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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
3章

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2話 実は精霊種ではない!??

2026,3,7 誤字修正


 「そう言えば知ってるか?ランル王国の消えた姫の話…。まだ見つかってないらしいぜ?」

 「へー。…あれ?でもあの国に姫なんていたか?王子の話しか聞かねぇけど…」

 「それがさー、いたらしいんだよ。まぁ最近になって国民には公表された話だからな……」

 「そっかー。ま、見つかるといいわな。最近物騒だし」

 「だなー姫も死んでなきゃいいだろうけど」

 「ははーだなぁ」


 男たちはそう言って笑い声をあげる。


 (消えた姫…誘拐か?)


 俺はカシアを待っている間に聞こえてきた話し声を静かに聞いていた。

 人の話に聞き耳を立てるのはダメだと誰かから言われた気がするが、まぁ暇だったのだから許してほしい。

 そう思っていると待っていた人物が紙袋を抱えてやってくる。


 「あ。アザー。待たせたな。こっちは買い物終わった。そっちは?」

 「ん。こっちもだ。じゃー行こうかねぇ…」


 俺はそう言って話し声とは正反対の方向へカシアと共に歩き出す。

 心の片隅で姫が見つかるようにと思いながら。


 :

 :


 「わー暗ー」


 遺跡へと潜り、どんどん奥へ入っていくにつれ視界が暗くなる。

 すると気の利く後輩は買ってきたランプに明かりをつけ、辺りを照らしてくれた。

 火も使わずに明かりがつくとは…人間の発明品は不思議なものである。


 「あんがとー。…だがしっかし入り組んでんなー。魔物でもいるのか?」

 「…前に来た時もかなり迷った。遺跡に住み着く魔物のせいで遺跡内の形が変わるんだ、だから地図を書いても意味がない」


 だから六時間もかかるとカシアが言ったのかと妙に納得をしながら進んでいく。


 (だが一般人が攻略に六時間もかかる遺を普通拠点にすんのか?簡単には入れねぇから防犯の面ではいいだろうが色々と不便そうだぜ…)


 食料だってすぐには手に入らない。

 もしかしたら遺跡に住み着く魔物を従えてて自分たちは楽々と最深部へ入れるようになっていたのだろうか。


 「んーなぁカシア。この魔物達を従えて、最深部まで案内させることはできないのか?」


 俺は壁に張り付く魔物を見る。

 戦う意思が無いのか襲ってはこない。

 この魔物はカタツムリのような形をして、ゆっくりとどこかへ進んでいくだけだ。


 「…それは難しいだろう。ここに生息する魔物は俺も見たことがない。それにまだ詳しくこの遺跡の調査が出来ていないんだ…」


 申し訳なさそうにカシアは言った。


 (まぁそうだろうな)


 俺はそう思い「別にお前がそんな顔する必要ねぇだろ」とカシアに対して言う。

 カシアは夜鳩の通常業務に加え、独自で調査をしていたのだ。

 すべて調べていた方が怖い。

 それにピスの見舞いも毎日欠かさず行っていた。カシアの体が壊れないかの方が心配であった。


 (んーでも…ん?)


 俺は後ろを振り向く。


 「…」

 「…どうじたんだ?アザー?」

 「…いや…?」


 何か音がしたような気がしたのだが、気のせいだったようだ。

 俺は首を傾げ、再び歩き出した。


 

 * * * *


 「マチスー。リンさん帰ってこないよ?何してるの?」


 私はクレマチスに買ってもらったクレープを頬張りながら尋ねる。

 

 「ん-ちょっと野暮用だよ。ラチアは気にしなくていい」


 クレマチスはそう言って私の頬を指で触る。

 何かと思えば、クレマチスは指先についたクリームをなめていた。

 どうやら私の頬にクリームが付いていたらしい。

 欲張ってクリームマシマシイチゴクレープにしたからだろうか。


 「そ」


 私はそう言って再びクレープを食べ進める。


 「…」


 クレマチスとダージリンはいつもそうだ。

 私に隠し事をする。

 フィディスを盗み出すときなど、二人の力が無いとできないようなことには私を連れて行ってくれるが単独でも済む用事の時には絶対連れて行ってはくれない。

 きっと盗み出すときに私を連れて行くのはアジトに一人残すのが不安だからだろう。

 

