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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
1章 始まりの旅

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9話 ピンチに駆け付けるのは仲間の役目‥!(戦闘中です)

誤字修正2026,1,25

 「ーー!あれだ!魔犬!」


 人間の住居地区に辿り着くと身長五メートルを超えて暴れている魔犬がいた。

 通常の魔犬は五十センチほどの大きさなのだが、今目の前にいる魔犬はその倍だ。

 木造の家を軽々と踏みつぶしている。

 魔犬は建物を崩壊させながら、散らばって逃げる人間をも踏みつぶそうとしていた。

 人々は死に物狂いで逃げているが、六歳ほどの少女が逃げている途中で転んでしまった。


 「…あっ!お母さん!お母さん!!」

 

 少女は大粒の涙を流し母親に助けを求めるが、人の流れで母親は少女に近づけずにいた。

 少女は今にも魔犬にの足に踏みつぶされそうである。


 「…っ!」


 俺はメルロとラチャをやや雑に地面に降ろし、魔道具を使って薙刀を取り寄せた。そして魔犬の足を目掛けて振り下ろす。


 「くっ」


 斬り落とすつもりで振り下ろしたが、思いの外硬い。

 俺は斬り落とすのを止め魔犬を薙刀で押し返す。


 「今のうちに逃げてくれ」


 そんな様子を無言で見つめていた少女に俺はそう告げる。

 

 「うん‥!ありがとうお兄さん」

 

 少女は頷き、魔犬がいる方向とは逆の方向へ逃げて行った。

 そんな少女の無事を確認したのち俺は先程のことを思い出す。

 

 (あの魔犬身体強化の魔法でもかかっているのか?魔犬はそこまで硬くなかったはずだが図体がでかい分硬いのか?)


 「グァァァァァ!!」


 そうこう考えているうちに魔犬は雄たけびを上げ口を開く。

 攻撃が来ると構えた瞬間、魔法でできた大きな鉄のコップが逆さまの状態で俺とメルロの頭上から落ちてくる。


 「!?コップ!?」


 てっきり真正面から攻撃が来ると思っていたので俺はたじろぐ。


 『メルロ【食べる魔法セイヴァーだ!』


 ラチャはメルロにすぐ指示を出し、俺も急ぎ薙刀で両断しようとしたが‥


 「硬いっ。斬れない!」


 斬れなかった。キーンといい音だけが響く。全く嬉しくない音だ。


 『こっちも発動が間に合わない!』


 ラチャもそう叫ぶ。

 ーーその数秒後俺たちは闇の中へ閉じ込められた。


 「‥‥」


 真っ暗の闇の中で外部から悲鳴や崩壊音が聞こえた。

 何か対策を立てねば死傷者が出かねないと考えた時、外部から女の声が響く。


 「良かった。案外すぐ見つかったし、すぐ捕まえられた」

 「誰だっ!?」

 「私?私はピネル。まーそれよりさっそれより私の傍にはお仲間のピスさんがいる」

 「ピス!?」


 ヒュッと息をのむ音が左側からする。メルロだろう。

 俺も焦りで拳を握る。


 (ピス。巻き込まれてるかもとは思っていたが…っ!)


 嫌な予感と言うのは当たってほしくないのに当たってしまう。


 「まぁそこから出られないだろうけどさ。無駄な抵抗はやめてね?今から私はこの街の人間を一掃する。それが終わったらちゃんとピスさんもあんたたちも返してあげる。だから」


 ーー大人しく良い子でいてねー


 そう少女_ピネルは冷たく言い放つ。


 「…っ!」


 俺は無力さから壁を叩く。

 先程見た感じでは人一人入れるかどうかだったが中は案外広かった。薙刀を振り回しても壁に当たる気配はない。出口が無いのかと思ったがちゃんと終わりはあったので、空間が拡張されているだけのようだった。

 

 (このまま閉じ込められてるわけにはいかないのに)


 とりあえず、目の前の闇を斬ろうと試みるが結果は同じである。またもやキーンといい音が響いた。

 だが負けじと斬撃を繰り出していると、暗闇からコップが物凄い速度で飛んできて俺の間合いに入る。

 ギリギリのところで避けるが、壁に当たる前にコップはまた俺の所へ戻ってきた。


 (追跡機能‥!?)


