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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
2章 レルフィットの街

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11話 宝物の記憶

次回更新は明後日の18時前後です。(間話の予定です)

やや早くてすみません

 「カシア!」


 私は腕にラチャを抱え地上へと出た。

 そこにはカシアと、贄と思われし人たちがいた。


 『ん?なんでカシア贄のやつらと一緒にいるんだ?』


 不思議そうにラチャは尋ねた。


 「…あぁ。神を無力化するまで贄の人達が襲われる可能性があったからな。集まってもらって護衛をしていた」


 なるほど。そういうことだったのか。という感じでラチャが頷く。


 「ふーやっと着いた」


 そこへメルロを背に背負い、神を右手で引きずりながら登ってきたアザーがやって来た。

 やや汗だくである。

 さすがに二人は大変と思いメルロを背負おうとしたのだが、私の右手がおかしいことに気づいてか、「いい俺一人でどうにかする」と意地を張ってここまで来たのだ。

 

 (はは…お疲れお疲れ…)


 内心でねぎらいつつ私は辺りを見渡す。 

 これで後は帰るだけだ…そう思った時。


 「は…メルロ?」


 そう言う声がした。

 声がした方を見て見れば目を丸くし、口を手で抑えた少女がいた。


 (確かあの子…私が出ぎ地付近まで連れてきた子だよね…)


 そう疑問を持つが一つ可能性が浮上した。


 (もしかしてこの子…メルロの姉の…)


 なお呼ばれたからかメルロはゆっくりと目を開けた。


 「…あ?」


 まだぼんやりとしているのか目がとろんとしている。 

 

 「やっぱり…あんたメルロ。…なんであんたが!あんたさえいればこんなことにはならなかったのに!母さんだって!!」


 贄の少女は態度を豹変させ、メルロへ手を伸ばし襲い掛かろうとした。

 その瞳は憎しみに溢れている。


 「…っ!やめろ!」


 それをカシアが止める。

 急ぎ間に入り、贄の少女の腕を後ろにし、地面へ押さえつけた。


 「何のつもりだ?」

 「ーーっこいつが!こいつさえ贄になっていれば!母さんは死ななかったの1あたしだって贄に選ばれることはなかった!全部全部あんたのせいなんだから!」


 少女はそう叫ぶ。

 頭が冴えてきたのか、やや驚いた表情でメルロは贄の少女を見つめていた。


 「せっかく母さんが育ててくれたのに…。私だってあんたの面倒見たのに!恩をあだで返す気!?」

 『はぁ!?何が恩だ!メルロに虐待しておいてよくも!』


 「恩」という言葉が聞き捨てならなかったのかラチャが贄の少女に向かって叫ぶ。

 だが贄の少女も負けじと言い返す。


 「はぁ!?言いがかりはやめなさいよ!この球体!」

 「おいラチャ!」


 …話し合い(?)もとい言い争いは余計ヒートアップしている。

 さすがに止めようと思った時、アザーがメルロをおぶいながら言葉を発す。


 「なぁ…嬢ちゃん。恩は…そう言うもんじゃねぇぞ?俺も独りぼっちだったが拾ってくれた人がいた‥そいつに対して恩があった。だが俺が恩を返すよりも前にどっか行っちまった。裏があって、それで何かを強要するのは…恩…って言うのかね?」

 「ーー!」


 少女は顔に真っ赤にさせ威嚇する。


 「あーメルロ。きっと世界にはああいう人たちも多い。だから気にしなくていいと思うよ」


 私は小声でメルロにそう言った。

 贄の少女に聞こえたら、また言い争いが勃発すると思ったからだ。


 恩は見返り鳴く誰かを助ける人と、助かりその人へ何かしたい。そういう両者の想いで成立すると私は思う。

 それが一方通行や少しでも違ったら…歪な恩か…それは恩ではない別の何かなる…そう思った。


 (もうメルロには前を向いてほしい…忘れろとは言わないけど…)


 私はそう思いメルロを見つめた。


 * * * *


 ーー一時間後。


 「なぁ本当にいいのか?」

 

 ラチャにそう問われ私は頷く。

 先程ラチャに記憶をこのまま消すか、封印を解くかの二択に迫られたのだ。

 どうせもう少ししたら記憶の封印は解ける。なら今解くか、完全に消すかの方がいい。そう考えたようだった。


 (でも私は記憶を全部思い出したい…性格は変わるか分かんないけど…)


 体験したこと‥誰かに出会った記憶それぞで人の性格は変わっていくと思う。それに基づいて価値観も変化するから。


 例えこれで私の人格が変わろうとも…みんなは一緒にいてくれる気がする。元の私が言っておもうかもしれない。でもそれは私の選択じゃない…みんながそう思っているだけ…。私は自分のことは自分で決めたいんだ。


 『分かったよ…記憶(レミニセン)ーー』


 「!」


 ラチャが呪文を唱えると、淡い水色の光が私も包む。

 そして頭の中で「カチャ」と言う何かがカギによって開けられる音がした。


 (…!これが全部私の記憶)


 私は目を瞑り数々の封印されていた記憶を思い出す。

 その記憶の中で火と問うラチャとの記憶があった。


 

 ーー『メルロ寒くないか?』


 (うん…ラチャとだから…温かい。ポカポカするよ)


 そうジェスチャーをしてメルロはラチャを抱きしめる。

 その顔はとてもとても嬉しそうで幸せそうだった。


 (なんだ…ちゃんとこのときの私も幸せ知ってたんじゃん…)


 それが嬉しくてか頬が緩む。

 ニマニマしている私に気が付いたのかラチャが尋ねる。


 「どしたメルロ?そんなニマニマして」

 「ん」


 秘密というポーズで人差し指を口元へつける。



 これはとても大切な「宝物」だ。

 

