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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
1章 始まりの旅

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7話 人間と魔法使い 

誤字修正 2026,1,25

 私はピネルに連れられ街の外れへと来ていた。

 辺りに人の気配はない。あるのは森の入り口だ。

 なんというか少しだけ不気味な雰囲気を感じる。私一人なら絶対と言っていいほど訪れないような場所である。


 「ほら見てここ」


 その声は少し震えていた気がしたが、人気がないから怖いのか?と判断し私はスルーした。

 だって私も現に怖いのだから。


 「え‥あ、んー?」

 

 そんな私の怖さはどうでもいいというようにピネルはとある一本の木を指さす。

 ピネルの指す方向をじっと見つめるが、私から見たら何の変哲もない木である。

 でも心なしか嫌な気配を纏っている気がする。

 ‥これは私の勘だが‥。


 ここにいては危ない気がして私はピネルと共に街へ戻ろうと考え振り返る。


 「‥ピネル‥!なんだか嫌な予感がする‥ここから離れ‥ーーーっ!!!」


 だが私の言葉が最後までピネルに届くことはなかった。

 急に後ろから羽交い締めにされ、口に布を当てられたのだ。強い力で抑えられて身動きができないせいで、後ろにいるピネルの安否が確認できない。もしかしたら私の勘が当たったのかもしれない。

 せめて一緒にいたピネルだけでも逃がそうと思い、必死に抵抗するが布に染み込んでいた睡眠薬か何かを吸ってしまったせいで段々と力が抜けていく。


 (まずい‥このままじゃ意識が‥)


 誰か助けを呼ばなくちゃ、このままじゃピネルが危険な目に遭ってしまう。そう思ったが、私の意識はもう保ちそうになかった。


 「じゃあね。ピスさん…」


 意識が途絶える寸前。

 そのように言うピネルの声が聞こえた。その声を聞いて私は遅くなりながらも気づいた。

 今の犯行はピネルがやったのだ。あぁ私は騙されたのだ。また。と。


 * * * *


 集合時間の十六時半を少し過ぎた頃、俺は集合場所の広場へと辿り着いた。

 広場を見渡せばこちらに向かって手を振っているメルロが見える。その頭にはいつもと同様ラチャがいた。


 『カシア遅い!』

 「すまない。少し道に迷ってしまって」


 メルロは頬を赤く染め、腰に手を当てていた。ラチャもメルロと同じような格好をしている。

 俺は時間に遅れたことを詫びた。

 だがピスがいなかった。ピスがいないことを疑問に持つと同時に俺は少し身震いをする。

 

 「‥?ピスは?ピスはまだ来ていないのか?」

 『はい。まだ来てないですよ。時間厳守主義の人だから私もおかしいなとは思ったんですけど‥』

 

 メルロも眉を下げ、自身の髪をずっといじっている。

 不安になるとよくメルロがする行為だ。


 「‥そうか‥どこで油売っているのか‥?」

 

 俺は広場にある時計をじっと見る。

 だが五分‥十分と時間が過ぎてもピスが広場に現れることはなかった。

 来ないことの焦りなのか、俺の心臓の音はどんどんと早くなる。手汗もすごいだろう。

 だが俺が慌てたら年下のメルロは余計パニックに陥ってしまうだろう。

 ここは冷静にならなければと思い、俺は深呼吸を繰り返す。だが繰り返しても胸のざわめきは止まらなかった。


 * *


 三十分が経った頃。来ないのはおかしいとなりピスを探すこととなった。

 だがすぐに散って街中を探すのではなく、途中まで一緒に行動して今まで集めた情報を交換してから手分けして探すことになった。

 :

 :

 『‥じゃあ手短に話すよ?僕達が聞いたのは六年前に魔法使いの六歳の子供が人間に殺されたって話。話によれば人間の少女に魔法で危害を加えたみたい。そして人間たちから暴力を振るわれて死んだらしいよ。‥ま、人の私刑で死んだってわけ』


 ラチャは淡々と話す。メルロはピスが何か危ない目に遭っているという不安からなのか、心ここにあらずという感じでいつもは頭にのせているラチャを腕に抱えフニフニと揉んでいた。

 地味に気になったが今は情報共有を優先させなければならない。目線を前に向け話を再開させる。


 「それは…痛ましい事件だな…」


 だがこのように魔法使いが人間に殺されるのは稀にある。

 というか五〇年前には全種族大戦の裏で魔法使い狩りが実際にあった。

 温厚で平和主義の魔法使いを大勢人間が捕まえたり殺したりしたのだ。危害を加えると言って。

 

