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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
4章 ジークード王国

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4話 誘拐

 

 「モリさん…」


 目の前にいたのはモリだった。

 モリは右手に長く鋭い剣を持っていた。刃先には血がタラタラト流れている。


 「…あまり驚かないのね、もしかして分かってたのですか?」

 「…あぁ」


 王子は頷き、私の服の裾をギュッと掴む。

 王子は先程教えてくれたのだ。何故モリが敵だと分かったのかを。


 理由はそこまで難しくはない。

 モリのことを暗殺者が狙わなかったから。殺そうとしなかったからだ。


 何回目かの暗殺者が王子の部屋にやって来た日。

 あの場にモリもいた。

 私と暗殺者が戦っているとき、モリと王子派部屋の隅にいて丸まっていた。


 私と王子のことは殺す気満々だったが、モリのことは一切狙っていなかった。

 いや、私には狙っているように見えたが王子には見えなかったらしい。


 全てモリが王子を覆う隙間を狙って攻撃をしていた、そう王子は言っていた。

 だがら何回も来ている暗殺者でも、あの時は怖くて震えていたらしい。

 

 (まぁそれだけじゃなくて、身近な人物が怪しいってなって消去法したらモリが一番怪しかったからって感じだったけど)


 だがまぁ王子の予測は当たってた。


 「そう。つまらないのね。私以外は疑わなかったのですか?」

 

 ジリジリとモリは近づいてくる。

 私も王子と一緒に下がる。

 近づかれてはすぐに攻撃に対処できない。


 「う、疑った。だがお前が一番怪しかった。……私に普段近づける人間はあまり多くない。アイト、モリ。ルベラ、ヒスイそして臨時で護衛に加わったカシアとピスくらいだ」

 「そうなんですか。ではなぜ他の人ではなく私を?アイトがフードを被った不審者にお金を渡しているところを私は何度か見ましたし、ヒスイもよく鳥…魔物ですかね?から手紙を受け取っているのを見たことがあります。ルベラも噂好きです。もしかしたら王子の情報を集めて城の外部に売っているかもしれませんわよ?」

 「…そうだな。みんな怪しい。だがアイトは病にかかっている妹のために、王宮の医者に金を払っているだけだ」

 

 ーー詳しく聞けば、アイトの妹は重い病にかかっているらしい。

 だがどの医者に診せても、病は分からず。だが王宮に勤めている医者なら原因が分かるかもと、アイトが王宮で働くことを条件に王宮の医者を特別に貸し出すこととなったらしい。

 元々有能なアイトのことを王子は欲しがっていたので、丁度良かったのこと。

 そしてどうせ自分が働いているのなら、医者代くらい自分で出したいとのことで、定期的に医者に会っては金を渡しているらしい。


 ーーということなのでアイトが敵ということはないみたいだ。

 このことを私達に話して大丈夫なのかと聞けば「知っている者は知っている」ので大丈夫ということだ。

 

 「ーーで次にヒスイだが…惚れた女性とただ文通しているだけだ。…うむ。そしてルベラだな。ルベラは…そもそも護衛じゃない。詳しくは言えないが元々疑ってはいない」


 そう王子はきっぱりと言った。

 何か敵ではない決定的な証拠があったのだろうか。


 「そう。…もう時間ね。…じゃあ話もお終い。…王子は貰っていくわ」

 「ーーっ!ラピス…ラピスラズリ!!レーヴ!!」


 モリがそう言って、前方から消えたと思ったら真後ろにいて王子へと左手を伸ばしていた。

 私は急ぎ、精霊術で霧を作る。


 「王子!逃げますよ」


 私はそう言って王子の手を取り走った。今作り出した霧は幻覚を見せる効果がある。

 すぐには脱出できないだろう。


 廊下へ出ようとドア付近を見ればルベラがお腹から血を流して倒れていた。

 死んでるか生きてるかは分からない。だが今確認してる余裕はない。

 

