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淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
1章 始まりの旅

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10/21

10話 戦いの行く末は

 「ぐっ…あっ……!」


 私は地面に体を激しく打ちつけた。

 頭を守るように体を縮めていたからか、足が折れたりはしてないようだった。


 (精霊化の状態だと体の強度も多少は上がるのかな)


 とにかく命は助かった。だが動けるかはまた別の問題だ。

 試しに起きあがろうと手に力を入れようとするが、うまく入らなかった。

 おかしいなと思い、もう一度力を入れてみるがやはり入らない。

 どうしよう。このままでは戦いに戻ることができない。

 その時頭の中で声が響く。


 『マスター?もう精霊化にマスターの体が耐えられていませんわ。精霊化を解いて安静にすることをわたくしは勧めます。それにこのまま戦っても死んでしまいますわよ?』


 風の精霊_ラピスラズリは淡々と告げた。

 

 ”死”と聞いて私は怖くなったが、このまま倒れて傍観者でいるのはもう嫌だ。

 カシアだってメルロだって傷を負いながらも戦っている、

 それなのに私だけが一人安静にしていたくない。


 私は視線を右にずらす。

 カシアが薙刀を持って魔犬に立ち向かっている。

 

 それに魔犬の側にいたピネルも短刀を持ち戦いに加わっている。

 メルロは杖を必死に振り応戦しているが、もう余裕がなさそうだ。

 

 ーーそんな仲間を見捨てたくない。


 『そうですか。ですがマスター。仮に動けたとしても、二発が限界だと思いなさい。それ以上は私がいませんわよ』


 二発。それさえあれば十分だろう。


 「分かった。じゃあラピスラズリ!力を貸して!:

 『ふふ。分かりました。ヤンチャなマスターですこと。ですがその勇気に免じてわたくしが応えてあげましょう』


 私は歯を食いしばり、立ち上がる。そして魔犬がいる方へ手をかざして呪文を詠唱した。


 「ラピスラズリ…。…レイザー!」


 * *  * *


 「はぁっはあっ…くっ!」


 俺は振り落とされる魔犬の爪を薙刀で受け止め押し返す。

 もう一回攻撃を仕掛けようと追いかけるが、ピネルの介入に阻まれ叶わない。


 「どいてくれっ!こっちだってお前に怪我を負わせたいわけではない!」

 「それはこっちのセリフ!私たちの計画を邪魔しないで!…サザ!」


 ピネルが叫べばコップが凄い速さで飛んでくる。

 この攻撃は正直言って辛い。最初のうちはメルロが魔法で食べてくれたが、閉じ込められていた時の分もありこれ以上食べることは難しいそうだ。

 それにメルロは閉じ込められていた時の傷が俺より深い。

 もう無理をさせたくない。

 だからピスが頼りなんだが…。


 (‥‥)


 目だけ動かしピスの方を見るが、倒れていてびくともしない。もしかしたら気を失っているのかもしれない。

 

 (ピスも動けないとなると完全に動けるのは俺とラチャだけ…。…俺がみんなを守るしかない)


 俺は薙刀を握る力を強め、敵に刃を振るった。


 「…っ!はぁっ!」

 「っ!」

 

 ピネルの持っていた小刀は遠くへ飛んでいき、尻もちをつく。

 それと同時に俺は何十個も来るコップを叩き落す。だが全ては落とせず俺のすぐ近くまで迫ってくる。

 ーーだがこれが作戦だ。


 俺はコップを踏み台にし、魔犬へと近づく。

 その間にも魔犬はどんどんとコップを俺に向けて放ってくる。

 

 足元に来たものは土台にするが、顔面や腹目掛けてくるものは薙刀で迎え撃つ。

 

 「グアアッ!」 


 魔犬に近づいてきたとき魔犬が鋭く牙を見せ、爪を振るった。

 今度こそ致命傷をと思い俺も薙刀を振るうだが傷のせいで、軸足が踏ん張れず少し体勢が崩れた。


 「っ!!」

 

