6話 昔話 後編
元々巫女が殺される前も大災害が各地で起きていた。
だが巫女が殺された後はそれを上回るほどの大災害だった。
病が流行り、人は精神がおかしくなったり、地が荒れたり。
このままでは世界が滅びるとも言われた。
だが人間には火がある。火があればどうにかなると思われたが、火も消えた。
世界は闇に覆われもう駄目かと皆が思った。
ーーーそんな時に現れたのが救世主。
世界を創ったとされる創造神。
神の力を使い、災いをおさめたとされている。
その力の残骸が今の神器とも言われている。
そして世界は救われた
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「ーーーという話。はい。お終い」
そうモリは言って両手を合わせ叩いた。
「おぉ…?いい話だけど、なんか最後の方アッサリしすぎじゃない?」
最初から中盤まではかなり詳しく話しているように感じたのだが、後半は救ってハイお終い。という高速テンポだった。
さすがに端折りすぎではなかろうか。
「まぁ。色々あるのよ。質問があるなら受け付けるわ」
「…じゃあ。…他種族とか大丈夫だったの?話の最後全然でで来なかったけど」
人間から壺を貰い、壺を開けてしまっただけに呪いを受けた他種族。
呪いというのは今も残るあの呪いのことなのだろうが、大災害が起こっていた時どうしていたのだろうか。
力をつけて…いや。人間が所有していた火が消えたから力も消えたのだろうか。
気になってしょうがなかったのだが…
「…それは自分で考えて。私もよく知らないの」
「え!?」
そう返されてしまった。
「…この昔話。実話なんだけど…私もよく覚えていないの。第一の災害が起きた時に私は死んでたから」
「そうなんだ」
実.話なのか。だが詳しく知れないのは残念。そう一人で思ったが、今とんでもない衝撃発言をされたような気がする。
「ちょっと待って…今なんて…?覚えていない?」
「‥‥?…そうだけど‥‥あら?ここまで話してもあなたは思い出さないのね」
ダラダラと汗が流れてくる。
どういうことだろうか。「思い出さないのね?」という言葉はまるで私はこの話を知っていたような言葉だ。
それに巫女が外へ始めて言った時少女とした会話。あまりにも詳しすぎた。いや。まさか。
そう思いたいが嫌な予感というモノは当たるのだ。
モリがゆっくりと口を開ける。
「…この昔話に出てくる巫女はあなたの前世。そしてあなたを神殿から連れ出した少女は私」
「あぁぁー!!」
知らなくて良かった。というか知りたくなかった。
こういう面倒くさそうなことは聞くべきではないのだ。だって知ってしまえば巻き込まれる。
知らなければしらんぷりできる。
唸るがもう遅い。
知ってしまった。
「…そんなに知りたくないこと?…じゃあもう一つ教えてあげる。今この馬車を走らせてる私の仲間の男。あなたの前世の父みたいよ?」
「…父!?ま、まっさか…さすがに…」
違うと思いたい。
前世の親子関係とはいえ娘を刺す父親などいうだろうか。
いないと信じたい。
そう思い、私は頭を手で抑える。
その様子をスンと澄ました顔でモリは見ていた。
「…はぁー。ねぇモリ。この話って本当?作り話じゃないの?」
いっそ全て嘘だったらと思うが、なんとなくそれはない気がする。
だってこの話が本当ならば私が誘拐された理由がなんとなくだが分かる。
「本当よ。…嘘と思いたいならそれでいいけど。どうせ記憶も戻っていないものね。…だけど私たちには協力してもらうわ」
「…まぁ逃げられないからいいけどさ…。…じゃあモリのことも教えてよ。私のことはどうせ知ってるんでしょ?私だけモリのこと知らないの不公平じゃない?手伝うんだからさ」
私はそう言って頬を膨らませる。
こっちだって黙って手伝う気はない。
(かといって手伝わなきゃ何されるか分からないし…。だけどモリたちは私を必要としている。なら少しくらい強気な態度をとっても大丈夫だろう)
心臓がバクバクとうるさいが気にしない。
正直言ってこういう腹の探り合いのようなモニは苦手なのだ。
第五パーティーの中だとカシアとツァイトが上手そうだなと常々思う。
(逆にメルロは無理そうな気がする。可愛いし。素直だし。…アザーはどうだろうな)