 (…私も…二人の助けになりたいのに…)


 だが弱い人間の私にはそれは不可能なのだろう。

 私は二人に比べ力が無いし病弱だ。幼いころに比べ幾分マシにはなったが、今でも長時間外で走り回ることはできない。

 熱だってしょっちゅう出す。


 でもそんな私でも何かできることがあるのではないかと思い、前に二人に対して「何か私にできることないの?」と問うたことがある。

 だがクレマチスは困った顔をして「そうだなー。元気でいてくれることだけだよ」と言った。

 ダージリンは無表情で「…ない…」というだけ。

 理由を聞けばマクレマチスは優しい声で「お前さんが元気でいてくれるだけで、嬉しいから…それはラチアにしかできないことだろ」と教えてくれたが。ダージリンは「ないものはない」と言うだけだった。


 「…」


 私は二つの三つ編みを触る。

 ダージリンは一つの三つ編み。

 私はまだ未熟者だからと二つにしてもらっている。


 (リンさんは…優しい。こうやって髪の毛を結ってくれたり…私のことを気に掛けてくれてる…)


 だけどたまに…たまに…たまにその優しさが本当なのかと思うときがある。


 表情のせいで。


 精霊種は呪いのせいで表情を表に出すことができない。それゆえに何を考えているのか全く分からない。


 (いや。ううん私。何考えてるの!リンさんは優しいじゃん!)


 私は首を横に振る。

 きっとお気のせいだ。

 知らないことがあって悔しくて。そう思っているだけだ。


 (だってリンさんは恩人だもん…)


 * * * *


 話をするなら座っての方がいいということで、研究施設(ケルディット)の空き部屋で私たちは話をしていた。

 長方形の机に向かい合って座る。個室で、入り口に近い席なのが研究施設(ケルディット)の職員たち。

 そして向かい合って座るのが私のツァイトだ。

 目の前には紅茶があり、机の中心に菓子がある。お茶と菓子の名称は分からないがお茶は夕焼けのような赤色でお菓子はマドレーヌに近い…なにかだ。

 お茶からは薔薇の匂いがして、とても落ち着く。

 お茶を入れてくれたカルメには感謝だ。用意された茶菓子にとても合った。


 :

 :

 

 「えーじゃぁ呪いが無い原因分かんないの!?」


 私は驚きのあまり、座っていた椅子から立ち上がる。

 横から「残念でしたー」とフェナが茶化してくるのがやイラつくが相手にしてると、私のメンタルがやられるだけだとツァイトからアドバイスをもらったので無視することにした。


 「俺もこの症状は初めて見た…んーあ。…なぁ。ホアンは今日出勤だったか?」


 カルセドが皆に問いかける。 

 するとフェナが「確か出勤だったわよ」とお菓子を食べながら答える。

 ホアン…新しい名前に私は首を傾げた。

 するとツァイトがこっそり私に耳打ちして教えてくれた。


 「ホアンは呪いの研究の責任者じゃ。精霊種でもある」


 責任者一番偉い人ということだろうか。

 それに精霊種とは…。


 「うーん。でも今いないよな…電話かけてみるか」


 カルセドがそう言ってスマホを取り出す。

 スマホケースに剣を持ったキャラクターがいた。かわいい。


 カルセドが電話をかけ二コールした後「はい」という声がした。


 「あーホアン?今日出勤?え…え?近くにいる?前をみろ…?」


 カルセドはそう言って前を見る。すると何かに気づいたように「あ」と声を上げた。

 それにつられ私もカルセドの視線を辿る。

 そうすれば一人の女性が、スマホを耳にあて近づいてきていた。


 (あの淡い水色の髪の人かな?)


