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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
1章 始まりの旅

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3話 移動は楽‥?

誤字修正2026,1,24

 『第五パーティー緊急要請。北の地ビアンの地にて陽虎が出現。直ちに向かってください。繰り返します。第五パーティ‥』


 アラーム音と共に、女性の声が聞こえてくる。

 陽虎(ようこ)‥確かフィディスを研究施設から盗む人たちの組織の名前がそんな感じだったよーな?

 

 (…でいいんだよね‥?あれ?…いや違う言葉だったかも?)

 

 考えているうちに混乱してきてしまった。三人に詳しい説明を聞こう。そう思った時、部屋の扉が勢いよく開いた。

 音のした方を見れば、カシアが息を荒くし立っていた。

 髪の毛も汗で湿っている。少し肌寒いとすら思ったのに汗をかくとは‥どこから走って来たのだろうか。


 「‥っすまない!遅くなった!‥緊急要請だ‥がっ‥はぁっはぁっ。爺は起きてるか?」

 『いや。起きてないよ。さっきもイビキかいて寝てたし。ねメルロ?』

 

 メルロも首を縦に振る。

 アザーも言っていた辺り本当に寝ているのだろう。

 だがこの煩いほどに鳴っているアラーム音を聞けば起きる気もするが。


 「まぁ後で起こしに行けばいいか‥。でだが。配置を決めなければ。依頼の方と陽虎。誰がどちらかに行くかだが・・俺とアザー。爺さんで陽虎。残りは依頼でどうだ?」


 カシアは手を顎に置き、数秒思案したあとそう言った。

 それですぐに決定かと思ったが反論の声が上がる。


 『さすがに初依頼で記憶喪失のピスもいる中、依頼が三人だけってのも少なくない?そりゃ陽虎の方が危険かもしれないけど依頼だって安心安全とは限らないよ?この前なんか他のパーティーで死者が出たんだから』


 確かに。私も初の依頼が少人数なのは不安だ。それに自分の力も依頼内容もよく分かっていない。

 それに死ぬかもしれないという初依頼で人数が少ないのは嫌である。怖いし。


 (それに…人数が少なくなると独りぼっちになる確率が上がるから余計に…怖い‥)


 私は気が付かぬうちに少しだけ手が震える。

 その震えに気が付いたアザーが声を上げた。


 「あーそうだな。カシアが依頼の方行ったらどうだ?爺さんと俺いれば一応戦闘面ではどうにかなるぜ?」

 「‥だがお前力を使いすぎると‥‥その‥」

 

 カシアは気まずそうにアザーから視線を逸らす。

 きっと呪いのことを言っているのだろう。種族特有の力を使いすぎれば自我が消えてしまう天種の呪い。


 「だけどそれはお前も一緒だろ?ここは俺に任せてくれよ後輩‥!」

 「…だが‥!」


 アザーが明かる気にカシアにそう言うが納得がいってない様子だった。

 カシアがアザーに対し何か意見を言おうとしたとき私の後方から声がした。


 「わしとアザーが陽虎。カシア・メルロ・ラチャ・ピスが依頼じゃ。ほれ、早く準備しなさい」

 「ツァイト‥」


 カシアがそう言葉を零す。

 ツァイト‥この人がさっきアザーが話していた人物だろう。

 身長は私より低いが、髭があってなんだか可愛いおじいちゃんという感じだ。

 カシアもツァイトには逆らえないのか、口をつぐみ返事をする。

 

 (カシアの顔。納得はしてないけど仕方がないって感じの表情だなあれは‥)


 だが新たな案も思いつかなかったようでカシアは諦めたように「分かった」と返事をした。

 なんだか新しい玩具を取られた子供みたいにいじけているカシアを眺めていると誰かに手を引っ張られた。

 横を見ればメルロとラチャが私を見ていた。


 『転移陣はあっちにあります、依頼の時間まであと少しあるけどもう行きましょう』

 「転移陣‥」


 知らない言葉である。転移陣‥言葉の通り転移できる陣なんだろうが想像がつかない。

 私が転移陣について苦悩していると頭上から声がした。


 「見た方が早い。‥ピス。準備は大丈夫か?メルロやラチャも‥」

 

 カシアは何やら気持ちの整理がついたのか私たちの方に近寄るとそう言った。

 ラチャはニコニコと丸を手で作っている。メルロも準備万端と言う意味なのか腕で筋肉ポーズをとっている。

 半袖のため細い腕が良く見える。


 (メルロかなり薄着なんだよな‥よく寒くないな‥半袖だし)


 まぁ子供は風の子と言うし‥あれ?もしかして今日の記憶しかない私も子供なのでは?

