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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
4章 ジークード王国

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2話 それぞれが思うこと

 私は王子から一五分だけ休憩を貰い、カシアと情報共有をしていた。

 カシアと私のどちらかは基本的に王子の護衛につかなければいけないため、二人っきりで話すということがここ数日出来ていなかったのだ。

 だから短い休憩時間だがカシアと話せることができて良かったと思っている。

 

 「王子の部屋に暗殺者が?」

 「うん。またー?って感じなんだけど…まぁカシアにも情報共有はしておこうと思って。それに犯人は第三王子の宮で働く侍女だったらしいしさー」

 

 ーーということで私は真っ先にこの前戦った暗殺者の話をした。

 

 「そうか…。だが本命はなかなかこないな…」


 カシアはため息をつきそう言った。いつもなら依頼に対し愚痴をこぼさないカシアなのだが珍しいこともあることだ。

 それだけ疲弊しているのだろうか。


 「そうだね。ま、お互い頑張ろ!それに暗殺者の足取りも追ってるんでしょ?そのうち見つかるって」

 「だな」


 そうカシアが言った時、扉の向こうから「ピス。そろそろ」とモリから声がかかった。

 どうやらお約束の一五分が経ったらしい。

  

 「んじゃカシア。護衛頑張ってー!」 

 「あぁ。ピズも」


 カシアに手を振った後、私は部屋を出て王子の部屋へと向かおうとした。


 (…ん?…カシアとモリさん何話してるんだろ)


 だが廊下を曲がるとき、カシアとモリが何かを話しているのが見えた。

 王子に関することだろうか。なら私がいた先程のタイミングで教えてくれればいいのにと思ったが、まぁ色々あるのだろう。とあまり気にせず私は前を向いた。


 :

 :


 「王子ー?あれ?どこか行くんですか?」

 「あぁ。最近部屋に籠りっぱなしだったしな。ピスのためにこの宮を案内しようかと。カシアにはこの前したしな。…アイトも一緒に行くか?」


 王子がそう問いかければ。嬉しいのか頬を赤らめ「王子がそう言うなら行きます」と言った。

 アイトの方が一つ上だが、こういうところは可愛いと王子は常に思う。

 

 (アイトは幼い時からずっと一緒だからな。…一番信頼できる)


 だからこそ裏切らないでくれと思う。

 

 (もう誰が味方で誰が敵すら分からない…。…この前暗殺者が来たときだって…)


 王子はその時のことを思い出し体を震わせる。

 犯人はこの宮で働く侍女だった。何度も顔を合わしているから知っていた。だからこそ殺意の目で向けられ恐ろしかったのだ。

 もう暗殺者はこの宮に入り込んできている。

 いつこの命の灯が消えるかすら分からない。


 (…だが…。本当に敵は私の命なのか?…もっと…もっと大きい何かを敵は狙っている気がする)


 だが確信はない。何となくそのような気がするだけだ。

 第一王子も第三王子を邪魔だとは思っているだろうが、誰かに勝つには自身の実力で勝たねば。と考える人だ。暗殺者を使って殺す人には思えない。


 (…だが…そうしたら誰なんだ?…何のために暗殺者を…)


 王子はそう思い扉をじっと見た。

 その様子をアイトは不思議そうに見ていた。


 * * * *


 ー第一王子の宮ー

 

 オレンジ色の長い髪を一つに束ね、スラリと長い足を組み、一人の男は優雅に茶を飲んでいた。

 そのすぐ傍に黒ずくめの老人は立ち男の話を聞いていた。



 「…ツァイト。また弟の宮に暗殺者が来たって本当か?」

 「えぇ。本当でございます」

 「そうか…また俺が仕掛けたって思われてるのだろうか」


 第一王子は紅茶の入ったティーカップを揺らし、揺れるオレンジ色の紅茶を見てそう呟く。 


 「おや?違うのですかな?」

 「違うわ!…はぁー。なんでどいつもこいつも俺が暗殺者を仕掛けたって思うんだよ。誰が弟を殺させるかっつーの」


 ガシャンと大きな音を立て、第一王子はテーブルにティーカップを置いた。

  

