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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
間話

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間話 陽虎のとある一日

今回から主に出てきた陽虎の一員「クレマチス」視点で送る陽虎の日常です。




 ジュー…と肉の焼けるいい音がする。

 朝から肉とはやや重い気がするが、陽虎の姫であるラチアのご所望だ。叶えないわけにはいかない。

 

 (ふー。もう完成だな。…よし。ラチアを起こしに行くか…)


 俺は火を止め、完成した肉…ハンバーグを皿によそいラチアの部屋へと向かう。

 

 「おーい。ラチアー。ハンバーグができたぞー。起きろー」 

 「……」


 ラチアの部屋をノックしつつ、俺はそう言った。

 だが返事はない。

 もう一度ノックするが、先程と結果は同じ。


 (はぁーどうする?入るか?だがなぁ)

 

 前、起こすためにラチアの部屋へ入れば「乙女の部屋に無断で入るなんてありえない!」と叫ばれてしまった。

 なので、部屋に入ることはできない。

 まぁ入らなかったら入らなかったで「何で起こしてくれないのー!?」と文句を言うのだろうが。


 どうしたものか…そう考えているうちにラチアの部屋のドアが開いた。

 もしかしてもう起きてたのか?と思ったが…


 「…マチス…ふぁぁっ…えっと…あ。ご飯…ね‥‥今行くから」


 そう言って眠たそうに目をこするダージリンがラチアの部屋から出てきた。

 紫色のシルク製のネグリジェを着ている。

 そのネグリジェの肩ひもが肩から落ちていて、今にもネグリジェ全体が落ちそうだ。これは精神衛生上よろしくない。


 「ちょっ…!リン!そのっ!ちゃんと着替えてから来てくださいっす!」


 俺は顔を真っ赤にさせながらそう言い、思いっきりラチアの部屋のドアを閉めた。

 きっと俺は耳まで真っ赤にさせているだろう。

 だが仕方がないと思う。

 想い人の寝起き姿など見て、顔を赤くさせない男がいるだろうか。

 …いないかもしれないが俺はいると信じている。


 (ふー。朝食の続きすっか…)

 

 そうすれば気が紛れるだろう。そう思い俺は朝食の準備の続きをした。


 * * * *


 「ねぇーマチスー。お皿片付けてー」

 

 食後。見事にハンバーグを完食したラチアは、口を突き出し俺にそう言ってきた。

 これは毎食のことである。

 きっとお腹いっぱいで動きたくないのだろう。だがここで甘やかしすぎるわけにはいかない。


 「マチス。ちょっと相談したいことが…今度の侵入のことなんだけど…」


 ラチアに返事をする前にダージリンにそう言われる。


 「はいはい!今行きます!ほらラチアさっさと皿を片付けろ」


 俺は急いで返事をし、ダージリンのいる方へ向かう。

 向かえば、どっさりと紙を渡された。どうやらチェックしとけと言うことらしい。


 ーー俺の朝は何気に忙しい。

 理由としてはダージリンとラチアの家事能力が全くないからである。

 まぁ二人の話を聞くに、ダージリンは精霊種の中でもお嬢様としね育ってきたらしいし、ラチアに関してはどこかの国の王女なのだから仕方がないといえば仕方がないのかもしれないが…。

 

 「あ!マチスー!肩揉んでー!」

 「はいはい…っておい。さすがにやらないぞ?」

 「えーケチー」


 皿は片付けたようだが、そこまではやってやらん。

 俺はケチケチ連呼するラチアの頭を撫で「ケチで結構」と告げる。

 

 この姫が陽虎に来た時のことは覚えていないが、日記には「めっちゃ可愛い」「いい子。素直」と記載していたため、最初こそ可愛げがあったのだろう。

 今は可愛くないというわけではないが、やや毒舌気味になってきているので一括りで「可愛い」とは言い難い。

 

 「はぁー。なぁ姫…少しは俺のことも労わってくれよ…疲れてんだよこっちは…」

 「えー労ってって言われても…家事をやるよっていってもマチス止めるじゃん」

 「いや家事をやれってわけじゃねぇんだって…俺に感謝の言葉の一つくらい言ってもいいんじゃねぇのってこと」


 別に感謝されたいわけではないが、ラチアに肩を揉めと言うと絶対痛くしてくるだろうし、家事を代わらせれば食料が全て黒焦げになるし…と考えれば感謝されて労われた方がいい。 

 さてこの姫はどんな言葉を言ってくれるのだろう。そう思っていると後ろから声がした。


 「マチス…感謝されたいの?…ありがとう。いつも家事やってくれて…後いつも守ってくれてありがとう。これからもよろしくね?」


 傍から見れば棒読みの声でダージリンにそう言われた。


 「…!!っ!!リ…リリリリリリ‥‥ン‥‥」

 

 俺は呼びベルのようにダージリンの名前を呼び、顔を真っ赤にさせる。

 まさかこんな形でダージリンから感謝の言葉を貰えると思ってもいなかった。


 「えぇリンよ?…ほらラチアも」

 「えーリンさんが言うなら…マチス。いつも助けてくれてありがとう。これからも美味しいハンバーグを私とリンさんのために作ってね?」

 

 ラチアもダージリンと同じように感謝の言葉を述べるが俺はそれどころではなかった。

 もうリンの言葉が頭から離れず、ずっと再生していた。


 (リンが俺に感謝の言葉を…)


 「ちょっと!マチス聞いてるの?」

 「うん。えっと…悪い。これから一時間話しかけないでくれ!」


 俺はそう言って部屋に籠る。そして棚から日記帳を取り出した。


 (よし。この思い出…忘れるわけにはいかない!!)


 俺はそう言って、先程の感覚を全て日記に記載したのだった。

 

 ーーこんな一日が毎日あるわけではないが、だいたいこんな日々である。

   俺達陽虎の平穏な一日。

 


 

次話投稿は明後日の18時前後です。次回メルロの過去と三章一話を投稿します。

メルロの過去に関してはテンポが悪くなりそうだったので、全部書かなかったんですが、二章が終わったので+αとして書こうと思っています…細かいところとか、カットしたところとか)


あと今までの話の誤字修正も同時並行する予定です。これからもこの作品をよろしくお願いします<(_ _)>

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