間話 夜鳩の朝ごはんはスライムパンケーキ…?
明日の投稿は15時半の予定です。二章がスタートします!二章は陽虎とメルロが中心の話です
依頼から六日が経った日の朝
ピリリリッ ピリリリッ ピリリリッ
高いベルの音がして俺は目が覚める。
(まだ眠みぃな……)
今日は依頼が無いためそのまま二度寝してしまおうか。そう思い俺は鳴り響く目覚まし時計のベルを止め、また夢の世界へと旅立つ。…旅立つつもりだったのだが。
「おっはよー!今日は私が作った朝ごはんだよ!みんな起きてー!」
旅立てなかった。うるさい声のせいで完全に目が覚めてしまった。
耳を塞ぎ二度寝を試みるもそれは不可能だった。
二度寝を邪魔されたせいで少しばかり機嫌が悪くなる。朝食を食べずにこのまま部屋でゆっくりしようかと考えたが、どうせ再びピスに朝食の催促をされるだろう。
ならさっさと朝食を済ませ部屋でゆっくりした方がいいだろうと考え、俺は寝間着のまま部屋を出た。
「あ。アザーおはよう!」
ピスが元気よく声を掛けてきた。よく朝からそんな元気が出るなと思った。
『アザーさん。おはようございます』
「…アザーおはよう」
ピスに続きメルロとラチャも挨拶をしてきた。メルロはいつものように軽く頭を下げてきた。本人曰く「おはよう」の意味らしい。
「ん。はよ」
俺にそれに応えダイニングを見る。
ツァイトとピス以外の三人が着替えを済ませ席に座っていた。
ピスはというと寝間着にエプロンをつけパンケーキを焼いている。その横でツァイトが焼き加減などを指示していた。ちなみにツァイトは既に着替えた状態だ。
(こういうところ真面目だよな‥)
自分も着替えた方が良かったかと思ったが人は人。自分は自分である。
それに毎回自分だけが着替えてない朝食なので特に気にしたりしない。
それよりも目の前に置いてある「真っ黒こげの何か」のほうが気になる。形は…パンケーキに似てる気がする。否。パンケーキだったものかもしれない。
「なぁ…これ何。この真っ黒こげ」
一応確認してみる。
『ピスさんが作ったパンケーキだよ…』
なんとも言えない表情をしているメルロの代わりにラチャがそう言った。どうやら俺の予測は当たっていたらしい。まったく嬉しくはないが。
「…今日はツァイトが作る予定だったんだが、ピスがどうしても作りたいと言って。記憶が戻ってから初の調理で不安だったが本人ができると意気込んでいたからな。任せたらこうなったんだ…。任せた俺にも非がある。このパンケーキは俺とピスが食べるから他のみんなは今からできるパンケーキを食べるといい」
そこは自分一人で食べるのかと言うと思ったが、ちゃっかりとピスも入れられていた。まぁ作った張本人なので当たり前だろうが。
「ほんとごめんね!カシアもそれ食べなくていいよ!私が全部食べるからさ!」
「いや。全てを一人では多いだろう。六枚もあるんだぞ?俺も手伝う」
そう言ってカシアは誰も手を付けていなかった焦げたパンケーキにナイフを入れ、八分の一サイズのパンケーキを口に運ぶ。
俺たちはその味が気になりカシアを見守っていたが‥
「……っ…」
カシアは口元を押さえ地面にうずくまる。
とても苦しそうだ。
「カシア!?おいっ大丈夫かよっ!!」
「カシアー!!」
「これ、ピス。パンケーキが焦げてしまうぞ」
「は。はい。ごめんなさい!」
ピスも驚いたのか、キッチンから離れダイニングへ駆け寄ろうとしたが、ツァイトに火元を指摘され、慌てて火の前へ戻る
「あー。水いるか?」
そのまま一言も発しないカシアが心配になり、俺は水の入ったコップを差し出す。
すると無言で受け取り飲み干した。
(だいたいなんでも食べるカシアがこれって…何が入ってたんだこのパンケーキ…)
そうカシアは基本的に好き嫌いしないのだ。
それに多少のゲテモノでも難なく食べるため、そのカシアが黙りこくるのが逆に怖いのだ。
カシアがナイフを入れた所から中身が見えるが、よく分からない粘り気のあるものが混じっているように見えた。
(納豆?いやこの家にはなかったはず…ならなんだ…?)
