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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
2章 レルフィットの街

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7話 ラチャ親衛隊ここに参上

明日か明後日の18時前後投稿予定です(あやふやですみません)

 「ーーってなわけで!ラチャは返してもらうぜ!」

  

 膝についた汚れを払いつつアザーはそう言った。表情は笑っているが瞳は笑っていない。怖い。


 「お前らが旅のものか、ちょうどいい。ここでまとめて始末してやる…鼠ども」

 

 男ー神は杖を取り出し、こちらへ向けてきた。

 だがその顔には表情が無かった。ロウソクの炎に照らされ、ひかる宝石眼にも光はない。


 (ーー!フィディス特有の宝石眼それに…もしかしてこの人精霊種!?)


 杖も持っていたから精霊種ではないと思っていたがそうでもないらしい。

 自分が杖を持たないばかりにそう考えてしまった。

 記憶喪失なのだから主観で考えるのは危険だとカシアに言われていたのに…。


 「…ロードナイト…。カッツゥーラ!」

 

 男_神が詠唱すると何もない地面から薔薇が生えてきて私たちの足を固定しようとしてきた。

 神の近くにいたラチャも薔薇に取り囲まれそうだったが‥


 「ーーーーっ!あっ!!」


 メルロが杖を持ち振りかざした。

 すると白い球体がラチャの近くに現れ、薔薇ごとラチャを取り込んだ。


 ーーてっきり薔薇のみ取り込むと思っていた私は目を疑った。


 (えっ!??ラチャごと取り込んじゃうの!??それって大丈夫??ラチャメルロに食べられたことにならない??)


 そう心の中で叫ぶ。だがそんなこと知る由もないメルロはもう一度杖を振りかざす。

 するとメルロのすぐそばに、同じような白い球体が現れた。

 その球体から馴染みのある声が聞こえてきた。


 『ぷっ…はっ…助かった!メルロ‥』


 やや気持ち悪そうな表情をしてラチャが白い球体の中から出てきた。

 どうやら白い球体同士なら転移が可能らしい。何と便利な機能だろうか。


 ほっと息をついたのも束の間。

 薔薇が自分の身にも迫って来ていて私は慌てて心にいるラピスラズリへと声を掛ける。


 (ラピスラズリ!お願い力を貸して!)


 「…」


 いつもならすぐに返事が来る。だが予想に反しラピスラズリからの返事はない。


 「ラピ…ラピスラズリさん!??」


 目の前を見ればどんどんと薔薇が迫ってくる。これはまずい。

 早く応答してくれラピスラズリ!と心の中で叫ぶが反応はない。

 私の異変に気が付いたのか、アザーが私を抱え上へと飛んだ。

 この前とは違いアザーは完全に悪魔に近い姿になっている。耳は尖り、頭から二本の黒い角が生えている。

 そして尻尾と、黒い羽が背から生えていた。

 その羽のおかげなのか、私を抱えパタパタと羽を鳴らし宙に飛んでいた。


 「おい!何があったんだ!?もう戦いの最中だぞ!」

 

 焦ったアザーの声が耳に響く。

 

 「ラピスラズリが反応しなくて…!」


 その焦りに私もつられ早口で説明する。

 

 (もうラピスラズリ!こんな時に何してるの!?)


 精霊は気まぐれとカシアに聞いたが本当にそうである。

 まさか緊急事態の時に反応してくれないとは思わなかった。

 だが、もしかして私が何か気に障るようなことをしてしまったのだろうか。心当たりはないが、自分が悪意なくやったことでも相手が傷つくなんてことはざらにある。


 もしかしたら…そう思った時。


 『…?あらマスター?すみません呼びましたか?ふぁあ。少しばかり寝不足で…えっとなんでしょうか』


 欠伸をしながらそう言うラピスラズリの声が頭に響いた。

 

 (ラ、ラピスラズリー!!ちょっと力を貸してほしいの!!今めっちゃくちゃ緊急事態で死にそうで!!)