 何回かはじくがキリが無い。次来た時に切り刻んでやると思ったが‥


 「…。‥‥っ!!」


 別方向から二つ目のコップが現る。

 しかもサイズが一回り大きくなったものだ。


 「はぁぁっ!」


 俺は二つ目のコップにも斬撃を入れるが結果は同じ。

 その間にも一つ目のコップが戻って来て俺の頬をかすめる。

 かすった頬からは血が流れていた。


 (かすっただけで血が‥。メルロとラチャは大丈夫か!?俺は音で判断してどうにかなっているが…)


 魔法に関しては天才と言われるほどの才能を持つメルロだが、運動能力は驚くほど低い。

 そのためこのコップの攻撃に耐えられているかが不安でならない。


 「ーーくっ」


 他のことを考えている間にもコップの個数は増えている。

 秒単位で増えているのかは分からないが、今この空間にあるのだけでも恐らく一五個以上はある。

 どんどんと増えてきているせいで俺も対応しきれなくなっていた。

 それに増えてくるコップは殺傷能力が上がっている。

 :

 先程のコップをよけきれず腹に当たったとき、凄まじい痛みが俺を襲い血を吐いてしまった。

 一瞬意識が途絶えそうになったが、舌を噛み意識を戻させ、コップを足場にしくるっと前に回って危機を回避したのだ。

 だが何度も成功させることは体力的に難しい‥そう思った瞬間


 「うっ…!!」

 『メルロ!!』

 

 苦しそうなメルロの声とメルロを呼ぶラチャの声が聞こえた。


 「‥!大丈夫か!?‥メルロ、ラチャっ…っ」


 俺は二人に対して叫ぶが返事はない。その隙にもコップは容赦なく俺に向かってやってくる。

 さっきから鋭い刃のように向かって来るから質が悪い。

 ただのコップのはずなのに物凄い回転をしている。例えるならすべてを切断するノコギリのようである


 『‥おい!カシアこっちはもう無理だ!メルロが限界なんだ。魔法でもう食べきれない!何か策はないのか!?』

 

 ラチャがそう言う。だが策があったら最初から試している。

 だからもう案は‥そう思った時俺は一つの希望を思い出す。


 そうだまだピスがいる。

 まだ魔物の足跡が聞こえるということは、まだそこまで遠くに行っていないのだろう。

 ならまだチャンスはある。


 「メルロ、ラチャ!返事はしなくていい俺に案がある。ピスの名前を叫べ!大声で叫ぶんだ‥!」


 俺はそう言い放った。

 

 

 * * * *


 大きな音が聞こえる。

 目を覚まさなきゃいけないのに覚ましたくない。


 目を覚ましたらまた辛いことがあるかも。

 また裏切られるかも。


 だから私はずっと夢の中に居たい。


 ここにいれば自分が何者でもなくでもいいから。誰も私を否定しないから。誰も私を傷つけないし。苦しむ必要もない。


 だからーー


 「ピス!」

 「ピス!」

 『ピスさん!』

 『ピスさん!』


 私を呼ぶ声が聞こえる。


 でもこの声は私を呼ぶ声ではない。私じゃないもう一人の過去の私を呼ぶ声。


 だから…


 「頼むピス!力を貸してくれ!今の‥俺がまだ知らないピス!」


 ‥‥この声は私を呼ぶ声なのだろうか。


 過去の…前の私ではなく。今の私なのだろか。


 「もう一度!一からやり直したいんだ!っだから力を貸してくれ‥!」


 やり直すには目覚めるしかない。


 ー目覚めるの?ここに居たら苦しまないのに。


 うん目を覚ますよ。仲間が呼んでるもん。


 ーでもそれはあなたのことじゃないかもよ。


 そんなことない。それに今も過去も関係ない。仲間は助けるものだ。

 だから私は目覚める。風の精霊_ラピスラズリ!私に‥力を貸して!



 私は心の中で叫ぶ。力を貸してもらうために。

 『いいわよ?ただしちゃんと使いこなしなさいな』

 大人っぽい口調の風の精霊はそう言って私に力を授けてくれた。


 * * * *



 「っ!」


 私は目を覚まし、魔物の背を蹴る。


 (少しだけ体が軽い!今ならこの力を使いこなせる!)


