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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
4章 ジークード王国

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1話 護衛依頼


 ーーアザーが暴走した出来事から、三か月が経過した。


 第五パーティーの中では一番重症だったピスも一か月半後には怪我はほぼ完治し、そのまた一か月後には依頼へ行く許可が下りた。


 そして依頼を解決し、食べて寝て、また依頼を解決し…を繰り替えし忙しい日々を送っていた。


 そんなピスの元へ一人の男が依頼書を持ってやってきていた。




 「護衛の依頼?」


 私は聞き間違いかと思い聞き返すが、カシアは「護衛の依頼だ」ともう一度言ってきた。

 どうやら聞き間違いではないらしい。


 「ふーん。…でもなんで?夜鳩ってフィディス以外の依頼って受け付けてたの?」

 

 最初の説明の時フィディスを回収する組織と説明された気がするので、私は疑問に思う。

 それとも特別な事情とやらがあるのだろうか。


 「いや。最近は主にフィディスだけだったんだが…。それにまったく関係ないというわけでもない。ピスはジークードという国を知っているか?」


 「ジークード」私は言葉を繰り替えし考える。

 

 (確か…夜鳩を作った国だった…ような?)


 夜鳩を作った国がそんな名前だったような気がした。

 合っているかは分からないが。


 「えっと…夜鳩を作った国?」

 「そうだ。今回はその国の王家からの依頼だ」


 そう言ってカシアは二枚の紙を渡してきた。

 一つは依頼書だ。

 紙には「先日第三王子の元に暗殺者が来た。その時に戦っていた護衛の首元のフィディスを感知するネックレスが光った。暗殺者は二人いて、一人は仕留めたがもう一人は仕留めそこなった。また来るかもしれない。フィディスを取り込んだ状態で次ぎ来たら王子の命にも関わる。数名人員をよこせ」的なことが書かれている。

 もう一つの紙には第三王子の情報が書かれていた。

 右上に王子の写真が貼られている。黒と青が混ざったような髪色に長いまつげ。

 瞳は黒色。少し気弱そうな印象の王子だ。

 その横には王子の性格、日々のルーティーン。…色々と書かれていた。


 「…だいたいは読んだけど…。ねぇ暗殺者ってこんなホイホイ来るものなの?」


 第三王子の情報が書かれた紙には「先月の暗殺者は一〇人以上。毒も何度か盛られている」とも書かれていた。

 一か月の間にこんにも命の危険に晒されるものなのだろうか。


 「…」


 するとカシアは少し悩んだ後、私の耳もとで囁いた。


 「あまり大きな声では言えないんだが…ジークード国は王位継承権争いの真っ最中なんだ。この国には三人の王子がいるんだが、第二王子は病弱で今まで第一王子が優勢だった。だが近頃第三王子が勢いを増してきている。第一王子とは六つ年が離れていたからな。今まで注目されていなかったんだが…」

 「だけど、第三王子がとっても優秀で第一王子がやばいから暗殺者を第三王子の元へ送り込んで亡き者にしようとしてる人が多いってこと?」


 私がそう問えばカシアは頷いた。


 「第一王子はその…優秀は優秀なんだがかなり性格に難があってな…。だが第三王子はかなりの人格者。まぁ王子の中で第三王子だけ側室の子供で側室の実家の地位が低い…次期国王にふさわしくないとは言われるが…とやかく言われるのはそれくらいだ。側室は現国王の寵愛を貰っているし、次の国王は第三王子で決まりだと言われているのが第一王子としては許せないんだ」


 まぁ確かに今まで自分が一位だったのに、それが異母弟に抜かれているとなれば…うん。

 

 (それに第一王子は性格に難があるって言うし…暗殺者を送り込む可能性はかなり高いんだろうなぁ)


 つい最近(最近ではないが)アザーとその兄。の兄弟仲を見たばかりなので兄弟とは仲が良いモノなんだなと思い込んでいたが、そうでもないらしい。

 世の中は知らないことばかりだ。私はそう思った。


 * * * *


 そしてその話から二日が経った頃。 

 私たちは第三王子の元へと来ていた。

 