 クールで美人という感じがする。

 身長も高く、スラリと長い脚が映える。


 「何か用?」

 「ホアン…この人…ピスが最近精霊種って分かったんですけど、呪い無いんです。ホアンなら原因分かるかなって‥‥」


 セレストがそう説明する。

 カルセドが説明したかったのかやや恨めしそうにセレストを見るが、その視線にセレストは気づかない。

 カルメがカルセドを抑えているため喧嘩にはなっていない。


 「ふーむ」


 状況を理解したホアンが、私に顔を近づけてきた。


 (う…無表情だとなんか怖い!)


 そして十秒ほど見つめられるとホアンは私から顔を離した。


 「…」


 やや神妙そうな顔をしている。何か分かったのだろうか。

 私は唾を飲み込み、丸丸の話を待つ。そして○丸が口を開き放った言葉は


 「お前…精霊種か?…人間に近い気配がする」


 という言葉だった。


 「え?」


 私は情報が飲み込めず、そう言葉を零す。

 精霊種ではないという疑問を持ったことが無かったからだ。

 

 (精霊種じゃない?…じゃあ何?)


 周りの面々も理解できなかったのか、ホアンに質問していた。


 「なぁ。どういうことだ?検査では精霊種の判定が出ている。精霊種じゃないってことあるのか?」

 「人間に近い気配って?」

 「ねぇねぇ。精霊種と人間のハーフってことないの?」


 研究魂がうずいているのか、カルセドを始め、セレスト、フェナも質問している。

 ツァイトも質問はしていないが、とても不思議そうな顔をしていた。


 「ちょっと待って。順を追って説明する。…この子の精霊種としての精霊の気配が弱いの。どんなに弱い精霊種でも、もっと精霊の気配が濃い。…それにこの子には人間みたいな感じがする、…まぁ消去法だから人間の気配ってわけでもないけど…」


 つまり竜種や天種。魔法使いとかの気配がしないから、消去法で人間の気配がすると言いたいのだろう。

 私にはよく分からないが、魔法使いには魔力の気配が、天種には闘気の気配が竜種には、竜の気配がするらしい。そして精霊種には精霊の気配が。


 (なら…私は人間?でも精霊術が使えてるから精霊種ではあるんだろうけど…)


 「…」


 このことについてカシアは知っているのだろうか。

 そもそも前の私は精霊種を隠していたのだろうか。それとも精霊種ということを知らなかったのだろうか。


 (初めて精霊術を使った時「新しいマスター」ってラピスラズリが言ってたのも気になる…)


 もしかしなくても私が攫われたことと関係しているのだろうか。

 攫われた場所で何かされたのか…。


 (ラピスラズリに聞いてもいいけど…現場に行った方がいいかも)


 今日は依頼でかカシアは夜鳩の管理棟にはいない。

 私の誘拐事件について詳しく調べているのはカシアだとアザーが言っていた。

 カシアは私がその事件に関わることを嫌がり、それとなく遠ざけられ情報を得る機会が私にはなかった。

 だけど今日ならその情報を得られるかもしれない。


 (せめて私が攫われてた場所でもわかれば…)


 何か私について知れるかもしれない。

 私はそう思い手を握りしめた。

 

 

 ケルディットの愉快な仲間たちpart2


 カルセド_人間_一五歳

 くすんだ金髪で茶色い瞳。親が夜鳩職員で殉職している。

 強い・カッコイイものが大好きで、よく強そうな人に会っては「俺はいつかお前を倒す男」と言っている。

 はっきりとモノを言う性格で、曲がったことは大嫌い。


 カルメ・ロイン_魔法使い_一六〇歳

 灰色の髪色で、赤茶色の瞳。フードをいつも被っている。長身。

 カルセドの両親と仲が良かったためカルセドのことは幼少期から知っている。

 物腰が柔らかで、おっとりとしている。誰かを世話するのが好き。


 ホアン_精霊種_九○○歳

 淡い水色の髪色で青い瞳。

 服に無頓着のため、いつも同じ服。

 神出鬼没で、遅刻魔。集中力が化け物らしく、一度集中させると食事を取らないこともしばしば。

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