 廊下へ出て、王子と共に右手に走る。この先をずっと走り突き当りの階段で下に降りる。

 地下まで下りれば使用人のスペースへと出ることができるのだ。その中にカシアもいるはず。

 近づきすぎずに階段から大声で叫べば気づいてくれるだろう。

 あまりにも近くへよれば、追ってきたモリの攻撃に巻き込んでしまう。


 「っ。…王子大丈夫ですから。絶対に死なせませんから」

 「あ、あぁ。それよりピス大丈夫か?顔色が悪いぞ?」 


 まさか王子に指摘されるとは思わなかった。

 上手く隠しているつもりだったのだが。


 (ーふ。手先が痛くて動かせないんだよね。なんて言うんだろう麻痺してるっていうか‥)

 

 そう思い私は王子と手を繋いでいない方の手を見る。

 動かそうと思っても動かないのだ。

 

 「…大丈夫ですよ。少し焦っているだけです。だから心配しないで…っ!王子!」


 近くの窓ガラスが割れた。

 パリーンと音がして。

 ガラスの破片が、あまり内側に無いことを考えればモリが後ろから私たちを攻撃して外したのだろう。

 新たな侵入者の攻撃というわけではない。


 「ーーーはぁっ!」

 「っ!」


 モリは地面を足で蹴り一気に距離を縮めてきた。

 そして剣を振り下ろす。

 風を吹かせ、周りの物を浮かしモリへと投げつける。

 だがそれすらもモリは細かく刻んだ。


 「…あ」


 そしてまた追加攻撃で今度はガラスの破片を使った。

 風に纏わせモリにぶつける。その時、ヒラリとスカートが揺れ、まくれる。

 自然にスカートの中が見え、彼女のスラリと長い足が見える。

 世間ではパンチラで喜ぶそうだがそんなのはどうでもいい。


 (太ももに何か付けている…あれは…フィディス…!)


 一瞬だったが、絶対にフィディスだった。

 淡い緑色。暗くても輝く不思議な石。

 見間違うはずがない。この前研究施設(ケルディット)で何十個も見た。


 (この女が依頼で言ってた暗殺者で間違いないかも)


 今まで動かなかったのは気になるが、それは後で聞けばいいこと。

 私は風の弾丸を作り出し何発も当てる。


 先程のガラスの破片が当たっているからかモリから血が流れている。

 だがそんなこと気にしないと言わんばかりにモリは距離を詰めてくる。


 何回も攻防を繰り返すが、これ以上威力の高い攻撃を続ければ私の身が危険だ。

 逃げようと試みたが上手くいかなかった。

 

 「…っ‥‥」


 もう息も荒く、攻撃も食らう方が多くなってきた。

 そろそろマズイ。そう思った時。


 「ーー捕まえた」


 そうモリが言った。

 後ろを振り返ろうとしたが、それは出来なかった。

 何故か。


 私の意識もなくなったからだ。

 精霊術の使い過ぎではなく、モリによって。


 * * * *


 「はー。素直に捕まってくれればいいのに」


 そうモリは言ってピスと王子をそれぞれ脇に抱える。


 モリの目的は神器が保管されている場所だ。

 王族の生体認証が無ければ通れないなんて面倒くさいシステムだと思う。


 だがこうして王子も手に入ったしいっかと思いモリは歩き始める。

 お宝はもう目と鼻の先である。

 

 : 

 :


 「ここ…かな」

 

 モリは何もない壁を見上げ押す。

 そうすれば壁はくるりと回り中へ入れた。


 ここからが面倒くさいところだ。

 目の前には扉がある。

 そして扉の脇に指を置くところがある。

  

 モリは王子の指先をそこに置く。

 その数秒後。扉はガシャンと音がしてゆっくりと開く。

 またも同じような生体認証が置かれて、モリは地道にその扉を通っていった。


 そして全ての扉の鍵を開け終わったとき。


 それはあった。



 「…これね」


 目の前には金色に輝く杯があった。宝石も何も埋め込まれていないが、神々しいというのだろうか。

 そのような感じがその杯にはあった。


 「よし。これで任務は達成。…王子にもう用は無いし、ここで寝かせとこう…」


 王子を床に横に置き、ピスのみを抱える。

 そしてここを爆破させて帰ろう。そう思った時だった。


 「…?…!」

 