 ラチャも覚えてるだろうけど…何となく…私だけの幸せにしたかった。

 


 * * * *


 「あ!メルロ!おーい!」


 メルロが記憶を開放してくると言っていたのでやや心配していたのだ。

 だがこちらへ走ってくるメルロはいつものメルロと同じように笑っていた。


 (良かった。いつものメルロっぽそう…)


 でもこれで人格が変わろうとも私はメルロを友達だと思ったと思う。。

 でも…ふと思った。


 (そういえばカシアはどう思っていたんだろう)


 メルロから記憶喪失になる前の私と一番仲が良かったのはカシアだと言っていた。近くに居たのなら余計に…私のことどう思っているのだろうか。


 (記憶。その人に対する記憶を覚えててほしいとか忘れないでって単なるエゴでしかないんだろうけど)


 だがこれに正解はない。正解が無いからこそ辛いのだ。


 (いっそ正解があれば…いいのに)


 私はそう思いこちらに走ってくるメルロとラチャを見た。


 (人の人格や記憶…なんか怖い。すぐに失われそうなもの…安定ではない)


 でももし記憶が永遠だったら…世界は成り立たない。


 だから…いいのかもしれない。


 * * * *


 ほどなくして、迎えの馬車が来た。

 その間に傷の手当や、関わった人の記憶を消す作業など行っていたため、やや多忙だった。



 (相変わらずラチャの魔法は綺麗だったなぁ…)


 毎回街の外で行うので、余計神秘的に見えた。

 まぁ外の黒薔薇が全て萎れていたのが残念だったが…。

 

 

 あの街はもう神…贄制度に苦しめられることはもうない。

 今回は街に被害はなかったので、特にあと作業の時関わらなかった。

 

 ただ雪の降った後にはひっそりと神だけが消えているのだ。

 悪者をしんぱするものなど誰もいない。


 「おーいピス。早く乗れよ!置いて行っちまうぞ!】


 街を眺めていたらアザーにそう言われたため馬車に乗る。

 今回は二台だ。一代目は私たちが乗るよう。もう一台は罪人用の馬車だ。

 

 もちろん私は罪人ではないので普通の馬車に乗る。


 「…ふーよっこら…あしょっと…」


 私は変な言葉を発しながら馬車へと乗り込む。

 隣にはメルロとラチャ。向かいにはアザーとカシアである。

 

 「今回の依頼…でさ…ちょっと気づいたことなけどさ…あの…。精霊術って発動しても体って普通痛まないのかな?」


 ふとした疑問を皆に投げかける。

 陽虎の中にいた精霊種。今回出くわした精霊種。二人とも精霊術を発動していたのに疲れた様子はなかった。

 私の場合一回でも発動すれば、大きかれ小さかれ関係なしに体が痛むのだ。

 顔に出ないだけかとも考えたが、痛みなどないように普通に動いていた。

 

 (ならやっぱり痛みが無いのが普通って考えるべき…まぁ少人数で決めつけちゃいけないとは思うけど…)


 「…確かに俺が知っている精霊種が精霊術を使っても体の痛みはすぐには感じて無さそうだった。ただ使いすぎると頭や体が痛むってのは聞いたことあるぜ?」

 

 そうアザーが言う。

 なら私は症状が出やすいだけなのだろうか。

 

 『もしかしたらだが、ピスを攫ったやつらが何かしたとかじゃないのか?ピスってちょっと変だしな』


 変とは呪いが無いということだろうか。

 性格でないことを祈る。


 「確かにその線はあるな…だがピスを攫ったやつらの足取りはつかめていない。…そいつらを捕まえないことにはなんとも。陽虎の線もあるが…違う気がするんだ。勘だが‥‥」

 「そっかぁ…」


 まだまだ分からないことだらけらしい。

 

 (でもいつか…私の謎も全て分かったらいいのに…他と違う。それはいいように見えて怖いこと…)


 ーーこの世界の秘密が一つでも多く暴かれますように


 私はそう願い目を瞑った。

 

 * * * *


 「ただいまーっす」

 「マチスおかえり…」


 ラチアがそう言って出迎えてくれた。

 ラチアの手には籠が握られており、その中には多くの草…否薬草が入っていた。


 「あ。マチスおかえり…?なんか元気ない?」

 

 薬草を見つめていれば、ラチアの後ろから声がした。ダージリンだ。

 いつものように表情が無い顔でそう言った。

 声にも感情が無いため若干怒っているように聞こえる。


 「いやなんでもないっすよ。ただ…ちょっと色々あっただけで。夕食はパスします。少し部屋でやすませてください」


 そう言って俺は自分の部屋へ入った。

 

 (…今日あいつに会ってからずっと気になってた…)


 「俺に会ったことありますか?」というセリフ。

 聞いたことのない声。知らない顔。そう思い込もうとしていたが、そうではない気がする。

 やっぱり()()()()()


 (俺はあいつを忘れたかったのか?)


 いつもマメに書いている日記。だがずっと書いている日記にも空白の期間が存在する。

 きっとあの青年とはその時に出会ったのだろう。


 (ーー考えても呪いのせいで思い出せるわけがないって分かってる…俺が忘れたがる出来事など、真実から目を背けたくて逃げたというモノだろう)


 なら無理に知らなくていい。

 俺は自分が可愛い。自分を自ら傷つけたいなどと思わない。


 (…だが…心がモヤモヤする…)


 なんでだが分からないが俺はあいつの笑顔を守りたかった気がする。


 そして…どうだったんだっけ…


    To be continued

 

 

二章これにて終了です。

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