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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
4章 ジークード王国

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7話 小さな主人

 


 「ラピラズリ。見て綺麗な宝石でしょう」

 

 少女はそう言って青い宝石を手のひらに乗せた。

 

 『…えぇ。この宝石は何というのですか?』

 「これはラピスラズリ。あなたと同じ名前の宝石よ。…ねぇラピスラズリ。わたくしは病弱で外へ行くこともままならない。けれどあなたはどこへでも行ける精霊よ。いつか私が死んだら世界を見てきてね。…だけど私が死ぬまでの短い時間は私の傍にいて頂戴」

 

 そう言って少女は瞳を閉じた。

 

 (わたくしは精霊。今の主人(マスター)が死んでしまえば契約者がいないわたくしは消えてしまう……だから世界を見ることなんてできない)


 けれど小さな主人のお願いを「無理」とは言えなかった。

 もう死が見えているにも関わらず明るく過ごす彼女を喜ばせたかったから。


 『…マスター。その願いわたくし風の精霊ラピスラズリが叶えましょう』

 「そう?約束よ?ラピスラズリ。小さな私の友人」

 

 ーーそう静かに話す友人はこの約束の一か月後に死んだ



 ーー病気はなく



 ーー誰かに殺されて


 * * * *


 「ねぇ。ラピスラズリ。…ラピスラズリ!ラピスラズリってば!!」


 懐かしい夢を見ていたような気がする。

 だが目を覚ましてしまえば、あまりよくは思い出せないものだ。

 

 『…!すみません何か御用でしょうか』

 「や、やっと返事してくれたー!もう返事がなかなか来ないから私のこと見捨てたのかと思ったよ…。あっそうだ。用件なんだけどね、今の私の状況分かるかな?見てた?」


 状況。心なしかピスは焦っているような気がする。

 緊急事態なのだろうか。

 ラピスラズリはピスの眼を借り外の状況を確かめることにした。

 この前と違い今回は視界を共有するだけなのでピスに断りは入れない。


 (…ここは…随分と手入れの行き届いていない家ね。何というか…今にも壊れそうだわ。それに…何か甘い匂いも…お菓子かしら?)


 ラピスラズリの記憶ではこんなボロい家一度も来たことが無い。

 周りに仲間も居なさそうなので誘拐でもされているのだろうか。


 「あのねあのね。実は私誘拐されてて…もしかしたらこのままじゃ…」


 ピスはそこまで言って言葉を噤んだ。

 

 『マスター?』


 呼びかけるが帰ってくるのは沈黙だ。

 考え事をしているのか、何か言えないことでもあるのか…。

 

 「…あのさ…。ラピスラズリは古代の巫女の役割って分かる?」


 急に話が変わった。

 何故古代の巫女の話が出てくるのだろうか。もう古代の巫女など存在していないだろうに。


 (…古代の巫女…確か火の管理をしていたとされる人のことよね。…でもそれ以外の役割は聞いたことないわ)


 他にも何か情報が無いかと思い思い出そうとするが、元から種族の生活に興味が無いせいか思い出せることはなかった。


 『お役に立てず申し訳ありませんが火の管理をしていたこと以外は知りませんわ』

 「やっぱりそうかー。手短に話すとね、私の前世がその古代の巫女らしくてーー」


 それで巫女としての役割を果たすために謎の二人組に誘拐されたらしい。そしてそのうちの一人がもしかしたら前世の父親かもしれないと。

 で誘拐した二人の会話によれば一人はピスが火の力を使うことで世界を平和にできるから協力しろ。そのための儀式をするからと言い、もう一人はピスの持つ火の力を引き出し何かをする…と独り言で言っていたのを聞いたみたいだ。

 どちらが本当のことを言っているか分からないが、とにかく逃げた方がいいとの結論に至ったみたいだった。

 まだ精霊術を使用できる体力が回復していないと相手は思っているらしくそこまで監視の目はない。

 

 逃げるなら今がチャンスなのでラピスラズリを起こし無理にでも脱出しようとしたのが今に至るまでの経緯らしい。


 『…話は分かりました。でもマスターの前世が古代の巫女だとは…あ。そう言えば一つだけ巫女について思い出しました…』

 「…そうなんだ…」


 トロンとした声でピスは言う。

 先程より眠そうだ。目元を何度もこすっている。


 『マスター?…一つ聞きたいことが…わたくしに声を掛ける前何か食べたり飲んだりしましたか?』

 「え?…いや何も食べてないし飲んでないよ?…だって毒が…あるかも…」


 何も食べていない。ということは最初に感じた甘い匂いは菓子ではない。


 『マスター!鼻を塞いでください!これは眠りを誘う…マスター!!』


 だが声が届くより先にピスが床に倒れた。

 寝息を立てて寝ている。


 それと同時にボロ屋のドアが開いた。


 「…よし。儀式の準備は整った。モリ!こいつを外の陣の中心に運べ!」

 「はい」


 大男はそう叫ぶ。

 そしてピスの体をモリが軽々と持ち上げる。


 (…体が寝てしまえばわたくしにはどうにもできない…。誰か‥マスターを助けて…)


 そう願うが誰も助けにはこない。

 また何もできずに主人を失うのだろうか。

 ただの契約精霊にはこれ以上のことはできないのだろうか。



 * * * *


 ーー西の地域ーーケルティッチャ城下街ーー


 ケルティッチャ城下街の宿屋の前にカシアが一人突っ立っているのをメルロは発見した。

 手を振りつつカシアに駆け寄る。

 