 「…お初にお目にかかります。夜鳩。第五パーティー所属のカシアと申します」

 「同じくピスです」


 カシアと共に私は頭を下げる。


 「あ。…えっと…こ、こんにちは」


 第三王子はそう言って右手をカシアに差し出す。そしてカシアは頭を下げながら王子と握手をする。

 そして終わったかと思えば王子は私の元にも来て手を差し出してきた。

 私もカシア同様頭を上げずに握手を済ませる。

 そして握手をし終えたら顔を上げた。


 (うぅ。礼儀って難しい…)


 これらも全部カシアに仕込まれたのだ。

 国ごとに礼儀は全くと言っていいほど違うが、だからと言って王族に対して礼をかいていい理由にはならない。

 そのためジークード国の礼儀作法の基礎中の基礎を叩き込まれたのだ。

 さすがにテーブルマナーは教わらなかった。恐らく一緒に食べることはないと言われたからだ。


 「ではその…カシア。ピス。これからよろしく」


 第三王子は下を俯きながらそう言った。


 「「はい」」


 まぁそんなこんなで第三王子の護衛の仕事が始まったわけだが。


 ;

 ;


 「…!王子!」

 「王子!」

 「お、王子ー!」


 物凄く大変だった。

 初日で暗殺者が三名夜中に襲って来るわ、次の日には虫の死骸が王子の部屋にバラまかれているわ、その次の日には食事に毒が仕込まれているわ…だった。


 (なんか嫌がらせも混じってたけど…)


 まぁそれは一旦置いておく。

 それよりも第三王子の命を狙う人が多くて困る。

  

 だが逆に王子は慣れているのか、暗殺や毒が混じっているたびに「またか」というだけだ。

 私はある意味王子を尊敬していた。


 基本的に第三王子の部屋にいるのは侍女と護衛が一人ずつ。そして扉の外にも護衛が二人。という状況だ。

 元の護衛は扉の外に折り、中にいるのが今回派遣された私かカシアだ。一応交代制なので日中は私。夜間はカシアという感じになっている。もちろん逆の日もあるが。


 だが護衛を始めてから数日が経ったが未だにフィディスを所有している暗殺者には出会わなかった。

 まあ一度失敗している手前すぐに来るとは考えずらいが。


 「…なぁピス」

 「はい。どうしましたか王子?」


 考え事をしていれば王子に呼ばれた。

 初日は全くと言っていいほど話さなかったが、暗殺者を追い返したりしているうちに何かが芽生えたのか少しだけ仲良くなっていた。


 「私は王の座を狙っているように見えるか?」

 

 物凄く答えずらい質問を投げかけられた。

 これはどう答えればいいのだろう。

 少しばかり悩んでいると王子は私の返事を待たずに話し始めた。


 「私は…別に王の座など興味ないのだ。ただ…ただひっそりと…静かに暮らしたいだけなのだ…」


 そう言って王子は窓の外の景色を見る。

 だがそれは叶わぬ夢なのかもしれない。王族として生まれたからには。


 (それに第三王子の母君は野心家ってカシアが言ってた…王子が王位を望んでなくても、母親が息子を王子にしようと奮闘してるって…)


 まだ護衛を始めて少ししか経っていないが一度も第三王子と、その母親が出会うところを見なかった。

 王族はそう言うものかもしれないが、王子から母親の話が出たことすらない。


 「…すまない。こんな話をさせてしまって。…あ。そう言えば。モリ…アイトはどこにいる?」


 そう王子は言った。

 モリとはこの部屋にいる王子の専属侍女のことだ。

 三〇代後半でやや目つきが怖い人間の女性である。私も護衛しているときに何度か睨まれたような気がした。多分気のせいだと思うのだが。

 