 魔犬の爪がもう目と鼻の先にある。直撃する…せめて受け身だけでもと思い体勢を整えようとした瞬間



 「「ラピスラズリ…。…レイザー!」


 とピスの声が響く。目を見開くと魔犬の体が風の刃で傷だらけになっていた。

 ピスの精霊術だ。「助かった」そう声を上げようとしたが、それよりも先に血を吐くような苦悶の音が聞こえた。


 「ガハッ…ゴホッ・・・・ッ」


 ピスは口に手を当て苦しそうに息をしていた。

 だがまだ行けると言わんばかりに、こちらへ近づいてきて魔犬に指先を向けて詠唱をした。


 「最後だよラピスラズリ!…ソード!」


 ピスは大声で叫ぶ。次の瞬間見えない剣が魔犬を刺していく。

 見えないが魔犬が初めて悲鳴じみた叫び声を上げた。そして魔犬の背から血が噴き出た。


 「カシア!メルロ!…私はもう力が出せない。このまま…追い‥‥こ…んで」


 ピスは途切れ途切れの言葉を紡ぎ地面へと倒れた。

 俺はその言葉に返事をしメルロを見る。


 「メルロ!俺がこのまま攻撃を続ける!食べなくていいから動かないよう固定を頼む!」

 『分かりました!【食べる魔法(セイヴァー)!!!』


 メルロは左手に赤い杖を掲げ詠唱する。

 すると通常時よりも二回り大きい白い球体が現れ魔犬の背にのしかかる。

 いつもは軽そうな見た目なのだが魔力の込め方が違うのか、ずっしりと重りのようになっていた。

 

 「助かったメルロ!…はぁっ!」


 俺は薙刀で魔犬の前足を突いた。


 「ギュアアァァ」


 魔犬は悲痛な声を上げる。だがここで同情してしまえば全滅する。

 俺は薙刀を引き抜き、地面を蹴った。

 

 宙へ舞えば俺たちが閉じ込められた大きさのコップが襲う。


 『【食べる魔法(セイヴァー)!!カシアさんコップは引き受けます!!』


 胃付近を押さえながらメルロは言った。

 

 だが次々にコップは増える。五…六‥七‥狙いを定めず色々な場所へ飛んでいく。

 メルロに対処しきれるだろうか。…いやそれは愚問だ。

 だってメルロは俺が知る中で一番負けず嫌いな魔法使いだから。


 『【食べる魔法(セイヴァー)…リバース!』


 そう言ってメルロは真剣な表情で杖を掲げた。


 『今までのお返しです』

 

 と言って杖を振り下ろす。

 すると白い球体から次々とコップが発射される。

 今までメルロが吸収したコップたちである。あの魔法の欠点として胃が変な感じになると言っていた。


 ーーコップは魔犬に当たり、魔犬はよろけた。


 俺は魔犬がよろけたと同時に地面へと落ちる。そして鋭く回転をつけ薙刀を振り下ろす。


 「‥‥じゃあな」


 そう言って。

 斬り落としては意味が無いので魔犬の後頭部から尻尾にかけての背中を真っ二つに斬り裂いた。


 「グァァアアア」 


 と魔犬は叫び地面に横たわった。

 ピネルは地面に臥せっていたが、魔犬が横たわって数分したのち魔犬の傍へと駆け寄った。


 ー戦う意思はあるかと聞いたが


 ないと答えた。

 


 ‥‥よって俺達の勝利である。 



 :

 :


 少し時間が経った頃、俺はフィディスを吐き出す術式が描いてある正方形の紙を取り出した。


 そして魔犬に貼ろうとしたときラチャに声を掛けられた。


 『貼るの少し待ってくれませんか?』

 「何か理由があるのか?」


 俺は問う。

 するとメルロに体を支えられたピスが口を開いた。


 「その魔犬とピネルの事情を聞きたくて‥なんでこんなことをしたのかとか。…フィディスを吐き出させたら魔犬は死んじゃうでしょ…?」

 「あぁ」

 「だから…魔犬の記憶をラチャに見てもらいたい…」

 