 『カシアさん!西の地域の全ての国にピスさんを探すよう頼むことが出来ました!』

 「本当か!?…だが…西の地域全てを探してもピスはいなかったな…」


 カシアは手に持つ地図に視線を落としそう呟く。

 夜鳩内で使える人材を全投入し

 西の地域をで駆け回りピスとピスを連れ去った人物を探していたのだ。

 だが結局丸二日かけても見つからなかった。


 「もうピスがいなくなり四日…どこに行ったんだ…」


 西の地域以外に行った可能性もあるが、西へ移動したとう目撃証言が入ったとほぼ同時に西の地域を大規模結界で覆ったのだ。

 だからこの結界が破られてない限り他の地域へ行ったとは考えずらい。

 

 ーー今は凶悪犯を捕まえるためとし、一度入ったら出られない結界を張っているがこれも長期になると難しい。

 結界を張っているのは精霊種だ。

 精霊術を維持できないのもそうだが、商人など生活に支障をきたすためせいぜい長くても一週間が限界だ。


 (一週間以内にピスを見つけなきゃいけないのに…あと三日しかない…)


 いやピスの安全を考えればそんなに猶予はないのだろうが。


 「…あ」

 『…?どうかしましたか?カシアさん』

 

 心配そうにメルロがカシアを見る。

 だがカシアは眉間に皺をよせ目をつぶる。


 (…そうだ。ピスの誘拐を調べようとしたとき…散らばった魂を元の形に修復させる…一つに戻す計画

あれを見つけた…)


 ピスは普通じゃない。

 精霊種でもない。人間っぽい。

 もしこれで人間に精霊種の魂を交えたら精霊種もどきになるのではないだろうか。


 (…魂…に関することは俺も知らない。…だが禁忌とされるということは何か大きな代償かなにかあるはず…)


 「…メルロ。ラチャ。…魂に関する魔法って聞いたことあるか?魔法でなくてもいい」

 『…魂…ですか…魂に関することは禁忌ですからね…私は知りません……ーーまぁ僕もだな。だが一つ噂は聞いたことあるぜ』


 そう言ってラチャはサングラスを触る。

 ラチャは格好つけたいときたまにこうしてサングラスを触ってから言葉を話す。

 カシアとしてはよく分からないこだわりなのだが、メルロには分かるらしい。

  

 『…魂を無理やりくっつけたものは記憶を失うってな』

 「それ本当か!?」


 ラチャに顔を近づけカシアは問うた。

 それが本当ならピスが何故ああなったのか段々と分かってくる。

 

 『いやあくまでも噂だって…まぁ信じてもいいんじゃねぇの?』

 「…そうか‥だが今回は魂をくっつけるわけではないよな…」

 『そうですね…。…でも儀式をすると仮定すれば、人気のない場所…かつ広い場所…。西の地は人が多いです。人がいないところの方が少ないのでそこを重点的にもう一度調べましょう』


 メルロはカシアの地図を覗き、なんか箇所か指を指した。


 『ここ…とか…あとここも…他の皆にも情報を共有しましょう』

 「そうだな…」


 カシアは頷きスマートフォンで連絡を取る。

 

 (あと少しだけ待っててくれ…ピス)


 * * * *

 

 「…ねぇマチス。何か嫌な気配がしない?」


 ダージリンが無表情でそう言った。

 今日はやけに辺りを気にしている。


 「そうっすかね…まぁ確かになんか禍々しいようなそんな感じはしますけど…フィディスとかなんじゃないすか?」

 

 フィディスだって十分禍々しい気配をしている。

 嫌な気配がフィディスという可能性だってあるだろう。


 「そうなのだけど…。…そう言えばマチス。これ封印が完了したフィディスよ。どこか遠い場所に埋めておいてくれる?人里に近くないのが好ましいわ」

 

 ダージリンはフィディスの入った袋を渡してきた。

 中には八個ほどのフィディスが入っている。


 (封印作業意外と時間かかるんだよなーまだこの前盗んだフィディス封印しきれてないし…)

  

 「了解っす。…けど何度も何度もフィディスを封印してもフィディスによる事件とか減らないんでしょうねー?」

 

 本当に不思議だ。こちとら何度も何度も盗みに入りフィディスを封印してはどこか遠いところに捨てているというのに。


 「…フィディスは増えるモノだからね…マチスは昔の話…お伽話知ってる?結構雄勁な巫女様の話」

 「あぁ。知ってますよ。ラチアに本を読んでとねだられたので最近読みました」

 「…じゃあ知ってるでしょ?フィディスは壺のそこに残った奇跡って言われてる。…実際は違うのにね。…フィディスは奇跡の石なんかじゃない。逆よ。フィディスが呪いなの」


 ダージリンは空を見上げそう言った。

 フィディスが呪いとはどういうことだろうか。

 フィディスが悪いモノとは知っていたが、呪いというのは聞いたことが無かった。

 話の続きを待っているとダージリンはまた話し出した。


 「火がね…元々悪なのよ。そこからフィディスと呪いは生まれた。皆はフィディスこそが残った奇跡で呪いが悪…そういているけど…悪からできたものに奇跡なんてない。…逆に呪いの方が私達人間以外の種族を守っているのに…皆それに気透いていない。…きっとこそ先皆気づかない。巫女の父がどんなに偉大なことをしたのかに…」


 ダージリンはそう言うと目を閉じた。

 

 次にダージリンが目を開けた時…どこか悲しそうな目をしていた。

 

 

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