すると落ち着いたカシアが味の感想を言った。
「……食べられなくはないんだが…。…なんか…その…食感が気持ち悪くて…」
『食感が気持ち悪い?』
パンケーキで食感が気持ち悪いとは何事だと思い俺は黒いパンケーキを再び見た。
「あーやっぱり?スライム入れてみたんだけど…」
そうキッチンから甘い匂いを漂わせたパンケーキを運んでくるピスがそう言った。衝撃発言である。
「ばっ。おまなんでスライムなんてパンケーキに入れんだよっ!」
スライムはそもそも食べる用ではない。害のない魔物のため食べようという発想はない。まぁ面白がって食べる人がいたので売ってるには売っているのだが…。
というか何故スライムが出てきたのか。この周辺にはスライムは生息していなかったはずなのだが。
「だってあったんだもん?冷蔵庫に入れてあったよ。スライムなんでも使えますって書いてある袋にさ…」
「は!?誰がーーあ」
そこまで言って俺は思い出した。
自分がスライムを買ったことに。
(そーだ。面白そうだから今度カシアに試そうと思って買っといたんだった。忘れてた…)
スライムは調理すると何とも言えない気持ち悪い食感になることで有名なので、真面目なカシアに試そうと思っていたのだ。
だが依頼など色々あってすっかり頭から抜け落ちていた。
「…なぁお前今「あ」と言ったか‥?」
「いやー」
しっかりと今の発言をカシアに聞かれていたようで俺は焦る。
内心冷や汗が止まらない。
「し、知らないなー。じゃ俺鍛錬に…」
と言い逃げようと試みたが…
「…ちょっと待ってもらおうか先輩…。話がある。すまないこのパンケーキは俺とアザーが責任もって食べる。だから残しておいてくれ」
無理だった。しっかりと腕を掴まれ逃げ道を塞がれる。
「え‥あ。じゃあ私も食べるから一人二枚食べようか!」
ーーとそんな状況を見ていたピスが能天気に言う。いやもうピス一人で食べてほしいが……そんなこと言ったらカシアがマジギレしてしまうだろう。さすがの俺でも火に油を注ぐ行為はしない。そいうか怖くてできない。
「…じゃあ俺とアザーは少し出かけてくる」
カシアはいつもより一段低いトーンでそう言った。
「ぐえっ…ちょっカシアっ!首しまる!!俺のこと殺す気か!??」
俺を引っ張る力は弱まらず、カシアの腕で首がしまりそうだ。
だが力が弱まる気配はない。相当怒っているようである。
「ちょっ怒るなよ!悪かったって食べさせてさ!もうスライムなんて冷蔵庫に入れておかねぇから!」
そう抗議するがカシアは聞く耳持たず…結局俺の朝食はスライム入りのパンケーキ二枚なのだった(。ピスが焼いた普通のパンケーキは食べさせてもらえなかった)
【アザーとカシアがいなくなった後のリビング】
『そう言えばピスさん。パンケーキ、レシピ見て作らなかったんですか?』
「え?作ったよ?なんで?」
『だってスライムを入れてるから…』
「あー。料理には隠し味?があったほうがいいってレシピに書いてあったから、スライムを入れたんだよ!」
『そうなんですね!納得です!』
ーーとの会話があったとか、なかったとか…
* *
第五パーティーのメンバーの料理の腕前
カシア…基本、何を作らせても美味しい料理が出てくる。
ツァイト…カシア程ではないが料理はできる。
メルロ…揚げる以外の調理なら一通りこなせる。
ピス…レシピ見ればどうにかなる(ただ隠し味を入れたがるので注意が必要)
前のピスはツァイトと同レベルだった。
アザー…焼くだけならどうにかできる。だがそれ以外は一切出来ない。
ラチャ…できない。この者に刃物を握らせれば間違いなく怪我人が出る(本人・周囲も含め)。唯一キッチンへの立ち入りを禁止されている。




