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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
1章 始まりの旅

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6話 実は子供説

誤字修正 2026,1,25

 「ふーなんか疲れた」


 私はそう言いつつ街を歩く。

 子犬の魔物の集団を倒し終わった後、手分けして情報収集をすることになったのだ。私が担当するのは主に魔法使いの住居地区の北側。カシアは主に人間の住居地区全域。メルロとラチャが主に魔法使いの住居地区の南側である。

 本音を言えばもう少し休んでいたかったのだが、いつフィディスを取り込んだ魔犬が暴走するか分からないので仕方がない‥。


 (みんなといた時は痛くなかったけど一人になったとたん手足が痛み出したんだよね‥)


 怪我をした痛さと言うより筋肉痛に近い痛みである。

 精霊術を使った以外心当たりはないので、原因は精霊術なのだろうが。


 (なんなんだろう‥精霊術って使うと筋肉痛になるの?あんまり覚えてないけど、多分使ったのはほんの数秒だと思うんだけどなぁ‥)


 数秒の使用で筋肉痛なら、もっと長い戦闘の時はどうなってしまうのだろうか。

 手足がもげたりするのだろうか。


 「…」


 考えるだけでも恐ろしいので、私は考えるのを止めた。

 過去を知るよりも前に死んだら意味がないのだ。

 それにネガティブなことよりポジティブなことを考えていた方が何でも上手くいくような気がする。科学的根拠はないが!


 そんなことを思いつつ私はポケットに両手を突っ込む。

 すると何かが左手に当たった。何かモノを入れた記憶が無いので、不思議に思いつ左ポケットを漁ってみると、ポケットから直径五センチの宝石が付いているネックレスが出てきた。

 取り出して、情報収集する前にカシアから渡されたことを思い出した。


 (そうだそうだ。認識阻害のバッジと共に貰ったんだっけ。フィディスが近くにある時、青く光る宝石のネックレス‥)


 私はじっとネックレスを見つめる。

 フィディスを取り込んでしまうと反応しないが、フィディスが取り込まれていないときは反応するらしい。

 まぁ今回の依頼で使わないのならしまっておいていいだろう。

 私はそう思い自分の右横にあるポケットにネックレスをしまう。


 (掛けていてもいいけど、私一人じゃネックレスつけられなかったんだよね‥)


 無念である。つけられると思ったのに‥。

 内心落ち込みつつ依頼に集中するため一度深呼吸をする。


 (ふー。それにしても…ここ静かだな‥)


 私は周囲を見る。

 物音は微かにするが話し声が無い。

 魔法使いは呪いのせいで言葉を話せないのは知っているが、笑い声も無いとは驚きである。

 メルロも笑い声と定義していいのかは分からないが「ふっ‥ふっ…」と笑うときがあったので、少しくらい声があってもいいのにとは思った。

 

 (というかそれ以前に魔法使いとすれ違わなすぎる!街中を歩いていれば情報集められると思ったけど、このままじゃ収穫ゼロで終わっちゃうよ!!)


 どうしよう。カシアかメルロ・ラチャの誰かと合流し一緒に情報収集するべき?

 と本格的に悩み始めた時。

 私は急に誰かに腕を掴まれた。


 「‥っ!誰‥!?‥‥っうわっ!」


 知らない誰かに右手を引っ張られるまま、抵抗する間もなく路地裏へと連れ込まれた。

 手足が筋肉痛じゃなければもう少し踏ん張れただろうが、痛いせいで手足に力が上手く入らない。

 だがこのままではマズイ。そう脳が判断したのか私は渾身の力で手を振り払う。

 ‥そしてそのまま足で蹴りを入れようとしたのだが‥私はそこで足を止めた。


 なぜならそこに立っていたのは子供だったのだから。


 「え。子供!??ご、ごめんね!怖がらせちゃったよね‥!」


 私は子供に対し全力で謝る。だが急に路地裏へ連れ込んだ方も連れ込んだ方と思うが…。…少女だしそこは許すべきだろう。

 それよりも私が気になったのは、少女が着ている淡い紫色のワンピースの袖から見える腕の傷だった。赤い筋になっていてとても痛々しい。

 

 (見た感じひっかき傷だし、猫とか犬とかの動物類にひっかかれたのかな?)