 ‥だがそれで体が温かくなるわけではない。

 普通に寒い。

 

 (この施設。なぜか温かくないんだよなぁ‥。病棟は温かかったのに‥)


 何か温める装置でも壊れているのだろうか。

 というか室内でこの寒さと言うことは依頼地はかなり寒いのではないか?依頼地がどこにあるのかは知らないが。

 なら上着をカシアに言って借りた方が?だが暑くなったら荷物になる可能性もある。


 「‥。私は持ち物は無いからね、準備は大丈夫だよ」


 考えた結果、持って行かないことにした。寒さくらい慣れるだろう。きっと。そう…きっと。


 「なら出発だな」


 そうカシアが言い魔法陣のある場所に向かって進んでいく。置いて行かれると迷子になるため私は慌ててカシアの後を追う。

 だがその前に挨拶をと思い私はアザーとツァイトに向かって頭を下げる。


 「ではお先に!アザーとツァイトさん気を付けて!」

 「おう!ピス達も気をつけろよ!」

 

 アザーは元気よく手を振ってくれた。

 私の横でラチャとメルロもアザー達に向けて手を振っている。

 振る予定はなかったが私もアザー達に向けて手を振った。


 …余談だがアザーによればカシアも少しだけ手を振っていたそうだ。


 * * * *


 「おぉ‥」

 

 転移陣を見た感想はこれである。

 もう本当に「おぉ」としか言えない。だってそれ以外の感想が見当たらないのだから。

 だが目を輝かせはしゃいでいる私とは違い、メルロやラチャ、カシアの三人は何とも言えない顔をしている。

 まるで苦虫を嚙み潰したような表情である。

 

 『はぁー気が乗んない‥』

 「そうだな‥何度乗っても慣れないからな‥」


 そう各々が言う。

 いつもならジェスチャーするメルロも今だけは静かに佇んでいた。


 「ねぇ‥どういうこと?何か変なものでも‥っとわっ!踏んじゃっ‥」


 あまりにも三人が情報を話してくれないため、情報を少しでも話してもらおう思い近寄ったとき、ツルツルとしていた地面に足を滑らせ転移陣へ足を踏み入れてしまった。

 私の言葉は最後まで三人に届くことなくその場から消えたのだった‥。


 * * * *


 私は転移した場所である街の入り口でうずくまっていた。

 結論。三人の言う通りあまり良いモノとは言えなかった。


 「きも、気持ち悪い‥」


 そう。胃がむかむかするのだ。

 例えるなら、物凄い速度で回転したような感じである。

 吐けるなら吐いてしまいたいが、吐けない。

 手を口の中に突っ込めば吐けるとラチャに言われたが、そこまでして吐きたいかと言われると吐きたくない。

 それに吐いたところで気分が良くなるとも限らない。


 『転移陣、どんなに改善してって言って改善してくれる気配ないですからね‥』


 メルロは苦笑いをしながらラチャに代弁させた。

 慣れているのかメルロは深呼吸をしたのち通常状態に戻っていた。

 否。それか若さのおかげかもしれない。


 (若いっていいなぁ‥。まだ自分の実年齢知らないけど‥)


 私はそう思い隣に佇むカシアを見る。

 カシアが少しばかり浮かない顔をしているのだ。先程の転移で酔ったのではないだろうか。


 「ねぇ。シア大丈夫?気持ち悪いの?」

 「あ。いや心配させてしまったならすまない。ただやはり‥本当に良かったのかと思って。記憶喪失ならそのまま夜鳩を離れてもよかったんだから‥」


 そうカシアは言う。

 そのことについてずっと気にしていたのだろうか。先程も説明したはずなのだが。

 私はカシアの悩みを消そうと思い満面の笑みで言葉を紡ぐ。

 

 「それなら心配いらないよ。私は自分の意思でここにいるの。私も目的をもってここにいるんだよ?自分のことも思い出したいしね‥。シアもそんなんじゃないの?この組織のこと‥私はまだ何も知らないけどさ‥」

 「いや。俺は‥そんな清い物じゃない‥。ただの贖罪のためにいるんだ。‥他のみんなも前のピスもきっと‥」


 その言葉の続きを待っていると近くで爆発音が聞こえた。

転移陣は夜鳩の魔法使いが完成させた装置です。(ただ陣を書いただけですが)

魔法使いは魔力があるおかげで魔法陣から転移してもある程度は酔いませんが(体に纏っているモノなので空間抵抗を受けにくい※例外もある)一般(他種族)は魔力なんてものないのでかなり酔います。

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