 「王子?口調が」

 「つたくこれくらい許してくれよー。昔俺の護衛騎士だったよしみでさー」


 頼む。という感じで第一王子は手のひらを合わせ、ツァイトに対しウィンクをした。

 だがツァイトは首を横に振った。


 「ダメです。そうでないと王位にはつけませんぞ?」

 「ちぇー。分かっよ…分かった。はぁー。でも、暗殺者は何が狙い何だろうな。もしかして俺…私の派閥の上位貴族が私のために弟を殺しにかかっているのか?」


 それしか考えられない。

 逆にそれ以外に何があるのだろうか。

 だがツァイトは首を横に振る。

 

 「それも可能性としてはあると思いますが、…私はこの国で保管されている神器が狙いだと思っています」

 「神器…それと何の関係‥‥あ」


 そこまで言って王子は気が付いた。

 神器が保管されている部屋は厳重に警備されており、何十個もの扉を通らねばならない。

 そしてその扉すべてに王族の生体認証が必要だ。

 

 「もしかしてそれが狙いなのか?」

 「おそらく。…もしかしたら利害関係の一致が起こり第三王子を瀕死の状態にして攫い、生体認証をクリアした後殺す手はずなのかもしれません」


 それなら納得がいく。

 だって生体認証なら第三王子だけ集中的に狙われずともいいはずだ。

 利害関係の一致で手を組む可能性は十分にある。というかありすぎる。


 「なら今すぐ保管室の警備を厳重に固めるべきでは…いや。あいつの保護が優先か?」


 王子は勢いよく立ち上がり、慌てふためいている。

 その様子を見てツァイトは顎に手を充てて悩んでいた。


 「…うーむ。ですが警備を増やすのは良いと思いますが、そもそも原因を突き止められていないのです。この仮説が正しいとも限りません。まだ動くには早いかと」

 「だが!弟に何かあったらどうするというのだ!!」


 母は違えど弟は弟。

 これで暗殺者に殺されでもしたら、正気を保てるか分からない。


 「王子。そのための護衛です。今新しく護衛についているのは、私と同じパーティーの者です。二人とも十分に強いので心配ないかと…」


 そうツァイトが言えば、王子は少しほっとした表情を見せた。


 「そうか…ツァイトが言うなら間違いないな!うむ。心配のしすぎだな!…いやだが…万が一ということも…」

 「王子…」


 一瞬元気になったかと思えば。またネガティブなことばかり考えジメジメ化している。

 この王子は見た目こそ明るいが、中身はナメクジのような人なのだ。

 心配事があればすぐにこうなる。

 表裏がなくどこか惹かれるリーダーシップを持つ人。なのになぜ世間から暴君やら性格に難があると言われているのかが分からない。


 まだまだ可愛い坊ちゃんなのに。そうツァイトは思った。


 * * * *


 ー第二王子の宮ー

 

 「ゴホッ…ゴホッツゴホッ…はぁー」


 第二王子はベッドから窓から見える景色を眺めため息をついた。

 何故この体はこんなにも弱いのか。

 同じ母から生まれたのに、兄である第一王子はあんなにも丈夫で元気だ。

 羨ましい。常々思う。

 

 母親は違えど、同じ父を持つ弟の第三王子も病弱ではなく元気だ。

 こちらに関しても羨ましいとは思うが、近頃暗殺者が多く来るらしいので逆に気の毒だと思っている。


 暗殺者を差し向けたのは第一王子だと耳にするが、実際どうなのかは分からない。

 何故なら第二王子の中にいる第一王子はいつも冷たい目を向けてきたからだ。

 