 ピスはそう言った。このまま二人を離れ離れにしたくないらしい。

 

 『僕はピスの案に賛成だ。何か訳ありそうだしな』


 どうやらラチャの承諾は取ってあるらしい。

 なら俺が却下する理由はないだろう。


 「分かった。ラチャ頼む」

 『分かった!任せとけ!』


 ラチャは自信満々に胸(?)を叩き魔犬の傍に行った。


 「…!サザに何をする気!?」


 ピネルは殺気立ってそう言った。どうやら魔犬にとどめを刺すと思ったようだ。


 『ちょっと記憶を見させてもらうだけだよ。こいつの。…なぁメルロ。記憶をメルロにも送り込むから心を読んでくれないか?魔犬…元魔法使いならテレパシーも使えるだろ』

 

 ラチャがそう言えばメルロは頷いた。

 そのためピスを俺に預けメルロはラチャの傍へ駆け寄る。


 『んじゃ始めるぞ?…記憶(レミニセンス)


 .。o○.。o○.。o○


 記憶は全て見れるわけではない。あくまでも断片しか読み取れない。それもとても大事にしている思いでしか。


 

 ーー森の入り口を散策していたら綺麗な歌声が聞こえた。声のする方に行ってみれば人間の女の子に会った。名前はピネル。

 石鹸のいい匂いがした服を着ていて、とてもハキハキと喋る子だった。人間はいつも僕達_魔法使いとは話してくれないけれど、この子は話してくれた。

 とてもやさしい声色で。


 .。o○.。o○


 ーー「サザ!すっごい!面白い魔法だね!」そう言って僕を褒める明るい声。 

 僕はピネルに会うたびに魔法を見せていた。祖父から貰った銀色の杖を振り、コップを生み出したり動かす。

 一見すると地味な魔法だけどピネルは目を輝かせて僕の魔法を褒めてくれた。

 なんとなく研究し始めた魔法を褒めてもらえて僕は嬉しかった。


 .。o○.。o○


 ーー今日もいつもと同じようにピネルに魔法を見せていたら人間の大人に見つかった。僕はピネルに危害を加えようとしてるって言われて人間の大人たちから暴力を振るわれた。

 「みんなやめて!!やめてったら」ピネルがそう言って泣き叫ぶ。

 「大丈夫だよ。僕は平気だよ」って言いたかったけど、僕の声はピネルに届かない。

 あぁ痛い。僕はこのまま死ぬのかなぁ。嫌だな。もっとピネルと一緒に遊んでいたい。

 だけどもう手足の感覚が無い。もう手遅れかも‥。


 .。o○.。o○


 ーー手遅れじゃなかったみたいだ。何故か知らないが生きていた。

 またこれでピネルと一緒に居られる。嬉しくて僕はピネルに抱き着いた。

 ピネルは今にも泣きそうな表情で僕を見ていた。…ねぇピネルどうしてそんな悲しい表情をしているの?


 .。o○.。o○


 ーーなんだか苦しい。気持ち悪い。僕はそんな苦しさから逃れたくて魔法を放つ。

 誰かが叫んでるかもしれないけど‥もう分からないや。

 ピネル。どこにいるの?…ピネル。また一緒に遊ぼう。いつもみたいに笑ってよ。 


 そうしたら僕も嬉しい。悲しい顔しないで‥ピネル。


 .。o○.。o○


 ラチャがそう言って言葉を伝えたと同時‥メルロの目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

 

Qなぜカシアは身体強化使わないのー?と思うでしょうが一章終わる前にピスがツッコみます。


明日の更新はお昼の十二時半前後を予定しています。

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