 「アイトは、王子に頼まれた本を図書館へ取りに行っています」

 「あぁ。そう言えば頼んでいたな」

 「何か用がありましたら私が代わりに…」

 「いや。いい。…」


 王子は首を横に振り、机に置かれていた本をとって読み始めた。

 アイトとは王子の従者である。

 王子より一つ上の一三歳で乳兄弟…とのことだ。

 とてもしっかりしていて、何というか…何でもできるスーパー従者という感じだ。

 気遣いもで顔も整っているためモテる男とはこのようなこのことを言うのだろうな。と思いつつ毎回見ている。


 コンコン


 そんな時部屋にノックが響く。

 だが何故だろう。名乗りもしない。


 「…。王子。モリさん下がってください」


 暗殺者の可能性を考えつつ私はそっとドアの傍に立つ。 

 だが外の護衛が何も言わないことから暗殺者でゃないのだろうか。


 「誰?用件は?」

 「…侍女です。お食事を届けに来ただけですが」

 「そう。なら護衛に渡して。そうしたらもう戻ってくれて構わない」

 「そんなわけには…」


 そう扉の向こうの侍女(仮)が言ったと思ったら勢いよくドアが開く。

 

 「…!」


 私は急ぎ王子の目の前に立ち精霊術の風で弾丸を作る。

 侍女…否。暗殺者は短剣を持ち、王子へ向かって投げる。

 だが弾丸が短剣の威力を落とし地面へ落ちる。


 「モリさん!王子を頼みます!部屋の端にいてください!」

 「は、はい!王子。こちらへ」

 「…っ!あ、あぁ」


 王子とモリは部屋の端で丸くなっている。

 王子を守るためか、王子に覆いかぶさるようにモリはしていた。


 (よし。あの二人は大丈夫。それにしても…この暗殺者…手慣れてる!)


 私は部屋に会った花瓶を手に取り、風で花瓶に回転を掛け暗殺者へと投げつける。

 暗殺者もそれを食らわんと、棚を横に倒し盾にする。


 そして私からの攻撃をかわしつつ、王子へと近づいていき剣を振るう。


 だがそれよりも前に、暗殺者の手を引っ張り王子のいる反対側へと投げ風の刃で斬りつける。

 暗殺者は血だらけになったが、王子を殺すまで死ねないと言わんばかりに、手持ちの剣を全て王子とモリへと投げる。


 私は暗殺者を風で拘束した後、結界を急ぎ作り二人と剣の間に貼る。

 間に合ったようで、剣は結界に弾かれ地面へと落ちて行った。

 

 (うぐ…めっちゃ体中痛いけど…今回は一部分しか結界張って無いしセーフかな。それよりも…)


 王子は大丈夫かと思い近寄る。


 「大丈夫でしたか?王子…」

 「…」


 王子と視線を合わせるように、私はしゃがむが王子の様子がおかしかった。

 いつもなら「大丈夫だ」と言って済ますのに、今回はブルブルと手足を震わせていた。

 顔も心なしか青白い。


 「王子?…モリさん…王子は…」


 私は心配になり近くにいたモリを見る。

 モリはいつものように無表情で「暗殺者が怖かったのでしょう」と言った。

 

 (うーん。だけどいつもより少し強い暗殺者だったってだけで、他は変わんないように感じたんだけどなぁ)


 そんなことも無かったのだろうか。と思い私は立ち上がる。

 とりあえず王子はモリに任せて私は部屋を片付けなければならない。

 そんなの他の侍女に頼めばいいじゃないかと思うが、もし王子を殺す目的の侍女が紛れ込んでいたら毒針を仕込まれるかもしれない。

 なら王子の身近にいる者がやった方が安全なのだ。


 (これカシアにも話しないとな…はぁーただの暗殺者でこれって…フィディスを持っている暗殺者と私やりあえるかな…)


 少し不安になるピスなのであった。

 ジークードの国は王家の人間一人につき二人の夜鳩の護衛が付きます。

 一応選抜はされて、表舞台に立てない理由がある者は選ばれません。ですが認識阻害のバッジは変わらずつけているので、王家の人もバッジをつけて護衛の顔を認識しています。

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