 カシアに聞けば薬を持っているかもしれない。あとで貰おう。そう考えていると少女が口を開く。


 「いいの。こっちこそ悪かったわ勝手に路地裏へ連れこんで‥。あーえっと‥本題よね。その‥」

 「ん?」

 「あんたネックレス落としてたわよ?」

 「えっ!??」


 そう言って少女は青色の宝石が付いたネックレスを差し出してきた。

 それはフィディスを感知する宝石が付いたネックレスである。なぜこの少女の手にあるのだろうか。


 「なん‥なんで‥??」

 

 私の頭の中は「なぜ」で一杯である。

 他に言葉を繰り出そうにも「なぜ」しか言えない。

 そんな私に呆れてか少女はため息をついた後ネックレスを私に押し付けた。


 「はぁー。あんたのポケットに穴でも空いてたんじゃないの?もう気をつけなさいよね‥」

 「あ、ありがとう!これ無くしちゃってたら怒られてたと思う!本当にありがとうね。えっと」


 感謝の言葉を伝えるべく少女の名前を言おうとしたが、私はまだ少女の名前を知らない。

 ここは「ありがとうお嬢ちゃん」でいいのだろうか。


 「私はピネル・ブラックフィアよ。ちなみに十二歳。あなたは?」


 迷っていたら少女が名乗ってくれた。助かる。


 「あぁ、ありがとうピネル。私はピス。ファミリーネームは無いよ。年齢は‥ちょっと分からない」


 少女‥ピネルは淡々と自己紹介をしてくれた。先程から思っていたことだが年の割には大人びている。

 年上相手でもしっかりとしていて臆さない。

 なんだか落とし物までして私の方が子供である。

 

 「ふーん。で?ピスさんはなんでここに来たの?この街の住民じゃないでしょ?」

 「まぁね。ちょっと調査をしに来たの。ピネル、ここ最近変わったことない?それか変わったことを知ってそうな人いないかな?」

 

 私は視線をピネルに合わせて問う。

 なぜ人間のピネルが魔法使いの住居地区にいるのかも少し気になるがそれは置いといていいだろう。情報をくれるなら誰だっていい。

 それに子供だし魔法使いと人間など関係ないのかもしれない。


 ピネルは「うーん」と声に出し思案した後、大声を出して私の手を掴んだ。


 「あった!ちょっと来て!」

 「えぇっ!?」


 私はピネルに手を引っ張られるまま魔法使いの住居地区を疾走した。


 * * * *


 魔法使いの住居地区_南にて


 【すみません。怪しい魔犬を見ていませんか?魔犬に関わらない情報でも構いません】

 

 私は露店で食べ物を売っていた男性の魔法使いに心の声を送る。

 魔法使いは魔力を通じてテレパシーを使用できる。魔法ではなく魔力の使い方によって取得できるものだ。

 魔力が無い他種族相手には使うことができないのが欠点だが。



 ーーこれで人に話しかけるのは十人目。

 なかなかこれと言った情報を得られない。

 得られないというか話しかけている魔法使いが今まで子供だったということもあるからだろうが。


 (‥だって大人‥少し怖いんだもん)


 だがこのままでは何も手掛かりなしで終わってしまうため、勇気を振り絞り大人に話しかけたのだ。

 最初は怖かったがラチャもいるからか少しずつ心が落ち着いてきた。

 魔法使いは基本的に平和主義であり温厚な種族として有名だ。だから大人でも怖くないと頭では分かっているのだ。頭では。

 だがそれに心が伴うかと言われたら別である。


 (なんでこんなに大人に対して恐怖心を抱いてるのかは忘れちゃったけど‥でも怖いのは変わらない…)


 ラチャに聞いても「僕にメルロの心が読めるわけないよ」と返されて終わってしまう。

 まぁ魔物は基本的に魔力の使い方が得意ではないので、私の心が読めないのは分かっていたが。

 そうこうしているうちに男性からメッセージが届いた。


 【あぁ。ちょっと関係ないかもしれないが数年前に魔法使いの少年が人間の大人に殺されたことがあった。今から五年前くらいの出来事だったかな】

 【殺された‥?すみません。差し支えなければもう少し詳しい話を教えていただけませんか‥】

 【あぁ。いいとも。そうだな‥あれは‥】


 男性はゆっくりとその出来事について語ってくれた。

 

 とても残酷で悲しい出来事を‥。

 

 

種族によって成人年齢も違います

成人年齢(寿命)


【人間】‥一六歳(寿命が約九〇歳)

【魔法使い】‥五〇歳(寿命が約五〇〇歳)

【天種】‥八〇歳(寿命が約七・八〇〇歳)

【精霊種】‥一〇〇歳(寿命が約一五〇〇歳)

【竜種】‥一五〇(寿命が約二〇〇〇歳)

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