 だから冷たい人なのだろうと、ずっと思っている。


 まぁこっちとしては兄弟が殺されようと別に何とも思わないが、犯人は誰かなのかは少しだけ興味がある。

 

 (犯人は第三王子の側近のアイトとかいう少年か?それとも専属侍女?いや護衛も怪しい…)


 動けない分、こうやって何かを考えるのが好きなのだ。

 だが情報が少ない分、犯人特定までは出来ないが。



 「‥‥んー。あ。なぁそこの護衛…メルロだったか?第三王子の暗殺未遂についての情報何か知らぬか?」

 

 第二王子は部屋の隅に立っていた一人の少女に声を掛ける。

 するとどこからかでてきた水色の球体が、少女の代わりに話し始めた。


 『そうですね。私は第二王子の臨時の護衛なので詳しくは知りませんが…第三王子の側近が外の者と話しているのは見かけました』

 「側近となるとアイトか…」


 外の者というのは王宮の外の人間ということだろう。

 王子の宮には通常護衛と侍女くらいしか普段いないので外からの者は一目でわかる。


 『気になるなら、情報を集めましょうか?』

 「いや。調べて私まで狙われたくはないからな。病弱の王子は病弱の王子らしく、静かに過ごすとするよ。答えてくれてありがとう。メルロ」


 第二王子はそう言って、目を閉じた。


 第二王子は自分が一番可愛いのだ。

 自分の命は大切にしたい。

  

 * * * *


 ー第三王子の宮ー


 「なぁ。変なこと聞いていいか?」 

 「なんだよ」

 「‥‥お飴…王子の命を狙う暗殺者じゃないよな?」



 第三王子の部屋の外に待機している護衛のルベラは眉間に皺を寄せて、隣にいる護衛_ヒスイにそう聞いた。


 「…さすがに違うわ。…なんでそう思うんだよ」


 この前暗殺者が来た時、顔見知りの侍女が近づいてきたと思ったら睡眠薬で一瞬で眠らされ役に立たなかった男に何を言っているんだとヒスイは思った。

 暗殺者ならもう少しうまくやっているだろうに。


 「だよなー。いやさ、もう誰が暗殺者か分かんないじゃん?それに俺、臨時で護衛に入ってるピスとカシアって奴も怪しいと思うんだよな…」

 「あの二人が?ねぇだろさすがに」


 それに暗殺者だったとしたら、第三王子の殺人未遂で即処刑である。

 さすがにそれが分からない馬鹿ではないとヒスイは思っていた。


 「うーん。じゃあ誰だってならねぇ?」

 「いやいや。そもそも身近な人疑うなよ。俺これで第三王子の近くにいる誰かが暗殺者だったら、誰も信用できなくなるんだが?」

 「ハハッ。それもそうだな。だけどよー第三王子の宮まで来ることが出来んだぜ?手引きしてるやつがいてもおかしくはねぇだろ」

 

 確かに。と思いヒスイは考える。

 この前の暗殺者。雇い主は第一王子派だったと自白した。

 だがそれだけで他の暗殺者を手引きしたという話は聞かなかった。

 それを踏まえるとまだ手引きした者が残っていてもおかしくはないのだ。


 「はぁー。考えたくねぇよ。まぁ俺は護衛をするのは変わりねぇからいいけどよ」


 そう言ってヒスイは自身の剣にさわる。

 己は誓ったのだ。「あなたの剣でいる」と。だから裏切る真似は絶対にしない。


 逆に話題を振ってきたルベラが暗殺者なんじゃないかと思いったが、証拠がないためどうせ捕まえられない。

 お願いだから暗殺者ではないように。とそっと信じてもいない神に祈った。

 



 

 一応他の王子にも危険が及ぶかもという形で第一王子・第二王子にも夜鳩の護衛がつけられています。

 第五パーティーはたまたま任務が無く駆り出された形で、他のパーティーからも護衛はいます。

 

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