ギフト
「……あと何日」
魔力過多症。
子どもしかかからず、一度発症すると致死率は8割を超える病気である。
鏡に写る自分の姿は幽霊のように色白くやせ細り、腕には注射の跡のあざが大量にできて緑と紫に変色していた。
魔法がバンバン使えてイージーモードだと思ったのにな……。
男爵とメイドの一夜の過ちの結果生まれた私は、父に認知もされずメイドの母に育てられた。母は父に捨てられてからかなり苦労した結果、過労の末に病死。一人残された私は魔法の才能に恵まれ冒険者として活動していたのだが、父の1人娘が魔力過多症を発症するとなぜか私もここに連れて来られた。そして同じく病気を発症。
治験と称して毎日何に効くかも分からない薬を打たれる日々。病気というよりは、そっちの薬の副作用でおそらくもう長くないことが手に取るように分かる。
そんな中、聞いてしまったのだ。
魔力過多症に効く薬が開発されたことを。
この病院に回って来る薬は1人分しかないことを。
それを私の腹違いの姉に使うことが決まったことを。
それを聞いた瞬間、私は心を決めた。
その日の晩、皆が寝静まった深夜、私は行動を起こした。
薬があるのは院長室。
カギなどまどろっこしい物は必要ない。
爆撃魔法でドアを破壊する。
ドカンと大きな音が響くが気にしない。
奥にある薬品棚に一際厳重なケースに入れられているから間違いないだろう。私はケースの中の薬を水と入れ替え元に戻す。
「何をしているんだ!!」
大勢の人が現場に駆けつけるが遅すぎである。
私は窓から身を投げた。
そして飛行魔法で冒険者ギルドへ急ぐ。
「……あれ……ミリア?」
ギルドの自室で横たわるシルヴァは病気になっても相変わらずの美少年ぶりは変わらなかった。
シルヴァは私と組んでいた魔法使いで、魔力過多症を発症していた。私よりも魔法の才能に溢れ、何より私好みの超美少年だった。
「シルヴァ!!これ飲んで」
シルヴァは素直に薬を飲みほす。
「……何これ、胸の痛みが消えた?」
よし!!これであの姉に一泡吹かせられる。
姉は私からの最初で最後のギフト、気にいってくれるかしら……。
だって助かるならやっぱり美少年よ!!
そう思った瞬間私の胸の痛みが増した。願わくば来世は魔法が使える美女に転生して長生きできますように……。
「ミリア、ミリア!!ダメだ、ダメだ――!!!」
死んだと思った私はこの後決死のハイヒールでシルヴァに蘇生させられ、溺愛生活を送ることをまだ知らなかった。




