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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
4章 ジークード王国

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40/50

3話 敵は誰?

 今回は少し短いです。


 城の中でも人があまり寄り付かない場所。

 呪いの木とも言われる木が立っている傍で、紺色のフードを被った男と第三王子の側近であるアイトの二人が話していた。


 「これ。お金です。これで足りますか?」


 巾着を開き、フードを被った男に中にあるお金を見せる。

 入っているのはお金だ。銀色の丸いコインがりんごが二つ入るくらいの大きさの巾着一杯に入っていた。


 「…あぁ」

 「…お願いしますよ?…足りなければもっと稼ぐので…どうか」


 アイトはそう言ってフードを被った男に頭を下げる。

 フードを被った男はそれを見て、頷くとその場を去った。


 「…でもやっぱり心配…ってあ!もうこんな時間!急がなくては」


 そう言ってアイトもその場を離れた。

 その背後で呪いの木の葉が風によっていくつか飛ばされていた。


 雲がかかった空の下で葉は飛ばされていく。

 ユラユラとユラユラと。

 誰にも知られずに飛んでいく。


 * * * *


 第三王子の専属侍女であるモリは一人。第三王子の宮の廊下を歩いていた。


 (これが…先程渡されたモノ)


 モリは右手に持つ一枚の紙に視線を落とした。

 そこにはタイムスケジュールが書かれている。

 ーー日時は今日だ。


 「これでやっと次に進める。…もう命の危険に晒されることはない」


 モリは思わず口角を上げる。

 がすぐに戻した。

 誰に見られているか分からない。気を引き締めなければ。

 そう思い首を横に振った。


 「ふー。これから王子の…っ!」

 「わっ!」


 次にやるべきことを考えていたら、誰かとぶつかった。

 だが相手が小柄だったのか、よろけることはなかった。

 逆に相手の方が、こけたようである。


 「すみません。前を見てなかったもので」


 そう言ってモリは手を差し伸べる。

 

 「いえ。こちらこそ…ってモリさん…」

 「…アイト」


 まさかのぶつかった相手は第三王子の側近のアイトだった。

 アイトもぶつかった相手がモリと分かると、慌てて「すみませんすみません!」と平謝りしていた。


 「…別に怪我をしていないので大丈夫です。アイトは?急いでいたのではないのですか?」

 「そうでした!ではモリさん失礼します」


 そう言って律儀にモリに一礼した後、アイトは第三王子の部屋がある方へ走っていった。

 モリも走っていくアイトの後姿を見届け後、廊下をまた歩き始めた。


 * * * *


 第三王子の宮で使用人たちの休憩場所となっている、中庭の端にてヒスイは昼食を取っていた。

 

 「…。あ。カシアさん」

 「……ヒスイか」


 一人黙々と卵サンドウィッチを食べているところに、臨時の護衛であるカシアがやって来た。

 「一緒に食べるか?」と誘い「邪魔でないなら」と了承を得たので、ヒスイはサンドウィッチが入っている茶色の長方形の籠を机の中央から端に寄せ、カシアが弁当を置くことのできるスペースを作った。


 「…あれ?今日は弁当じゃないのか」


 てっきりいつもの手作り弁当かと思っていたヒスイだが読みが外れた。

 手には茹でたジャガイモが五つ入った容器を持っていた。

 ーーいや。これも弁当と言ってしまえば弁当なのだろうが、ヒスイが想像していたのは、いつもカシアが持ってきていた彩り豊かな弁当だったのだ。

 肉や野菜がバランスよく入っているやつ。

 どんなに忙しい日でも毎日欠かさず持ってきていたので不思議に思ったのだ。


 「まぁ。弁当の容器が壊れてしまいまして。今日はジャガイモだけです」


 そう言ってカシアはジャガイモ一つを手でつかみ、口に入れる。


 「そうか。なら俺のサンドウィッチ別けてやろうか?それだけじゃ足りないだろ」


 そう言ってまだ三つ残っているサンドウィッチを見せる。


 「…お気遣いは有り難いのですが、貴重なヒスイさんの昼食を奪うわけにはいかないので」

 「そーかよ」


 ヒスイはそう言ってまた黙々と食事を再開する。

 元々お喋りなタイプではないので、静かだ。

 カシアは知らないが、話さないということはヒスイと同類であろう。


 だがなんか気まずいと思ったので、先程渡された手紙を読むことにした。


 (送り主…の名前は書いてないか…ったく名前くらい書けよな)


 心の中で愚痴りつつ、中を確認していく。

 手紙にはぎっしりと文字が埋めてある。

 本嫌いなヒスイからしてみれば勘弁してくれ。という感じだ。

 だが読まなければ手紙の意味が無いので、ゆっくりとだが読み進めていく。 

 

