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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
2章 レルフィットの街

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15/20

1話 消えた過去

明日の投稿はお昼の12時半前後になります

 ワオ ワォーン


 狼の遠吠えが聞こえた。

 狼は子供を食べちゃう。絵本には描かれていた。なので私は食べられてしまうと怖くなって隣に座る母の腕を力強く握った。

 

 「あらメルロ怖いの?ならお母さんとぎゅーってしましょ」


 母はそう言って両手を広げた。


 「うん…」


 私は頷き母の胸へと飛び込んだ。

 母の胸は温かく怖いはずの狼の遠吠えもぜんぜん怖くなかった。


 「お母さんは凄いね。ヒーローみたい」

 「そんなことないわよ」

 「そんなことあるの!ねぇ私もお母さんみたいに強くなれる?ヒーローになれる?」


 私は「きっとなれる」って母が言ってくれると信じてそう聞いた。

 なんとなく言ってもらえれば本当になれる気がしたのだ。だがーー


 「なれないわよ」


 突然母の顔から笑顔が消え、表情が読み取れない顔でそう言った。


 「え?」


 私は驚き、言葉を零す。


 「あんたのせいで…私たちは死んだのよ?なんのために育ててあげたと思っているの?私たちを守るために育てたのに。なのになんで…」


 殺したの?


 先程とは違い冷たい声で目の前の母はそう言った。

 

 .。o○.。o○


 そこで目が覚めた。

 

 「ーーーーッ!!!!」


 私は勢いよくベッドから起き上がった。

 心臓がバクバクとうるさく鳴っている。

 服も汗でびっしょりと濡れていた。


 「っ…」


 勢いよく起き上がったせいで前の戦いの傷が痛む。魔法使いは魔力を纏っているため他種族とは違い治りが早いと言われているが、まだ腕は完全に治っているわけではないのだ。


 (それよりも…あの夢…)


 私が「お母さん」と呼んでいた人物は私の記憶上にある母とは違っていた。

 私の知っている母は焦げ茶色の髪に赤い瞳をしている母だ。だが先程の夢の中の母は茶髪で黒い瞳をしていた。

 さすがに母親を間違えるとは思えない。それに記憶にはないが懐かしい感じがしたのだ。


 (…もしかして私が忘れてる五年間のどこかの記憶…?)


 だが確かめようにも確かめる術はない。ラチャに聞いてもいいが、私が忘れている五年間のことを聞こうとするとやや不機嫌になる。

 何か知っているのだろうが、教えてはくれない。


 (…聴いたとしてもまた、はぐらかされちゃうだろうな…)


 そう思い、隣で気持ちよさそうに寝ているラチャをゆっくりと撫でた。

 ラチャは大切な友人だ。私のことを大切にしてくれるし、守ってくれる。

 たからラチャが私を守るために隠し事をしていることも知っている。

 ーーーだが守られているばかりでは私はずっと弱いままだ。

 どんなに苦しいことでも、悲しいことでも。

 自分の一部なのだから知らなければ前へは進めない。

 

 (でも誰に相談しよう。…あ。もしかしたらピスさんなら相談に乗ってくれるかも…)


 今日は特に予定が無いので、ピスと一緒に研究施設を訪れる予定なのだ。ピスがとてもフィディスに興味を持っていたので、せっかくなら行こうという話になった。

 アザーも面白そうだからついてくるとは言っていたが、聞かれても問題は無いだろう。

 元々ラチャは「僕は今日一日中寝てるから」と言っていたので好都合である。


 (…ってうわ!もうこんな時間早く身支度済ませなきゃ!)


 私は時計を確認して驚いた。後一分で十時になる。シェアハウスのリビングに十時集合なのだ。

 急がなければ遅刻してしまう。寝ているラチャを起こさないように私は急いで準備をした。


 * * * *


 「しっかしメルロが遅刻なんて珍しいなー」


 研究施設に続く道を三人で歩いていたらアザーがそう言った。

 メルロは五分ほど遅刻してリビングへとやって来た。髪もボサボサだったし寝坊したのだろう。

 

 「まぁ誰にだって遅刻くらいあるでしょ。ってかメルロもしかして体調悪い?…気のせい?さっきは眠いからかなって思ってたんだけど…」


 私がそう言うとメルロは首をブンブンと勢いよく横に振った。

 どうやら違うらしい。

 首を振った後メルロは高速でジェスチャーを始めた。今日はラチャがいないので翻訳はアザーがしてくれる。

 私も翻訳なしで読み取れるようになりたいが、まだまだ練習が足りないのだ。


 「んー?あぁ。ちょっと夢見が悪くてだってよ。何か悪い夢でも見たのかよ?」

 「それは大変!メルロ。嫌じゃなかったらどんな夢見たか教えてくれる?相談に乗るよ!」


 カシアから聞いた話だが、夢を見るとそれが現実になったりすることがあるらしい。それなら悩んでる夢の内容を共有した方が対策がとれるのではないか。そう思ったのだ。


 するとメルロはゆっくりと手を動かし、ジェスチャーをする。

 その手は少しだけなんと言おうか迷っているように感じだ。


 「…忘れた記憶の夢を見たかもしれない…?あぁそういやメルロてめぇ、ここへ来る前の五年間の記憶ないんだったっけか?」

 「え?」


 私は急に衝撃な事実を告げられ驚く。メルロも記憶喪失だったのか!?

