き続ける。

 青い瞳と黄金の瞳からは、止まることなく涙が、こぼれ続けた。


 ―――ガサリッ


「ルートニックー」


 音がした方をアルは見た。

 しかし、そこにいたのはルートニックではなかった。


「なんだ、ここは餓鬼の来るようなところじゃないぞ」


 見るからに柄の良くない男だった。ギロリとした眼でアルを睨みつける。それだけで、子供のアルがいなくなるだろうと思ったのだが、おとの予想ははずれた。


「お願い、ルートニックを探してね。お願いだから」

「ああっ!?俺は餓鬼につかあうほと暇じゃねえんだよ」


 ―――ドンッ


 男にしがみついて頼みこもうとしたアルを、男は足で蹴飛ばした。蹴飛ばされたアルは近くの建物の壁にぶつかり、小さな悲鳴を上げる。


「あうっ」

「まったく、餓鬼が……」


 それだけで男は済ますつもりだった。だが、アルは再び男の服をつかんでいた。


「お願いだから、お願いだから、ルートニックを探してよ。

 ねえっ」

「てめえ、どうやら俺を怒らして絵みたいだな。餓鬼だからって、容赦しねえぞ」


 男の気配が危険になった。

 子供相手と思っていたが、アルのしつこさに、男の対してありもしない忍耐心がすぐに尽きてしまった。

 腕を振り上げて、手加減なくその拳を振り降り降ろそうとする。


「!」


 だが、住んでのところで男の腕は動きを止めた。

 男の意思に反して、何者かが腕をつかんだからだ。


「誰だ、お前!?」


 男は、自分の腕をつかんだ人物に睨みを利かせた。

 その男は、金髪碧眼の、美青年。その表情には、不遜な様子を浮かべていた。


「ふっ、俺の名をたずねるとは、いい度胸だ。

 たかだか、街のゴロツキ程度が……」


 ―――ブンッ


「おっと危ない。

 人がしゃべってるところでいきなり殴りかかるなんて、ひどい奴だな」

「うるさい!

 お前、なんだか分からないが無茶苦茶腹が立つ!」


 突然切れる男。

 それに対して、金髪の青年は言い放った。


「なんだ、お前。俺の美貌に嫉妬して腹が立ったのか?

 だが残念だな。

 牛ガエルがどんなに鳴いたところで、しょせん醜い姿であることに変わりない。

 嘆くんだったら、そんな姿に生まれた、自分自身の運命を恨むんだな」


 ―――ブチッ


 男が完全に切れた。

 物騒な目をして、刃物を取り出す。


「ぶっ殺す!」

「クク、この俺をやるとはいい度胸だ」


 男は物騒に、金髪の青年は楽しそうに言った。


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