 ピスがモリの腕をひっかき。精霊術を使い攻撃したのだ。

 すぐにピスのことを離さなければ今頃腕がちぎれていたかもしれない。

 

 「抵抗はしないでもらえる?すぐにでもここを離れたいの」

 「嫌だ。…そもそもあんた達何が目的なの!?私だったわけ!?」

 「…そうね…あなたと神器が本当の目的ね」


 そう言ってモリは剣を再び構える。

 攻撃を仕掛ける。そう思った時だ。


 「ピス!大丈夫か」


 そう言うカシアの声が保管庫に響く。

 カシアの声を聞いた途端、ピスの表情はほころび「モリさんが敵だったの!カシアも手伝って」と声を上げる。


 カシアは「えっ」と言いモリを見る。

 だが驚くだけで攻撃をする姿勢を見せない。


 それにカシアは私を攻撃することはない。

 だってここにいるのは本物のカシアではないのだから。

 

 入れ替わったモリの仲間。


 カシアが攻撃しないことを不思議に思ったピスが「カシア?」と問いかけるがもう遅い。

 ピスの腹にはカシア(偽)の手が突き刺さっていた。

 

 「え」


 ピスは目を見開き、地面へとへたり込む。

 そして腹を押さえ、うずくまってしまった。


 「…ここまでしなくてよかったんじゃない?」

 「…こうでもしないと連れて行けないだろ」

 「それもそうね」


 そう言ってモリはピスを抱える。

 もう抵抗はしない。


 ーーどうやら王子は敵は一人のみ。古株が怪しい。と考えていたようだけがそれは間違い。

 敵は元々二人いたのだ。

 一人は古株。もう一人は入れ替わった新人護衛だったのだ。


 「…目当ての物は手に入った。古代の姫様。…役目はしっかりと果たしてね」


 そうモリは言葉を零し、ピスの髪の毛に触れた。


 * * * *


 ーーピスが攫われて三〇分後。戦闘音で目が覚めた人たちが、第三王子の宮や保管庫周辺に集まっていた。


 「…これは…一足遅かったようじゃの…」


 ツァイトはそう言って第三王子の宮を見る。

 カーテンは風に斬り裂かれたかのようにボロボロになり窓ガラスも割れている。

 地面も大型の魔物が爪を振るったのかと思わせるほどに深い、傷跡があった。


 『…ツァイト。ねぇピスさんは?ピスさんはどこ行っちゃったの!?』


 騒ぎを聞きつけたメルロとラチャも第三王子の宮にいてツァイトに質問攻めしていた。

 まず第三王子とピスがいないということで騒がれていたが、第三王子は保管庫で寝ていた、

 それで一先ずは安心という感じだったのだがピスがいないのだ。

 まだいなくなってからあまり時間が経っていないから、城内すべてを探したわけではないが呼びかけにも応じない。

 

 『…あ。そう言えばカシアさんは?カシアさんは…?ピスさんと交代で護衛だったんだよね?いないの?』

 「カシアか…」


 確かにカシアを見ていない。

 依頼中も一回も見なかった気がする。


 何故だ?と思いツァイトが頭を悩ませていると、誰かの声が宮に響く。


 「だ、誰かー!男の人が縛られて寝ているわ!」


 声が近くだったので、急いで駆け付ける。


 「「!?」」


 そしてそこにいたのは、縛られて寝ているカシアだった。

 発見したのは立ち入り禁止の貼り紙がされていた倉庫だった。


 「…これは…ちと事情を聞かねばな」


 ツァイトはそう言って眠るカシアを見た。

 

 依頼は暗殺者から王子を守るというモノだった。だがこれは仕組まれていたのではないだろうか。

 暗殺者はあくまでも、騒ぎ立てるための囮。

 そして敵の本当の狙いはピスだったのではないだろうか。

 

 (…なんか嫌な予感がするの…)

 

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