 私は口を開けて呆然としていると、アザーが「違う違う」と言って話を続ける。


 「別に全部の記憶が消えてるわけじゃねぇよ?十歳から一五歳までの記憶がねぇんだって。だからピスとは少し違うな」

 「そうだったんだ…」


 一時期の記憶が無い。間だけ少し抜けているような感じなのだろうか。


 「それで?あぁ…で夢で自分が母親だって呼んでた知らねぇ女に急に冷たく突き放されて責められたってか…。でもその人に何故か懐かしさも感じた…。うーん懐かしいって感じてるならやっぱ忘れてる五年間の一部じゃねぇの?」

 「私もそう思うな。さすがに知らない人に懐かしさは抱かないだろうし‥。でもメルロはその記憶をどうしたいの?思い出したいの?そのままがいいんなら逆にこれ以上思い出さない方がいいと思うけど」


 私は悩みそう言った。これ以上思い出せば思い出したくないことまで思い出してしまうかもしれない。

 何かのショックで記憶をを失ったのならまたメルロは苦しむことになる。

 苦しむなら…私はわざわざその思い出す必要ないと思う。


 「分かんない?ならラチャにでも相談しろよ…」


 そうアザーが言うとメルロはゆっくりと首を振った。ラチャに言えないことでもあるのだろうか。

 あの二人は信頼しあっているバディという感じだったのだが。


 「ラチャがこの記憶に関係してる気がするから嫌…?はぁ?ラチャとどう関係してるって言うんだよ…」


 アザーは頭を掻いてメルロに言った。


 ーだがなぜラチャに関係していると思うのか。


 私もメルロに問いかけようとした時だった。


 

 「陽虎が研究施設に侵入!!現在研究施設の東に逃走しています!!!繰り返しますーーー!!!」


 急にアラームと共に焦っている女性の声が流れた。

 なんだか初依頼の時を思い出す。

 

 というかーーー


 「陽虎!??ってあの!?こんな真昼間に!?」


 私はアラームより、そのことについて驚く。

 だって真昼間から盗みをすると思わなかったのだ。


 「まじかよっ。って東って俺達のいる方角じゃね?…ピス、メルロ!武器を持て!捕まえんぞ!」


 アザーが急ぎ私たちに指示をする。既にアザーの手には剣が握られていた。サーベルだろうか。

 私も急いで風の精霊ラピスラズリに声を掛ける。


 (ラピスラズリ!緊急事態。力を使いたいんだけど…)


 話しかけた数秒後。すぐに返事があった。


 「マスター?前の戦いから一週間しか経過していませんのよ?やっと薬を飲んで動けるようになったというのにまたベッドへ戻りたいのですか?」


 やや怒っているであろう口調で言われたが、そう言っている場合ではない。

 今は緊急事態なのだ。


 (お願い。じゃあ一発だけさ。…ね?)


 猫撫でな声を出し私はお願いした。


 「…まぁ一発なら…。でも大技は使わないでください。風で銃弾を作るのが精一杯と思ってくださいね?」


 これは妥協してくれたということでいいのだろう。

 「ありがとう」と心に礼を言い、いつでも敵が来てもいいように準備をする。

 アザーも周りの音を収集しているのか目を瞑ってた。


 「…音がするのは…上だな!上だ!レバーを押せば上へ出れる…」


 そう言ってアザーはレバーを押し、室内から屋外へと出た。非常用と書いてあるが今も十分非常事態である。

 アザーに続き、メルロ、私と外へ出る。


 「わっ」


 風が強く私はスカートを押さえる。

 視線を巡らせれば山や、草原が見える。見晴らしがいいなと思ったが今はそれどころではないだろう。

 

 注意深く音を聞き陽虎を探す。すると近くから足音が聞こえた。

 「夜鳩」の職員か?と思ったが、私より先に振り返ったアザーが驚いた表情をしていた。


 「…!あの三人組だ!あれが陽虎だ!追いかけるぞ!」


 アザーが大声で叫んだ。アザーの指さす先には紫のドレスと、黒いブレザー、緑色のワンピースを着た三人組がいた。

 皆同じように仮面をしているため顔はわからない。


 (…あれが!?あれが陽虎…!?って子供までいるの!?)


 三人組の中には一人、十歳くらいの少女がいた。---誘拐だろうか‥?ってそんなことはどうでもいい。

 私は狙いを定め紫のドレスを着た女に向かって呪文を詠唱する。

 とりあえずドレスを着て的が大きい女を狙うことにした。的は大きいほうが狙いやすい。

 

 「ラピスラズリ。ブレット!」


 呪文を詠唱し弾丸を作る。もう少し捻った名前にしたいのだが…思いつかない。


 「フローライト…。リンビット」


 紫のドレスを着た女が冷たい声でそう言い放つと、三人組の目の前に紫色の花が咲き風の弾丸を消し去った。


 「えっ!?精霊種!?」

 

 私は驚く。だが精霊術を使った反動で胸が痛みそれどころではなくなった。

 

 「む…!」


 続けて攻撃すれば花を壊せると思ったのかメルロが私の横で杖を一振りし、白い球体を出現させ花を食べさせた。

 それに続きアザーも攻撃を仕掛ける。

 花に向かって攻撃するかと思ったが、黒いブレザーを着た男にサーベルを振り下ろす。

 だが、男はそれを手で受け止め、足でアザーのお腹を蹴った。そして口を開く。


 「リン!今日は相手にしないって言ってたじゃないですか!撤退しますよ!」

 「…」


 男がそう言うと、リンと呼ばれた女は頷きこの場から一瞬にして三人組の姿は消えた。


 「……え?なんだったの‥‥」


 私は三人組がいなくなった空を唖然として見つめてそう呟いた。

 ラチャは記憶の魔物なので、ピスの記憶もラチャに戻してもらえばいいじゃん!と思いますが、ラチャは記憶を呼び戻すことはできません。(やると廃人になる可能性が大きいので)

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