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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
2章 レルフィットの街

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2話 手がかりは依頼の場所に

 明日の投稿はお昼の十二時半前後です。

 ??_陽虎アジトにて


 「はぁー疲れた」


 俺はそう言ってフィディスが入った袋をテーブルに置き、ソファーへと腰を下ろす。

 肉体的な疲労は大したことないが、盗みというのは精神衛生上よろしくない。

 盗むたびに追いかけまわされるのは、心臓に悪いのだ。

 今日はこのままずっと寝ていようか…そう考えていると、ラチアがこちらへやって来て口を開いた。

 

 「ふーん。でも私は元気。ねぇマチス。外に遊びに行きたい」


 淡々とラチアは言った。

 だが俺としては絶対に外へ遊びに行きたくはない。こちとらフィディスを盗み出すための計画を寝ずに考えていたせいで眠たいのだ。それにさっき、今日はこのままずっと寝ていようかと考えていた。

 なので外出など絶対にするものか‥というところなのだが。


 (…それにこいつ今年で九歳だろ?この年になってくると外よりも室内で遊びたくなる年頃じゃねぇの?)


 どうも人間の子供というものは分からない。

 今まで人間と碌に関わろうとしてこなかっただろうが。

 

 「今日は無理。俺寝る予定なの」

 「えー。植物とりに行きたかったのに…」


 じゃあ一人で行ってこいと言いたいが、一人ほっぽり出すのも危険だ。俺達は追われる側。万が一見つかったときにラチア一人だと逃げきれない。

 だが陽虎は大人二人に子供一人だ。同世代のことも遊べない。気を紛らわすためか最近薬学を熱心に勉強している。


 「んーでもなー」


 どうしよう。そう悩んでいると今まで会話に入ってこなかったダージリンが口を開いた。


 「なら私が一緒に行くわよ?ラチアも私でいい?」

 「え!うん!マチスよりリンさんがいい!」


 食い気味にラチアはそう言った。連れて行かなかった俺も俺だが「よりも」という言葉を使われると地味に傷つく。

 これが嫌っている相手ならそこまで傷つかないのだろうが、可愛がっている子供だとダメージがでかい。


 (なんだかんだラチアが三歳の頃から一緒に暮らしてっからなー)


 成長も早いと思いつつ、出かける準備をするラチアを見る。

 自分は竜種。リンは精霊種。対してラチアは人間だ。

 彼女だけが猛スピードで成長していく。


 自分たちより遅く生まれたのに自分たちより早く死ぬとは‥種族の壁とはつくづく嫌なものである。


 (幼少期恵まれなかった分、せめて幸せな暮らしができればなって思って育ててっけど…愛情をこめてると別れがつらいな…)


 ここでの暮らしは主に盗んで食べて寝ての繰り返しだ。幸せか不幸かはラチアにしか分からないが…


 (それでも…。ラチアがいて俺も救われてる。だから弟のことも考えず笑って暮らせてる…このまま。この暮らしが永遠と続けばいいのに)


 永遠なんてモノを信じていないのに俺はそう心の中で呟いた。


 「じゃあマチス!またね!ちゃんとお土産買って来るからー!」

 「はいよー!気をつけてな!リンも」

 「うん。じゃよろしく」


 そう言ってリンとラチアは出かけて行った。

 手をつないで…


 (…はは家族みてぇ…)


 俺はそう思い笑った。本当の家族ではないのにーーー


 * * * *


 夜鳩_管理棟


 「はぁー取り逃しちゃったね…」


 私は管理棟の食堂でパスタを食べながらそう言った。

 急に現れたかと思えば、急に消えたのだ。あれでは捕まえようもない。


 「だな。はぁー。あいつら神出鬼没だからな…。毎回出くわすのはこっちの戦力が手薄の時だ。多分夜鳩全戦力を投入すれば捕まえられるんだろうが、こっちの本業はフィディスだからなー。そうもいかねぇ」

 