 『?そうなのですか?すみませんマスター。ですがこの前も力を使ったでしょう?体のためにも今回は物理攻撃で頑張ってくださいな…ふぁあ。ではわたしは寝ますので』


 そう言って声は止んだ。

 返事をしてくれて助かった!これで戦闘に参加できると思ったのだが、まさかの力を貸してくれないと来た。

 

 (え!?…じゃあ今回物理攻撃しろってこと?一戦闘ド初心者に??)


 思わぬ返事に私は体を硬直させた。確かにこの前も病み上がりと言われ一発だけ力を使わせてもらえたが、それから少し時間が経過したので大丈夫と思っていたんだが…。

 駄目だったらしい。だが駄目なら駄目なりにみんなの役に立つことを考えなければならない。でなければただ邪魔なだけだ。


 「おい!一回降ろすぞ!メルロだけじゃあいつの相手は無理だ!」

 「ふぇっ!?」


 私がいつまでたっても動かないからか、アザーはそう言って私を地面へと落とした。

 きっとアザーは精霊術があればどうにかなるだろうと思ったのだろう。

 だが残念なお知らせだ。私は今精霊術を使えない。


 カシアに助けをと思ったが、カシアはカシアで周りにいた警官の相手をしていて私をフォローする余裕は無さそうだった。というかないだろう。


 だがこのままぼーっとしていれば大けがをする。骨折ならいい方だろう。


 (えっとえっと…!?あ!カシアが前、宙で回転してたやつ。あれを真似すれば!)


 ええいママよ!と思い私は思い切って体を回転させようと宙を回る。


 (これ出来てるかも?だ、だけど出来たとして…カシアは攻撃してるから衝撃を防げてるけど…私は…あ)


 目の前に靴を捉え私は急いで、自身の靴を脱ぐ。そして靴を地面に生えている薔薇へと思いっきり振り下ろす。

 確か私が履いている靴は夜鳩の支給品だったはずだ。なら靴に刃物が隠されているとカシアに言われた。捕らえられた時でもロープを切れるようにだ。

 かかとにかなり強い衝撃を与えれば刃先を出せると聞いた。


 (もう…なるようになってくれぇぇ!)


 「…はぁぁっ!!」


  私が思いっきり薔薇に向かって刃物を振りかざし、薔薇を刺した。薔薇からは赤い血が噴き出す。生き物を刺している気分でやや気分が悪い。

 

 「…えっ、はぁ!?精霊ユつは!?」


 宙にいて神に攻撃を仕掛けようとしていたアザーがそう言った。

 せめて「降ろしていいか?」とか聞いてくれれば、このような目には合わなかったのに。

 やや恨めし気にアザーを見て私はこう言った。


 「精霊術が使えないの!ラピスラズリが使っちゃいけないって!もう聞いてから降ろしてよね!死ぬところだったんだから」

 「あーそうなのか。悪い悪い」


 本当に悪いと思っているのかという口調でアザーは言った。


 「はぁーまぁ生きてるからいいけどさ…」


 私は靴を薔薇から引っこ抜き、そう呟く。

 本当になんとかなって良かった。


 (でもこのままじゃ邪魔になるか…ちょっとずつ攻撃しつつ、私は他の贄の避難誘導をした方がよさそう)

 

 そう判断し、私はまだ逃げていない贄を探して走り出した。


 * * * *


 「やぁっ!」


 俺は薙刀を振り下ろし、警官に攻撃を仕掛けていく。

 アザーとメルロ、ピスが神を攻撃してくれているため俺は警官が神に近づかないように足止めをしていた。


 (思ったより人数が少なそうだったから一人でも抑え込めると思っていたが…人数が増えてきたな…)


 神が攻撃を仕掛けたタイミングで、同じ階にいた警官は気絶させられたため良かったと思っていたのだがそれも最初のうちだけだった。

 今では二〇名近くが一気に襲い掛かってくる。向こうは死なせる気で襲ってきているが、こちとら死なすわけにはいかないので余計やりずらい。

 