 銀髪が少し伸び、耳が尖る。


 ー精霊化だー


 と誰かが呟いた。


 自分の体を確認したいがそれどころじゃない。魔犬と距離を取り、急いで今の状況を確認する。

 そして大きな鉄製のコップを発見した。あそこからカシアとラチャの声がするということは三人はあのコップに閉じ込められているのだろう。

 :

 「ラピスラズリ…!っクリーブ!‥っ」

 

 私は呪文を詠唱し鉄のコップを風の刃で切断した。

 鉄のコップは滑らかなバターを切断するように綺麗に真っ二つになる。

 だが詠唱すると同時に腕が痛んだ。金属バットでおもいっきり叩かれたような痛みである。

 だがその痛みを我慢し私はカシア達の元へ急いで向かう。だって彼らは私の想像よりはるかに傷だらけだったから。

 :

 :

  

 「カシア!メルロ!ラチャ!」大丈夫!?」


 カシアは口や頬・腕など様々な箇所から血が出ていた。

 メルロも似たようなものだが、左足を引きずっていたリ、右腕を抑えたりしているなどこちらの方が重症だ。

 そのためかいつもメルロの頭に乗っているラチャも自力で歩いて(?)いた。


 「ピス助けてくれてありがとう。俺は軽傷だ」

 『私も大丈夫です。ありがとうございましたピスさん。…ところでですが街は?魔犬はどうなっていますか!』

 

 緊迫した表情でメルロは私に聞いてきた。

 

 「私がさっきみた感じだと、魔犬の方が自我を無くして暴れ始めてたかも。でも住民もかなり避難したみたいで…誰が誘導したのかは分からないんだけど」


 私は先程一瞬だけ見た光景を告げる。


 「まぁとりあえず俺達の役目は魔犬からフィディスを回収することだからな。ピスと俺で主に攻めよう。メルロとラチャは遠距離からフォロー頼む」


 怪我をしている中でもカシアは冷静に判断をしそう告げた。

  :

  :

 

 「グルルルル!!」

 「サザ!落ち着いてサザ!」


 ピネルが必死に魔犬(サザ)に声をかけるが魔犬には届かない。

 先程まではピネルの指示通りに建物を破壊したり人間を狙って攻撃していたのだが今は暴走状態に近い。

 攻撃の狙いも定まっておらずあちこちに攻撃している。

 

 「ラピスラズリ!‥ゲイル!」

 

 私は手を魔犬に定め詠唱する。

 魔犬に強風が襲う。もう一発私は詠唱し、瓦礫などを巻き込んでぶつける。

 ぶつけるたびに足やお腹などに激痛が走るがそれどころではない。私はせめて意識が飛ばされないように耐える。

 そんな強風の中、器用に瓦礫をよけながらカシアは薙刀で斬撃を入れた。

 

 『【食べる魔法(セイヴァー)】』


 メルロも遠距離ながら杖を掲げ白い球体を出現させ魔犬の前足を食らう。

 

 『【食べる魔法(セイヴァー)倍増!】』


 もう一回詠唱したかと思えば白い球体を計四体出現させ魔犬の動きを止めた。

 私ももう一回攻撃を魔犬に食らわせ押せるかと思ったが‥


 「グアアアッアア!!」

 「っ!」


 魔犬が雄たけびを上げた瞬間、猛烈な速度で回転するコップが私たちの方へ飛んできた。

 精霊術で防ごうとするが、痛みのせいで上手く発動することができなかった。 

 そのせいで回転するコップが左足に直撃した。

 痛みが走る。肉を断ち切られたような激痛が私を襲う。


 「…っ!!!」


 せめて呼吸を止めてはいけないと思ったが上手く呼吸ができなかった。

 私は痛みで顔を引きつらせたと同時に空中で体勢を崩し真っ逆さまに地面へと落下した。

 

 ここまで来てお分かりの方もいらっしゃるでしょうが精霊術の詠唱は〈精霊の名前・どうやって動かすか〉って感じです。ピスは風の精霊を使役しているので、ゲイルで強風吹かせて!って感じですね。

 精霊の名前は心の中で会話してれば教えてくれます。教えてくれない気まぐれ精霊も中には居るのでぶっちゃけ中にいる精霊次第で精霊術の上達度は変わってきます。


 ではまた次の話で。11話で一章終了予定ですが12話になるかもしれないです。

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