意外とやるときはやる男かもと思うが…分からない。
「…そうね。じゃあ自己紹介するわ。私はモリ。前世は天種だったけど今世は人間。であなたの父親はシブキ。彼のことはよくは知らないけど竜種みたいよ?」
「そう…ねぇモリはどうしてシブキと一緒に行動してるの?目的は何?」
私はジッとモリを見た。
モリは視線を逸らすこともなく、私を見る。
「そうね…贖罪かしら。…前世で家族が病気でどんどん弱っていって死んじゃったの。…人間みたいに火の力があれば家族を救えたのにってずっと思ってた。だからあんなことをしでかしたんだけど…結果的に世界を滅亡しかけたじゃない。…で今世で記憶を持って生まれ変わってシブキに出会って「世界を救わないか?」って聞かれたの。そこから色々話を聞いてついてくことにしたのよ」
その時のことを思い出しているのか、モリは少し頬を赤らめていた。
(…何となくは分かったけど…)
私がこの話を聞いて思ったのはモリ騙されてない?だ。
モリは侍女時代よりも幼く見える。
(…なんかいいように使われてる気もするけど…でも証拠が無いしな…証拠が無きゃダメだ)
さすがにこれで「あんたは騙されてる!」って言ったらただの言いがかりだ。
(…でもモリたちの目的が世界を救うことじゃないとしたら…なんなんだろう)
私が知っている組織は夜鳩・陽虎・研究施設・モリ達の計四の組織だ。
夜鳩は世界平和のために主にフィディスを回収している。
一方陽虎はその回収されたフィディスを盗んでる。でばらまく。
二つの組織は世界平和とNot世界平和だろう。
あくまでもフィディスを完全に悪とした時の話だが。
この二勢力だけでも真逆のことをしている。本当に世界平和を考えているなら夜鳩と手を組んだ方がいいような気もするが…敵対する理由は何なのだろう。
ーーとそこまで考え、あることを思い出した。
「…あ!そうだ!ねぇモリ!あんたフィディス持ってるでしょ!どこで拾ったわけ!?」
戦闘中にたまたま見えたアレである。
地味に気になっていた。
私は目の前の鉄の棒を握り、森に顔を近づける。
「え?フィディス…。あーこれ?」
そう言ってモリはスカートをめくり太ももからフィディスを取り出した。
一…二…三…四…五つもある。
「それだよ…なんでこんな持ってるの?フィディスは危ないんだよ?」
「なんでって言われても…あなたこそ何言っているの?フィディスは昔話でおあった壺から呪いが出た後に残った奇跡の石なのよ?危ないわけないじゃない」
モリは首を傾げる。
本気で「何言ってんだコイツ」という感じの表情をしている。
「いやいや!奇跡の石かもしれないけど!結果的に身を滅ぼすんだよ!?見たことないの‥‥あ」
そこまで言って気づいた。フィディスのことは夜鳩の職員しか詳しく知らないのだ。
だって毎回フィディス関連で戦いがあれば関係者の記憶をご丁寧に消しているのだから。
ーーだからだからなのか!?共い私は頭を抱えた。
「…もう。昔話のことも覚えてなかったのにフィディスのことまで忘れちゃうのね。シブキも言っていたわ。フィディスが世界を救うんだって」
「いやいや!救わないって!それは毒と同じだよ!危険なの!私に渡して!」
私は檻の隙間から手を伸ばす。だがモリはフィディスを高く掲げた。
「もうしつこいわね。大丈夫なんだってば」
眉を吊り上げモリはそう言った。
もうこれ以上話しても無駄だろうかと思った時、急に馬車が止まった。
「…着いたみたいね。まぁとにかく。話はこれでお終い。ほら檻からは出してあげる。ついてきてちょうだい」
モリが懐から小さな鍵を取り出し、檻の鍵を開けた。
私はゆっくりと檻から出て、モリの後を追う。
「…これからだけど…あなたはここで少しの間過ごしてもらうわ」
「ここ…ってこのボロ屋?」
若干引き気味に問う。
だって目の前にあったのは今にも壊れそうな十畳ほどの家だったのだから。
(これ強風でも吹いたらすぐに倒れるんじゃない?それに部屋の中も寒そう)
どう見たって隙間風がバンバン入るような家だ。
「はー。しょうがないでしょ。まだちょっと儀式の準備が出来てないんだから」
「儀式?」
何のことだと思い私はモリを見る。
だがモリは視線を逸らし無視した。
(何か言いにくいこと?)
