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「我が名はラーベラムだ。
下賤の者どもよ、よく覚えておくがよい」
いきなりだった。
山賊の群れと、山賊に襲われていた行商の前に立ちはだかった青年が、そういったのだ。
見目麗しい……と言いたいが、青年は何を狂っているのか、全身裸体の姿だった。
葉っぱ1枚すらない。全身本物の裸体の姿。
このあまりにも突然すぎる珍客の到来に、それまで山賊に脅えていた行商は唖然となった口が塞がらなくなった。
山賊の方も、交易商とにたような顔になってしまう。
「なんだどうした、私の姿に圧倒されて声もでないのか?」
青年は気障な声で言う。
ずいぶん格好をつけているが、全身裸体で言うのだから、格好いいも何もない。
せめてもの救いは、彼が美貌の青年ということだけだが、この場にいるのは全員男なので、黄色い歓声が上がるわけでもない。
「なんだ、お前は?」
「ハッ、これだから低能は困る。
私の名はラーベラムだと言っただろう!」
そう、自分の名前を豪語する青年。
「ボス、どうしやす。
こいつきっとこれですぜ」
山賊の1人が、自分の頭を指差しながら言う。つまり、頭がおかしいと表しているのだ。
「おまけに、あの格好じゃ、金目のものなんてありゃしませんぜ」
もう一人の山賊はそう言う。
そりゃそうだ。
本当の意味での全裸の人間が、何か金目のものを持っているはずがない。
「とはいえ、あの格好なら、その手のところなら高く買い取ってくれるそうですぜ。
頭がアレでも、見た目さえよければ金になるんじゃないですか」
「なるほど、そういう手があったな。
グヘヘヘ、野郎ども、あの変態を今すぐとっ捕まえろ!」
山賊たちの話はまとまったらしい。
金のない人間でも、金になるならそれでいい。
ラーベラムと名乗った青年と、その傍にいた行商を、山賊たちは一斉に取り囲んだ。
「へええっ、どうかどうか命だけはお助けを」
山賊たちに向けて、命乞いをする行商。全身ブルブルと震えて、助かりたい一心で、山賊たちの前にひれ伏す。
「どうしやす、ボス」
「そっちは、金にならねえ。やっちまえ」
「へい」
「ひえええっ!」
ボスの命令に、山賊たちが手にした斧を構えた。
「フフフッ、素晴らしいな。ますます私好みの展開だ
いや、もう私と言う必要はない。
いいだろう。お前らまとめてボコボコにしてやる」
「プッ、プハハハ
お前、それ本気で言ってるのか。本当に、頭がどうかしてるぞ」
「この人数相手に、ボコボコだ?
いいだろう。兄ちゃんの方をボコボコにしてやるぜ」
圧倒的優位をほこる山賊たちは、ゲタゲタと笑いながらラーベラムを見下していた。