 「…っ!はぁっ。あっ!!」


 気を抜けばピス達がいる方へ、行ってしまう。

 

 (キリがない…それに捉えられていた贄の人がまだいると思うんだが…)


 先程も二名ほど逃げている贄らしきひとを見かけた。

 何人いるのかは知らないが、避難させなければ巻き込んでしまう。


 「っ!」


 ラチャに頼むべきだろうか…それともピスに…。


 「あ!カシア!いた…」

 「えっ?ピス!?」

 

 何故か靴を持って警官と応戦しながらピスはそう言った。

 だが何故ピスが俺の近くにいるのかが分からずに問い返す。というか何故靴で戦ってるのだろう。精霊術はどうしたのだろうか。


 「あー説明は後でするとして、贄の子って他にいる?見てない?私外へ逃がしてくるから見つけたら教えて欲しい!」

 「分かっ…あ」


 「分かった」そう返事しようとしたとき、ピスの後方に髪の長い少女がいるのが見えた。三つ編みをした子である。

 

 「ピス!お前の後方に!保護は頼む!」


 あまり説明しすぎると警官が贄を襲う可能性もあるので、手短にそう言った。

 分かったのかは分からないが「了解」と言ってピスは俺の指示した方へ走っていた。

 

 (ふー大丈夫そうだな。じゃあ俺は…警官をとにかく気絶させまくろう)


 よし。と意気込み俺は薙刀を振るった。


 * * * *

 

 「あーもう!なんでこうなんのよー」


 自分はただ同室の奴を囮にしてただ逃げたかっただけなのだが、まさか戦闘に巻き込まれるなど思っていなかった。

 他の贄の人達は逃げたらしく、悲鳴などは聞こえなかった。


 (もう。さっき転んだせいで足を怪我しちゃったし…はぁーどうやって逃げるかな。助けてくれそうな人の周りには警官いるし…んー)


 私は普段は全く使わない頭をフル回転させて逃亡策を考える。

 こういう時、メルロがいたら便利だったのに残念である。


 (あいつ地味に頭回るからなーはぁー。二年前の生活に戻りたーい)


 だがそれは不可能だろう。

 二年前、メルロが家出したせいで母は贄になったし、メルロだって家出したっきりだ。


 (もう。あーってかなんで前の生活思い出してんだろ…今は逃げることが最優先なのになー)


 もう死ぬと思っているから過去を思い出しているのだろうか。

 

 「いや。こんなところで死んでられっかよ!よし。もう天に任せてここは全速力ダッシュで乗り切ろう!」


 そう決心し私は立ち上がる。機会を見て飛び出そう。そう思った時だった。


 「あのー!」

 「ふぇぇっあっ!…あ…なんだ警官じゃないのか…」


 警官に見つかったと思い私は声を驚かせたが、杞憂だった。

 私に声を掛けたのは顔立ちのいい、銀髪のポニーテールをした女の子だった。


 「はぁ…えっとあんたは?贄じゃないし…」

 「あ。そうだよね…えっと私はピス。あんた贄の一人だよね。一緒に外へ行こう。他の贄の子の場所知ってたら教えて欲しいんだけど…」


 どうやら助けてくれる人だったみたいだ。

 怪我をしているので助けてくれる人がいるのは有り難い。

 何故手に靴を持っているのかは分からないが。


 「他の子は知らない。助けてくれるんんら助けてちょうだい。地上へ送ってくれればそれでいいわ」

 「それは約束する…って言いたいんだけど…今私武器が靴しかなくてさ…なるべく頑張るから私の傍を離れないでね!」

 「は?」


 思わず口が開いてしまった。

 何故武器が靴しかないのだろう。というかそれで信用していいのだろうか。

 先程は助けが来てラッキーと思っていたが、ラッキーどころじゃない。

 不安要素がかなり増した。


 (私逃げられるのかな…)


 そう思い私は目の前の女を見た。

ちなみになのですが、メルロは両親が死んでいることも知りません。そこの記憶は封印されてはいないのですが、ラチャによってぼかされています。

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