何をする気なのだろうと思い私はモリを静かに見た。
* * * *
ー夜鳩ー管理棟ー
ピスが誘拐されてから一日が経った頃。
カシアは城ではなく夜鳩の管理棟に戻っていた。
「ボス!…報告は入っていますよね!?ピスが攫われました。恐らくあの二人組です」
カシアはドアをノックした後、勢いよくドアを開けてそう言った。
「‥‥そうか。それよりカシア。ノックをしたのなら返事も待ってくれ」
カシアの目の前にいる老人はため息をつきそう言った。
「それはすみません。ですが…夜鳩のメンバーの一人が攫われたのです!人員をよこしてください」
「…そうは言ってもな…そこまでうちも人手があるわけじゃないんだ。それに捜索はしている」
「そうですか…で?足取りはつかめそうですか?」
「…そうだな…;西の地に入ったまでは追えたんだがそれ以降は…。…なぁカシア。もう少し落ち着きなさい。あとちゃんと休め」
ボスはクルクルとボールペンを回し、カシアに告げる。
「‥‥休んでますし落ち着いています。…それに何故ボスはそこまで落ち着いていられんですか!?ピスが記憶喪失になって見つかったときもです!あの時もあともう少しで…ピスは死んでいたかもしれないんですよ!?」
カシアは机を思いっきり叩く。
思い出すだけで怒りが湧き出る。
「…そうだな。あの時も…」
「そうです…それにあいつらがピスを何のために攫ったかもまだ分かっていない…。もしピスが…死んでしまったらどうするんですか…」
(もう失いたくないのに。…なんでいなくなるんだ)
自分の力不足に腹が立つ。
今回カシアは依頼中に何者かに襲われ眠らされていた。
ツァイトやメルロに話を聞けば、眠らされていた期間何者かがカシアに成り代わっていたらしい。
第三王子や護衛のルベラとヒスイにも話を聞いた。
成り代わっている時のカシアは普段通りのカシアだったそうだ。
(俺が強ければ眠らなかったかもしれない。…ピスも誘拐されることはなかった)
カシアは自身の拳を強く握りしめた。
* * * *
「♪~♪~~」
透き通るような歌声が聞こえる。
どこからだろうか。
「…あ」
見つけた。牢屋に入れられた一人の女性を。
牢屋の隙間から手を伸ばし小鳥を乗せていた。
そして高い声で歌うのだ。
綺麗で落ち着く声。だけど特別上手というわけでもない歌。
だけど聞き入ってしまう。
そのまま歌声を聞いていれば女の方が自分に気づいた。
「あ…」
すぐにその場から離れようとしたが、女が「待って」と言い声を掛けた。
振り返るとニコリと笑い自分を手招いていた。
「私…み…ええとね。ピスっていうの。あなたは?」
ピス、小鳥みたいな名前だなと思った。
「俺は光っていうんだ」
そう言ってピスに対し手を差し伸べた。
ピスは嬉しそうに洗い自分の手を握った。
ーーーこれはいつかの思い出。
忘れられた思い出。