 「…!」


 だが読み進めていくうちに、驚くべき内容が書かれていることに気が付いた。


 「悪いカシア。俺もう行くわ」

 「?分かりました。仕事頑張ってください」

 「おう」


 俺はそう言って、急いで机を片付けた。


 * * * *


 『あ。ツァイト』

 「…メルロとラチャか。元気だったか?」

 『元気ですよ!ツァイトは?』

 「元気じゃ元気。二人が護衛しているのは第二王子じゃったかの?」


 ツァイトがそう言えば、メルロは頷く。

 

 『そっちは…第一王子だっけ?大変そうだな』

 

 ラチャがポヨポヨしながらそう言った。

 だがメルロはそう言うラチャをみょーんと横に引っ張る。

 

 『いてぇ!やめろよメルロ!分かった今の言葉撤回するから!』


 ラチャが慌ててそう言えば、メルロは再びラチャを頭にのせた。

 メルロは知っているのだ。ツァイトが第一王子の元護衛だったということを。

 だから第一王子のことを悪く言うことをツァイトが好まないこともメルロは知っていた。


 「やはり普通はそう思うんじゃのぉ。いいお方なんじゃが」

 『そううなのか?だが第二王子も第一王子のことあんま良くは言ってないぞ?…あ。そうだ。それで思い出したが…なぁツァイト!第三王子の暗殺者の話知ってるか』


 急に話を変えてきたなとツァイトは思ったが、口には出さず「そうじゃのぉ」言う。


 「ピスとカシアが護衛しているからの。少しは分かるぞ?」

 『おぉー!そうなんだ。なぁツァイト。暗殺者を手引きしている奴いると思うか?いたらーー痛っ』

 

 ラチャが目を輝かせてそう言ったが、さすがに誰が来るか分からない廊下で話す内容ではないので、メルロは再びラチャを横に伸ばした。


 『これも話しちゃダメなのか…もう。じゃあメルロ!ピスかカシアに会いに行こ!何か話が聞けるかも…痛い痛い!!引っ張る力、強くするな!』


 これ以上、ツァイトと話していたら話してはいけないことまで話してしまいそうだったので、話を無理やり終わらせた。

 それにしてもピスとカシア。最近この二人には会えていないなとメルロは思った。


 (…うーん。暗殺者の件は聞かないにして、普通に話に行こうかな。何かたわいない話をしたいなぁ)


 そうメルロは思った。


 * * * *


 ーー第三王子の宮ーー


 私が今日の護衛の時間を終え下がろうとしたとき、王子に声を掛けられた。


 「ピス。…少し相談があるんだが…いいか?」


 第三王子にそう言われ、私はゆっくりと頷く。

 王子から相談事なんてなんだろうか。ただの語彙である私が答えられることなのだろうか。

 

 「…えぇと…あのな…」


 王子はそう言った後、視線を下にした。

 そしてキョロキョロと周りに誰もいないか確認している。


 (ここは第三王子の部屋だから、不審者はいないはずなんだけどなー。何を警戒してるんだろう)


 少し疑問に思いつつも、内密な話がしたそうだったので私は自分の耳を指さした。

 最初は意味が分からないという顔をしていたが耳元で囁け。という意味が分かったのか、王子は私の耳元へ来て、話し始めた。


 「あのな。ピス。…暗殺者のことなんだ。…もしかしたら暗殺者は…」

 「ーーーえ?」


 まさかの人物の名前が出たので、私は目を丸くする。


 「本当にその人なんですか…?」

 「…多分……」


 王子も悲しそうな顔をして、そう言った。

 今あの人はいない。だがもしあの人が暗殺者だったとしたらーー


 「でも‥‥もしその人が暗殺者だったとして…何故今まで王子のことを殺そうとしなかったのでしょうか。…それに今までの暗殺者もあの人の手引き?」

 「分からない…だが…」


 そうな王子が悩んだ時。王子の部屋の扉が「ダンッ!!」と大きく音を鳴らした。

 なんだか嫌な予感がして、私は王子を自身の背中に隠した。


 そして音の次に「逃げろ!!!…いつが!」とルベラが大きな声を発してそう言った。

 だがその先も何か言おうとしていたのだが、それよりも誰かが第三王子の部屋に入ってくる方が早かった。


 「…あなたが…敵…ですか」


 目の前にいたのは、王子が予想していた通りの人物だった。


 次話で暗殺者の正体が分かります。予想してみてくださいね。次回投稿は3月15日です。


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