 (他の種族と違って魔法使いは殺しやすいからな。他者を傷つけるのを嫌うタイプだし。それに人間と交流したがる種族も魔法使いくらいだしな‥)

 

 それをどの種族も助けなかった。実際戦争下の中で他種族を助けている余裕なんてなかったんだろうが‥。


 「…。では次は俺だな。俺の方は魔法使いに対する苦情が九割を占めているんだが‥。魔犬の情報が一つあった。これは依頼者からの情報だ。とある商家の娘らしいんだがその子が魔犬と一緒にいるのを目撃したそうだ。見間違いの可能性もあるから誰にも言っていなかったらしいが…」

 『見間違い‥カシアさん。商家の娘さんのご両親には話を聞いたんですか?』

 

 ラチャを揉んで少し落ち着いたのか、メルロは俺に問うてきた。


 「あぁ。聞いたのは聞いたんだが‥」


 俺はその後に言葉を続けず口をつぐむ。

 その行動にラチャとメルロは首を傾げる。


 (聞いたのは聞いたんだが。あまり会話にならなかったんだよな‥)


 そう。商家の娘の親に話かけたのは良かったのだが、魔犬の言葉を出すと、怒り狂って「魔法使いのせいだ」としか言わず話にならなかったのだ。

 

 (だが少し変だった気もする。他の住民の方からも魔法使いに関する苦情は聞いたが、あの夫婦だけ魔法使いを憎しみの‥いや憎悪していたような気がする‥)


 そこまで考え俺は少しだけ思い出す。先程ラチャから聞いた魔法使いが殺された話を‥。


 (…なんだろう。心なしか嫌な予感がする)


 だが推測しないわけにはいかない。俺は頭を回転させ思いついたことをメルロとラチャに伝える。


 「…これはあくまでも俺の推測だが‥ラチャが話した魔法使いが殺された話の魔法使いに危害を加えられたとされる人間の少女。もしかしたら商家の娘なのではないか?」

 『あー!可能性としてはあるかも!でもそこが繋がったとしても、商家の娘と魔犬の結びつきが分からないんだけど‥』


 ラチャは腕を組み体をうねらせる。

 よく分からないことがあるときにする動作だ。


 「いや分からないわけではない。もし魔法使いが少女に危害を加えていなかったら?冤罪だったとしたら?その少女が魔法使いと仲が良かったら?」


 そこまで言うとメルロも「閃いた!」という顔をする。

 だがラチャは分からなかったようでメルロからの必死のジェスチャーで理解しようと励んでいた。

 ラチャは頭の回転は比較的早いのだが、メルロ以外の人の感情を汲み取るのは不得手なのだ。

 ラチャが理解するまで待っていようかと思ったがそこまでの時間が惜しい。

 俺は話を続ける。

 もしかしたらこの事件にピスが巻き込まれてるかもしれないのだから。


 「フィディスは奇跡を起こす石とも言われる。今回の魔犬ももしかしたらフィディスで生き返らせた魔法使いなのかもしれない。だがフィディスは万能ではない。きっと今頃暴走化が始まりかけているはずだ…。魔犬と魔法使いに危害を加えられたとされる人間の少女が手を組んでいるとしたら、やることに予想はつく。魔法使いを殺した人間たちの復讐をするはずだ」


 焦りからか口調が早くなる。


 『でもなんで魔法使いは人型じゃなくて犬なんだろう?』


 俺も思っていた疑問をラチャは問う。

 だがその答えは俺にも分からない。


 「…それはエスパーにしか分からないことだろう」


 人の気持ちなんて完全に理解することは不可能なのだから。

 もし人の気持ちを完全に理解することができるのならばこの世界に争いはないだろう。


 「‥急いで商家の娘を探そう。なんとなくだがこの予想は当たっている気がする」

 『分かった』


 メルロも手で丸を作り了承していた。

 

 (…巻き込まれてくれるなよピス)


 なぜか嫌な予感が増して俺は走る速度を上げた。


1~3話までちょっと設定の説明が多すぎたなと感じやや修正を行っています。(25日、日曜日には終わる予定です。4~7話も少し改稿する予定です)内容を全部変えるというわけではありませんし、省略した設定などは一章が終わり次第出す設定集に乗せておきますのでご安心を。では引き続きピス達の旅をお楽しみください。

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