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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
2章 レルフィットの街

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9話 天種の呪い

2026,2,13 修正

 

 「…あ!出口!」


 贄の少女はそう言って光の差す方へ走り出した。

 私も傷一つなく地上へ出ることが出来そうで、ホッと息をつこうとしたが…


 「ーー!止まれーー!」

 「えっ…」


 カシアが大声を上げ贄の少女の腕を引っ張る。

 贄の少女は驚いた様子でカシアを見ていた。

 ーーその直後。わずかに開いていた地上へつながる扉の前に無数の黒薔薇が地面から生えてきた。

 

 (…!どういうこと!?なんで黒薔薇が…)


 「…ッチ。…はぁっ!」


 カシアは舌打ちをした後、薙刀で薔薇を斬ろうと試みるが、斬っても斬っても黒薔薇はすぐに再生してしまう。

 

 「もう少しなのに…出られないの…?」


 贄の少女は顔を真っ青にしてそう言った。

 少女の手足は微かに震えている。もう少しで贄の役目から逃げられるというのに、その道を塞がれ絶望でしかないのだろう。


 (…なんとかしたいけど…は私も今は力が使えない)


 あるのは刃物付きの靴のみだ。

 ここで立ち止まるしかないのだろうか。そう考えた時、声が聞こえた。


 ーーどうして


 (え?)


 ーーなんで死ななきゃいけないの?死にたくないよ…


 私の心に宿る、ラピスラズリの声かと思ったが違う。ラピスラズリの声はもっと高い。

 それに聞こえているのは私だけではないようで、カシアも贄の少女も困惑した表情で辺りを見回していた。


 ーーまだやりたいことがたくさんあるのに。全て諦めなきゃいけないの?


 ーー薔薇の養分になんてなりたくないよ!嫌だよ…お父さん!!


 (…もしかして…これ…今までの贄で命落とした人の声…?)


 薔薇の養分ということは贄で命を落とした人は全員薔薇の養分になっていたのだろうか。


 (外の薔薇も…もしかして…?)


 街を囲むようにあった黒薔薇の花畑。

 あれらの養分は全て生きていた人なのだったのだろうか…


 「…っ!」


 ーー息子にもう一度だけ会いたい…


 ーー親父の介護をしなくちゃいけないのに


 様々な贄の人の想いが聞こえてくる。

 悲しみ、憎しみ、後悔


 ーーこれが明日を奪われた人たちの想い…


 (でも…なんで私たちを閉じ込めるんだろう…てっきり敵の攻撃かと思ったけどそうじゃなさそう。ーーー?)


 想いを聞いてほしかった…というのは少し違う気がする。

 なにか私たちに伝えたいことがあるのだろうか。伝えなければけないことが。


 ーーして


 「え?」


 前半部分が聞き取れなかったため私は聞き返す。


 ーーあの子を…救って…神と呼ばれた。独りぼっちの神様をーー


 そう黒薔薇は言うと、光に包まれて消えていった。まるで最初から薔薇なんて無かったかのように。

 その場に残ったのは地面に落ちている小さな黒薔薇の蕾のみ。

 私は黒薔薇の蕾を拾おうと身をかがめる。

 そして蕾に触れた時、声が頭の中に一気に流れてきた。


 (…これは……神の…記憶…?)


 私はその声を聞いたと同時に、蕾を握りしめる。

 やらなければいけないことができた。


 「…カシア。この子お願い…!私…行って来る!!」


 私はそう言っ来た道を戻って行った。右手には靴を。左手には黒い小さな黒薔薇の蕾を持って。


 (ーーーっ!走れ走れ!!私!!)


 神と話さなければいけない!このままフィディスだけ回収して終わりたくない!


 「おいピス!?」


 カシアはそう言って叫ぶが、その言葉が私に届くことはなかった。


 * * * *


 俺は口についた血を手で拭いつつ、メルロを見た。


 (ーーあいつ何があったんだ?急に目つきが変わったが…)


 理由は分からない。だがいつものメルロよりも眼が輝いているように感じた、


 『食べる魔法(セイヴァー)!!』


 メルロは杖を横に動かし、白い球体を動かす。

 神から放たれる攻撃を球体で受け止め、球体から受け止めた攻撃を神へと放っていた。


 (…これは…俺も負けてられねぇな!)


 俺はサーベルを再び握りしめ、神へと振り下ろす。


 「はぁぁぁっ!!」


 躱される。だが足で追撃を続ける。


 (はぁっ!!)


 そして少し神の体制が崩れたタイミングで、思いっきりサーベルで神の胸へと突く。


 「ーー!」


 そしてサーベルを抜こうとするが、神が刃先を持ち離さない。

 爪を振り下ろし攻撃しても、神は刃を離そうとしなかった。


 「---!やべっ!メルロ!!」


 神は左手で杖を持ち詠唱を始めた。

 このままでは攻撃をモロにくらうと思った俺はメルロへ向かって叫ぶ。

 神の動きを封じてもらおうと思ったのだ。

 メルロは頷き、白い球体を出現させ、神の頭を狙って放った。


 「よしっ…メルロの攻撃が当たったと同時にな抜く…!」


 だが神は俺の服を無表情で掴み、持ち上げる。

 そして白い球体から守るように俺を盾にした、


 (こいつ!俺を盾にして、戦闘不能にさせる気か!)


