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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
3章

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8話 針は動く。少しずつ。

 

 「んじゃ!また!またな!兄貴!」

 「おー。またどっかでな」

 

 アザーはブンブンと手をチスに振っている。

 それを見てチスも手を振り返していた。

 

 本当はもっと一緒にいたいだろうが、こっちは夜鳩。表舞台には立てぬもの。

 ずっと一緒にいるわけにはいかない。

 アザーが夜鳩を抜けてチスと暮らすという手もあるが、「一緒には暮らさない」とアザーが言っていた。

 理由を聞けば「今の兄貴の居場所はあの人たちの所みたいだから…」と言っていた。

 だがアザーの表情は、言葉とは裏腹に嬉しそうに笑っていた。

 

 (きっとお兄さんの居場所があって嬉しいんだろうな…アザーにも居場所があるように)


 それとチスの記憶は消さなくていいとツァイトから許可を貰ったからだろう。

 別にこっちの素性を明かしているわけでもないし、認識阻害バッジは今日も元気に作動しているので問題とのことだ。

 アザーは暴走中に取れたのか、なんなのか無くなっていたらしいが。



 ーーーま。そういうわけで、一応アザーの暴走騒動は一応幕を閉じた。


 : 

 :


 「つ、疲れたー」


 私はそう言って馬車に乗る。


 街の様子は比較的元気だったツァイトとアザーが馬車に乗る前に見に行ってくれた。

 数名重症者がいたらしいが、ジンとチアの者のおかげなのか一命はとりとめたらしい。

 他に行方不明者が出ていないか、瓦礫の下敷きになっているものはいないかで色々あったらしいが、とりあえず死者はいないということなので良かったと思う。

 

 (みんなで力を合わせた結果だねぇ…疲れたけど。でもまぁ剣は抜けたしいっか!)


 帰りの馬車で夜鳩の医療チーム(出張版)が来てくれたおかげでお腹にずっと刺さっていたサーベルを抜くことができたのだ。

 結果的にお腹を縫う羽目になったので、痛いのは変わらないのだが。


 「そうじゃな。わしも疲れた。馬車に揺られている間に寝てしまいのうじゃのぉ:

 「はは分かる…。…ってあれ?カシアは?」


 カシアを乗せないまま馬車がゆっくりと動き出した。

 てっきりカシア待ちをしていたのだと思い私は驚く。このままカシアを置いて行ってしまっていいのだろうか。


 「あー。カシアな。まだここへ来た用事が済んでないから、済ませてから帰るんだってさ。多分明日には帰ってくると思うぜ?」

 

 用事。そう言えば私も用事があって、この街へ来たが済ませずに帰ろうとしている。

 だが今から調べる気力も無いので、用事はまた今度となりそうだ。


 (もう…眠いし…)


 このまま寝るか。そう思ったが、気になることを一つ思い出した。


 「ねぇ。そう言えばさ、アザーが暴走した理由って何だったの?」

  

 これである。ジンに手当てしているとき、ツァイトとカシアがこのことを話題にしていたが、全てはその場で話さなかったので気になっていた。

 

 「それなー。俺も兄貴から聞いた話なんだが、俺の中に神器が入ってて、それが俺の力を制御してたらしいんだ。だからそれが盗られて、無くなったから暴走した…って感じらしい」

 

 そう言うとアザーは私達から視線を逸らした。

 それにしても神器。名前からしてすごそうなものだが、そう言う物は普通フィディスのように力を倍増させるものではないのだろうか。

 

 「…そうじゃのぉ…神器…今回アザーの中に入っていたものは力をコントロールする神器だったからアザーの力は制御されてたんじゃろうな。他にも二つ神器はあって、一つは魂を操るモノ。もう一つは記憶に関する神器…と言われておる」


 ツァイトはそう言って補足をしてくれた。

 どうやら神器によって役割は違うらしい。


 「そうなんだ…。でも神器の効果って本当にあるんだよね?なんか神って聞くとおとぎっていうか、本当に実在したのかなって?偽物とかそう言うのじゃないのかなって思って…」

 「うーむ。それは分からんが、効果はあると思うぞ?じゃが人には扱えない代物と言って使うことは禁じれれておるからの。実際に使う物はあまりいないじゃろうが」


 そう言ってツァイトはアザーを見る。

 その視線に気づいてか、アザーが「なんだよ」と言ってツァイトを見た。


 「いや…アザーの紙器が盗られた今。代替品を急いで用意せねばなと思っての」

 「あー。…ってかさその心配はないと思う。俺当分は謹慎だろうし、外出れねぇからさ。依頼も行けねぇし。だからその間に俺が見つけるよ。ケルディットの奴らに相談すればいいものが見つかるかもだし」

 

 アザーはそう言って自身の手を見つめた。


 (そっか。さすがに罰が下るのか…)


 一般人を巻き込んでの暴走。上に報告するにしても、アザーが暴走したという事実は消せない。


 「…そうか。じゃあ謹慎中なら、フードの二人組についても調べてもらいたいのぉ」

 「はは分かったよ。…でもそうだよな…神器が盗まれたんだもんな。早急に見つけねぇと」

 「神器が盗まれたんだもんね…でもそれを使ってその人たちは何するんだろう」


 私は二人に問う。

 素朴な疑問である。力をコントロールするだけなら、そこまで脅威ではないと思う。

 ーーがそういうわけでもないのかもしれない。

 