 悔しそうにアザーは自身の拳を強く握りしめていた。

 アザーは一週間前にも陽虎と戦っている。なのに捕まえられなか会ったことがよほど悔しいのだろう。


 「はぁー難しいね。…ま。切り替えていこう!今日の昼過ぎからまた依頼でしょ?どこなんだっけ?」

 「そうだな。次の依頼値はレルフィットの街だ」 

 「!」


 アザーがオムライスをスプーンにのせそう告げた。

 その直後、メルロはガタンと大きな音を立てながら勢いよく立ち上がった。

 何かあったのだろうか。


 「ど、どうしたのメルロ?気になることでもあった?」

 「…」

 「…?なんか様子変じゃね?」


 だがメルロは答えない。ただ茫然と頭を押さえ、焦点の合わない目で宙を見つめている。

 急に反応を失ったメルロが心配になり私はメルロの肩をゆする。


 「メルロ!?…ねぇ大丈夫メルロ!?」

 「…っ!…ん…あ…」


 メルロは我に返ったかのように目をぱちくりとさせた。

 

 「良かったー。メルロ?大丈夫?」

 

 私がそう問うとメルロはコクコクと首を縦に振る。

 だが急にどうしたのだろうか。もしかしてさっき話していた忘れていた記憶が関係しているのだろうか。


 (…メルロ…大丈夫だよね?)


 私は不安な気持ちを抱えたまま食事に戻った。


 * * * *


 食事後、依頼地へ向かう準備をするために一旦解散となった。

 だが私は特に準備するものも無いので、先に待機室へ向かうことにしたのだ。ラチャはシェアハウスへ一度帰るアザーとピスに連れてきてもらうようお願いをした。


 ーーそして一人になった空間で私は食事中のことを思い出す。


 (レルフィットの街って聞いた途端、断片的だけど色々な記憶が入ってきた…やっぱりこの記憶は…本物…)


 だがなぜレルフィットの街で反応したのだろう。私の生まれ故郷は東の地の山奥なはずだ。

 レルフィットの街は北の地にある街…関係性があるとは思えない。


 (…でも…これはチャンスかも。だってレルフィットへ行けばもっと思い出せるかもしれない。…過去五年間の記憶を)


 もしかしたらラチャは反対するかもしれない。だけど。それでも私はこの記憶を思い出したい。

 

 (よしっ。思い出せるように頑張ろう…)


 鼻息を荒くし意気込んでいると、待機室のドアが開いた。

 

 「待たせたなメルロ」

 「お待たせー!メルロ!ほら相方持って来たよ!」


 そう言ってピスは私にラチャを差し出す。だがラチャはご立腹だ。


 『ピス!僕のこと物みたいに言うんじゃなーい!』

 「えーいいじゃん。…あ。そうだ。ツァイトが少し遅れそうだから先行ってていいって。アザーは多分もう転移陣の方へ行ってると思う」


 そうピスが言ったので私は手で丸を作る。

 ツァイトさんが時間にルーズなのは前からだ。なのであまり気にしない。


 「じゃあさっそく出発だー!…とその前に。カシア!依頼内容教えて?この前色々あって後になっちゃったしさ。転移陣へ行く途中に教えて欲しい」

 「そうだな。…じゃあ歩きながら伝えよう」


 そうカシアが言ったため私はソファーから立ち上がり、廊下へと出る。

 頭にラチャを乗せ、いつものスタイルにする。


 「…では依頼内容だが。儀式に関係する依頼だ。この街は人を贄として捧げ街を守ってもらうという契約を神と名乗る男にしていたそうだ。今までは逆らえず贄をささげていたらしいが、最近その神の様子がおかしいらしい。力が急に増えたが挙動不審になったり、注意力が散漫になっていたり…そんな今がチャンスだと思って依頼してきたみたいだ」


 カシアは依頼書を読みながらそう告げた。


 「…えーと。じゃあその神って男がフィディスを取り込んでいるかもしれないってこと?」

 「あぁ。そうみたいだ。確定ではないみたいだが、目元が宝石眼になっているという情報があった。…だからフィディスを取り込んでいることは確かだと思う」

 『でも贄って…なんか怖いですね…』

 「そうだね…なんか物騒と言うか…当たり前なのかなこういうのって…」


 ピスも声を唸らせてそう言った。

 当たり前ではないと思うが…私もやや世間知らずなので分からない。

 

 (…でも贄かぁ…私の記憶に関係してることかもしれないのに…)


 これから行く街が少し怖く私はラチャを頭から降ろし、抱きしめた。

 まだラチャはこれから行く街を知らない。

 私もわざと言っていない。


 (騙すような形になってごめんねラチャ。…だけど私は知らなくちゃいけないような気がするから…)


 

 心が少し痛みながらも私はそう決意して、ピス達の後をついていった。


 ーーーーもう後戻りはできない。

 

 


 

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