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黄金樹の瞳  作者: エディ
1/27

前奏

前書き



 ―――この物語が何であるか?


 それは、書いている私にもわからない。


 実を言うと、私は彼らが進む姿を書いているだけに過ぎないからだ。

 その先に待ち構えるであろう、困難も喜びも、希望も絶望も……あるいは、そのようなものが果たして出てくるのかもわからない。


 なぜならば、物語を紡ぐ人間さえもが、この物語の先にある話を知らないのだから。


 ただひとつ願うことがあるとすれば、紡がれいく彼らの先に、わずかなりとも希望の光があらんことを。


(読書前に 作者よりのメッセージ)

前奏



 東西数千キロにわたって広がる、広大な大陸リューシャン。

 この大陸には四つの大国が存在する。

 西から順に、

 かって共和制国家として存在し、今は帝政となったロマーナ帝国。

 首都近郊に百万の常備軍を持つと豪語する、軍事大国リューシャン。

 術界の国と呼ばれ、三千年の時をただ一つの王朝が納めるエンシェントガーナ。

 そして広大な領土から産する豊かな物産によって、大陸随一の経済力を誇る華国。


 これらが、この大陸に存在する大国の名だ。

 この中の一つ、リューシャン帝国の建国には、次のような話があった。


 建国の大帝グラガレス・リューシャンは、黄金の瞳をしていた。それは人間の瞳ではない。千里の彼方を見通し、人々の心の中をガラスの如く見通す瞳。

 その瞳の前ではすべての存在が、隠れることがかなわず、大帝はすべての者を見通すことができた。

 その力を持って、大帝が率いる軍勢は諸国の軍隊をことごとく退け、数多くの国々を征服することで強大な国家を打ち立てた。

 それが大陸に君臨する四大国のひとつ、リューシャン帝国だ。

 そんな大帝の瞳を、人々は畏敬と憧れ、そして恐怖をもってこう呼ぶ。


『黄金樹の瞳』

 あるいは『黄金の双眼』と。


 黄金樹とは、知恵の木の実とも言われ、その実を食べたものは、すべての知識を得るとされる。すべての物事を見通す大帝の瞳は、まさに黄金樹そのものと言って過言でなかった。

 とはいえ、大帝にとて決して抗うことのできないものがある。

 大帝の死。

 歳を得たものに訪れる老いと死が、大帝にも等しく訪れたのだ。


 大帝の死後、再び黄金樹の瞳を持ったものは現れなかった。

 そのため時間の変遷とともに、黄金樹の瞳は、伝説の時代のこととして、人々の間で語り継がれていくだけとなった。


 人々はこの伝説を聞き、黄金樹の瞳の力に、焦がれる者もいた。とはいえ、伝説の力に焦がれることはあっても、そのような瞳が再び人の世に現れるなどと誰が思うであろう。

 もはや、誰もが伝説であり、ただのおとぎ話としか思わない程度に、時が流れているのだから。


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