 「ーーそうだな…もしかしたら…世界征服でも考えてんのかもな」

 「ーーどういうこと?」


 何故そこへ世界征服に繋がるのか理解できない。

 私は眉を顰め二人の顔を交互に見る。


 「…ピス。あの神器はの、フィディスとセットで使うと、ものすごい危険なものになるんじゃよ」

 

 そう言ってツァイトは馬車から見える夜空を見た。

 

 * * * *

 

 ーージュラシュッドーー最深部ーー


 俺は本来のも苦役を達成すくジュクジュラシュッ最深部まで来ていた。

 アザーが天井をぶち破って地上に出てきたおかげか大きな穴が開いているので、そこから落ちるだけで行に進んだ場所まで行けるので楽だった。

 おかげで最深部に車で一時間もかからなかった。


 「…ここか…最深部」


 目の前には八メートルは超える、大きな赤い扉…があったが、何故か扉の真ん中に成人男性一人が入れるような穴が開いていたためわざわざ扉を開けなくても中に入ることができた。


 俺は「よいしょ」と言いながら穴を通り抜け、中に入る。

 するとそこには‥‥


 「何もない…な」


 何も無かった。

 ランタンで明かりを照らすが、あるのはゴミのみ。

 一二畳ほどの部屋に古びて穴が開いている薄汚れたタオルや、何かの食べかす。

 それらがあるだけで、他は何もない。


 これでは収穫ナシか、そう思った時、下でクシャリと音がした。

 何だと思い下を見れば神が一枚落ちていた。

 

 「…ん?なんだ?…これ…」


 俺は地面に落ちていた一枚の紙を拾い上げる。

 紙には何か書いてあり、文字がぎっしりと敷き詰められていた。

 所々汚れているが読めなくはない。


 何か情報があるかもと思い俺は読み進めていく。

 

 「死んだ際に散らばった魂を元の形に修復させる…?一つに戻す計画…」


 何だこれ。と思った。

 魂に関連した実験は確か禁忌扱い。

 法律でも違反されていたはずだ。


 (…だがこれがここにあるってことは…)


 もしかしたらピスの記憶喪失はこれに関係しているかもしれない。

 今まで精霊種ではなかったのに急に精霊種の力が使えるようになったことも、全て繋がっている。


 「だが…これだけでは情報が足りないな…」


 他にも欲しいところだが、ピスを誘拐した者達の足取りを掴めていないのでは無理だろう。


 「……はぁー。最近不吉なことが多すぎる。…何かの予兆でないといいが…」


 ピスにはただ太陽の下で笑ってほしい。

 それは今世の俺の唯一の願いだ。


 * * * *

 

 「ねぇ。リンさん。なんだかマチス嬉しそうだね」

 

 私はダージリンと手を繋ぎながらそう言った。

 あのクレマチスの弟やらにあったからなのか、ずっとクレマチスの機嫌がいい。

 

 「…」


 だがダージリンはどこか宙を見つめたまま返事が来なかった。

 私は心配になり、ダージリンの服の裾を引っ張る。

 

 「リンさん?ねぇリンさ…」

 「あ。あぁ…ごめんなさい。何?」


 何度か声を掛ければ、ダージリンはハッとして私を見た。


 だが、ダージリンはどこか浮かない表情をしていた。


 (どうしたんだろう…リンさん…)


 昼間、余計なことを考えたからか、私は手に汗をかく。

 心なしか、心臓もバクバクとうるさい気がする。


 (大丈夫だよ。リンさんは私を想ってる。表情は呪いのせい呪いのせい)

 

 だが心のどこかで、ダージリンは私のことを何とも思ってなくて、捨ててしまうのではないかと思う。

 情が無ければ、ダージリンはきっと私を捨てる。

 だから情があって育ててくれている今は、ダージリンは私のことを少しでも想っているということに…違いないはずなのだ。


 (…でも…でも…捨てられたらランドルのお城へ帰れって言われたらどうしよう)


 あの場所に私の居場所はない。

 私の居場所はダージリンとクレマチスの傍。陽虎なんだ。そう思って私はダージリンの服を握る力を強くした。


 

 ーーきっと大丈夫。


 ーー三つ編みが二つのうちはきっとダージリンは傍にいてくれる。


 ーーまだ一人前じゃない私の傍に。



 * * *


 ーー? ?


 「神器は手に入った。残りはもう一つ」

 「そうだな。フィディスを多めに散らばせといたほうがいいだろう。夜鳩の組織がこちらの目的に気づき阻止する方が面倒くさそうだ」

 「そうだな。さて…そう言えばあいつは?あいつからの情報はどうなっている?」 

 「あぁ。あの送り込んだあいつのことか。…特に変わったことはない。だが姫に会ったと言っていた」

 「姫に…そうか。…では今度捕らえるのは楽そうだな」

 「そうだな。…我らの計画は…絶対に成功するだろう」



 今回ラチャはいなかったので、記憶消さないの?と思う方もいるでしょうが、ラチャと同じ種類の魔物が夜鳩には何体かいて、帰りの馬車でやってきてしっかり街の人の記憶を消していました。(証拠隠滅ともいう)


 短いですが、3章はこれで終わりになります。

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