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8、哀れな結末のゆくすえ

おはようございます、こんにちは、こんばんは

お越しいただきありがとうございます。ちょっとシリアスな展開です。

昨日は更新出来ずすみません!!本年度もよろしくお願いいたします!

 ガイルとミリアンにアイリスが失踪したとの知らせが届いた。バルザックを心配した二人は屋敷に駆けつける。するとそこには、首をもたげて動かないバルザックがいる。声をかけるのをためらっていると、人の気配に気づいたのか、不意に顔を上げる。その表情には何も映していないように感じられた。バルザックは二人に気がつくと、虚ろな瞳で見つめ返す。そこで発せられた言葉は、信じられないものだった。


「イリィが死んじゃった――」

「嘘だろ!?」

「嘘でしょ!?」


 バルザックは涙が入り混じる声色でまくしたてる。


「本当だよ。イリィ付きのメイドに聞いたんだ。僕が幸せになる姿を見たくないから屋敷を抜け出したって。それで事故にあったみたい。イリィは僕のこと好きだったんだって」

「なんてことなの。それじゃあわたしたちがしたことって……」


(ただ二人を苦しめただけじゃない)


 これ以上は口にすることが出来ない。そしてガイルとミリアンは目線を合わせると頷き合った。


「そうだな……実はバルに謝らなければならないことがあるんだ。バルはアイリスちゃんと実の兄妹だと思っているかもしれない。だが血はつながっていないんだ」

「えっ」


 信じられない言葉に、バルザックは一瞬、自分の周りだけが暗闇に閉ざされたかのように静かに感じた。そして拒絶を示すように肩が微かに揺れる。


「仲が悪かったのもあって、混乱を避けるためにこのことは黙っておくよう言われてた。親に口止めされていたとはいえ、今まで何も言えずすまない」


 これ以上隠しておくのが無意味になり、ガイルは真実を打ち明ける。理由が理由なだけに、バルザックは正気を保てなくなった。


「ははっ――じゃあ僕が……僕がイリィを死に追いやったんだね」


 こぼれた言葉には狂気が宿っている。


「それは違う」

「私もバルのせいじゃないと思う。だって事故は偶然起きるもので、誰にも予想つかないじゃない」

「どうして? どうしてそう言い切れるのさ……」

「なぁバル。落ち着けって」


 二人がどれだけ否定しても、バルザックの心に響かない。


「落ち着けるわけないよ! 考えてもみなよ。僕がミリアンとの結婚を思いつかなければ、イリィが屋敷を抜け出すことなんてしなかったでしょう。そうすれば事故にだって合わなかったよね」

「そんなの分からないよ。例え結果的にそうだったとしても、バルのせいじゃない。事故を起こした人が悪いのよ……だから自分を責めるなんて間違ってる。それでもバルは自分のせいだって思うの? それなら寧ろわたしのせいでもあるじゃない」


 バルザックとミリアンの言葉が、段々と熱を帯びてくる。


「ミリアンのせいじゃない」

「そんなことないよ。だって……だってわたし提案を断らなかったんだよ。少なくともその時は、自分の幸せしか考えてなかった」


 終わりのない言い合いに、すかさずガイルが割って入る。


「もうやめてくれ! 言い合いしたって仕方ないだろ。起こっちまったもんは取り返しがつかないんだから。それより他にするべきことがあるはずなんだよ。とにかく俺らは、絶対にアイリスちゃんを忘れないことだ。これは絶対に守らないといけない。それがせめてもの償いなんだ」


 諭すような言葉でバルザックは少し落ち着きを取り戻す。けれど悔しさと悲しさは止めることは出来ない。いつの間にか三人は声を出して泣いた。やり場のない怒りで、握りしめた手のひら。机をたたいてもあまり痛さを感じない。涙と鼻水で顔がふやけようとも、まぶたが腫れ上がることもいとわずに……。


 そしてミリアンはアイリスの死と言う結末に、自分だけが幸せになることは出来ないと考える。だから本来結ぶはずの縁談を取り下げるつもりでいた。けれどそんな思いとは裏腹に、ある日バルザックが屋敷を訪ねて来た。


「ねぇミリアン。予定通り僕と結婚してくれる?」


 何故結婚したいと言うのか分からない。


「でっでも……それじゃあ私」


「うんん違うんだ。ミリアンにしか頼めないことがあるんだよ。僕はこの先もイリィ以外愛せない。ずっと側にいたいんだ」

「えっ……どういうこと?」


 バルザックの言動は理解出来ない。アイリスはもういない。ずっと側にいることには無理がある。


「イリィがね、戻ってきたんだよ。一人じゃかわいそうだから。僕がついててあげないとでしょ」

「何言っているの!? ついてるも何も、もう――」


 これ以上は口が裂けても言えない。口にしてしまえば、バルザックがおかしくなる可能性があるからだ。しかしバルザックは予想外の言葉を口にする。


「感情はどこかへ消えてしまったけれど、体は無事だったんだ」


 ()()()()()()()。ミリアンの頭にこの言葉がこだまする。そんなはずはない。聞いた話では、至るところ傷だらけであった。しかし高額な料金を払い、魔法で体を修復させたのだ。


「そう……良かったね」


 あまりにも嬉しそうに言うものだから、そう返すのがやっとだった。ミリアンは触れてはいけない事柄だと悟る。母親からの知らせで、所持品で身元が分かるくらいの状態だったと知っている。その事実を改めて言うべきではない。



 それから月日は流れ、予定通りに婚姻を結ぶこととなる。アイリスが亡くなっている以上、盛大な式にはならなかった。両親とバルザックの望みで。


 その日の夜バルザックはミリアンに告げた。


「ミリアン僕のわがままに付き合ってくれてありがとう」

「うんんいいの。バルが幸せならそれでいい」

「子供が生まれても父親らしいことはしてあげられない」


 遠回しに愛することはないと言っているようなものだ。けれどミリアンは納得している。好きな人と一緒になれるのは嬉しい反面、巻き込んでしまった罪悪感はある。だからこそ彼と必要以上に関わらないと決めている。これが軽率に承諾してしまったミリアンの罪だ。


「うん。大丈夫よ! 心配しなくても立派に育てるから」


 世継ぎを作る関係上、義務は果たす必要がある。ミリアンの相手はバルザックではないが。表面上は恋愛結婚である。しかし二人の関係性は、仲のいい幼馴染から抜け出すことはい。周りはバルザックを献身的に支えるミリアンの姿を見て、疑うことはなかった。そしてバルザックは早々に父から当主の座を引き継ぐこととなる。両親は最愛の娘の死を受け入れることが出来ず、隠居生活を送ることに決めたのだ。


 バルザックは屋敷から両親が去ると、密かにアイリス専用の部屋を作り、その亡骸を囲う奇行に走った。その後無事にミリアンは使用人との間に息子をもうける。運良くミリアンの容姿を色濃く受け継いだため、疑われることはなかった。これが子供の真実だ。

最後までお読みいただきありがとうございます。


我ながらとんでもない展開になりました……。バルザックをおかしくさせたいと思ってしまった末路です。


また明日会えたら嬉しく思います。

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