 神と近距離になった俺は必死に神の腹や足を蹴ったがびくともしない。

 フィディスのせいで体も強化されているのだ。


 (…。メルロの作り上げた球体は目と鼻の先だ。このままじゃ戦闘どころじゃなくなる!)

 

 なら…全力を出すしかない。


 「ふー。頼んだぜ。俺」


 そう言って俺じゃ意識を故意に手放した。

 きっと次に目が覚めるのは戦闘が終わった後だろう。


 (はぁ‥今回はやりすぎないでくれよ)


 * * * *


 『アザーの奴気配が変わった!アイツが出てきた!』


 ラチャにそう言われ私はゆっくりと唾を飲み込む。


 (アザーさん全力出したんだ…こっちのアザーさんを見るのはこれで三回目。…うぅ。こっちのアザーさんちょっと怖いんだよなぁ‥」


 天種であるアザー時は基本的に全力を出さない。裏の顔が出てきてしまうからだ。


 (ーー今日は敵を殺さなきゃいいんだけど…)


 裏のアザーは残忍で冷徹だ。あの優しくて明るいアザーと同一人物とは思えないほどに。

 殺しをためらわないし、敵と味方の判断もつかない時がたまにある。

 現に一度私も殺されかけたことがある。


 (あの時は、カシアさんが守ってくれたからどうにかなったけど…)


 でも私の前全力出すってことは少しは信用されてるということ。

 「生きて帰りたい」私はそう願ってアザーを見た。


 「あっ…あー?おらよっ!」

 「ーー!?」


 アザーの瞳は光をなくし、冷たい目で神を見つめていた、そして次の瞬間。上から降ってくる白い球体を鷲掴みにしたと思ったら、神へ押し付けた。

 とても強い力で、


 神は瞳を見開き、アザーを離す。

 そしてアザーへ向けて杖を向け詠唱する。


 だが詠唱が終わる前に、アザーは神の胴体を爪で引っ掻いた。

 胸から腹にかけて、クマが引っ掻いたような爪痕ができた。


 神は負けじと呪文を詠唱し、黒薔薇を出現させアザーの足に巻き付いた。

 そしてまた詠唱を始め、薔薇で針を作り、アザーへ刺そうとする。

 

 「…弱いな」


 だがアザーはそう言ってすべての針を、拳で折った。

 手は血だらけだが本人は気にしていない。

 

 (仕組みはよく分からないけど、このアザーさん痛み感じないみたいなんだよね…)


 もしくは感じているのかもしれないが、それをどうでもいいと思っているのかもしれない。

 精霊種の中にいる精霊は、自分の命に関わるので契約者を守ろうとするが、天種はそう言うわけではない。

 悪魔の別人格は、戦いを命としているので、体を負傷しようがお構いなし…みたいな所がある…らしい。


 (まぁ…殺すレベルじなきゃ大丈夫かな?私も攻撃しよう)


 『食べる魔法(セイヴァー)…っ!』


 ーーと杖を振るおうとしたが、アザーにギロリと睨まれた。

 あの目は「俺の獲物に手を出すな」と言うやつである。

 手を出したら…殺される。


 (で…でも…まずいかも…このままじゃアザーさん神を殺しちゃう!!)


 あの目は人を殺す目だ。

 今止めなければ死んでしまう!


 (前もフィディスを回収する前に殺しちゃってアザーさんとっても後悔してた。影で泣いてた。だから…今のアザーさんに人を殺させちゃいけない!!)


 私はそう思い動いた。

 足を動かす旅、殺されかけた時の光景を思い出す。

 だがしに死に物狂いで止めなければ…アザーの心が壊れてしまう。


 「ーーーん!!」


 私は白い球体で神を押さえつけた後、アザーの前に立ちはだかり、手を広げた。


 「あぁ?なんだてめぇ。弱虫じゃねえか」 

 「っ」


 手がプルプルと震える。

 前に殺されかけた時のことを思い出す。


 あの時は、身体中傷だらけになり死ぬかもと思った時にカシアが私を守ったのだ。

 ほとんど傷は治癒したが、一部だけ体に傷は残っている。


 「おいどけって。痛い目合わされてぇのか?」


 そうアザーは言って私の肩を強く掴んだ。

 長い爪が食い込んできて、肩から血が流れてくる。


 (痛…)


 痛みで顔をゆがませる。

 だがここで引いた絶対に神を殺す、

 魔法で対抗しようか迷ったが、ここで魔法を使えば敵だと見なされ命はない。


 (お願い。もう戻って!!)


 そう願うが、今のアザーが自分で意識を手放さなければ、このままだ。

 それか、無理にでも身体強化を解くか。


 『アザー!やめろっ!』


 ラチャがそう叫ぶも、アザーは聞く耳を持たない。


 「あー!っーー!!」

 「はぁ?なんなんだよっ!」


 アザーは機嫌を悪くし私のお腹を蹴り飛ばす。

 

 「っ!!」


 もう無理かもしれない。そう思った時。


 「ラピスラズリ!!…ジャンプ!」


 そう叫ぶピスの声がした。


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