7、幼馴染との計略的な縁談
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ある日バルザックはガイルとミリアンに秘密を打ち明ける。
「ねぇ! 僕二人に相談があるんだけど……」
「何?」
「どうしたの?」
急にかしこまったような言動に、二人は身構える。
「実は僕、アイリスのことが好きなんだ。一人の女性として……妹に恋なんてどうかしてるよね」
テーブルに肘をつき、頭を抱えて座るバルザックには、二人がどのような表情をしているかなんて見えていない。少し沈黙が流れる。何も反応がないことに、バルザックは耐え切れず、勢い良く顔を上げる。
「二人とも何か言ってよ――ってどうして二人が傷ついたような顔してるの」
「おっおう……あまりにもバルが落ち込んでるから、どう声を掛けたらいいかわからなくてな」
ガイルはバルザックがアイリスのことを、本当はどう思っていたのか知っている。アイリスの思いは分からないけれど。本音は応援したい。だけど血のつながりがないことは口止めされている。とてももどかしい。
「そうね……わたしも、好きになってはいけない人に恋してるから……なんかバルの気持ち分かる」
ミリアンの思わぬ告白に、二人は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。
「「はあっ!?」」
失言に気づいたミリアンは、気まずそうに視線をそらす。
「あっ……ごめん――バルが真剣に悩んでるのに。でもさ仕方ないよね! 好きになっちゃったんだもん。思うだけなら、誰にも迷惑かけないし。自由でいいんじゃないかな……はぁ」
なんとも言えない重たい空気が流れる。先に口を開いたのはバルザックだった。
「ねぇ……ミリアンの好きな人って、妻子持ちの人だったりするの?」
「うんん……うちの使用人なの。ずっとわたしの側に仕えてる人」
「まさかお前――あいつか!?」
ガイルには見当がついたようである。驚愕の表情を浮かべている。
「うん……多分兄様が思い浮かべた人。でもわたしの片思いよ」
「いや……あいつは! って今言うことじゃないな」
ガイルは何かを知っているような口ぶりだ。
「待って。その話詳しく聞かせてほしいんだけど」
バルザックの言葉に、口を閉じたり開けたりする。だが渋々話しを始める。
「いやーなんていうか、確証はないんだが……。そいつに結婚しないのかって聞いたことあるんだよ。そしたらよ「お嬢様に身も心も捧げておりますので、一生お仕えさせていただく所存でございます」とか言ってよ。惚れてんのかなとか思ったわけよ。そもそも俺らより少し年上なのに結婚の話一切出ないし。何となく思っただけだ」
ミリアンの顔は熟れたトマトのように赤くなる。その一方で話を聞いたバルザックは、突拍子もないことを言い出す。
「そうなんだぁ。ならさっミリアンと僕が結婚するのはどうかな。使用人の彼も連れて、離れで暮らしてもらうんだよ」
「どうかなって。どう考えてもおかしくないか。世継ぎの問題もあるだろ」
ガイルは気遣うように声をかける。
「どの道諦めないといけないから。ちょうどいいと思ったんだぁ。要するに隠れ蓑にするんだよ。子供はミリアンと使用人の彼に作ってもらってさ」
「バルはそれでいいのか」
「もちろんだよ。それが一番だと思うんだ。もし他に方法あるなら教えて? どうせ婚姻を結ぶなら、知らない令嬢とより幾分気が楽だよ。医者には記憶が戻らない確率は50%だと言われているからね。思い出した時のことを考えると、ミリアンなら動揺も少ない」
「ちょっと待て。それって50%は記憶が戻る可能性があるってことだろ」
ガイルは思わず言葉を遮る。思い出した時の動揺が少ないわけがない。しかし今のバルザックには見当もつかない。だから何が言いたいのか伝わらない。話せることは限られているのだから。
「そうだよ。何当たり前のこと言ってるのさ。そんな焦ったような声出して。ガイルが心配するようなことはないから安心して。それよりもミリアンの意見が聞きたいかな」
返す言葉がない。ガイルは今にもバルザックが忘れている秘密を言いたい衝動に駆られる。それでも口を閉ざす。
「ねぇバル。それだとわたしだけ、いい思いしてるように感じるんだけど」
「そんなことないよ。しばらくは一緒に暮らす必要はあるけどね。子ができたら別居してさ。僕たちの子供だって言えばいい話でしょう。そうすれば丸く収まるよ。僕はアイリス以外考えられないから。ミリアンとの子を作るつもりはないし。ミリアンさえ良ければだけどね」
ミリアンはすぐにでも同意したい気持ちはある。だが、ガイルの言う話が事実であるとは言い切れない。
「でっでも、彼が同意してくれるかわからないから」
不安そうな目でガイルをちらりと見る。しかしどこか上の空で、何も言葉を発しない。
「でもさ。ミリアンの場合は僕と違って、身分差が問題なだけだし。同意を得られなかったらその時考えればいいし。まぁ僕も直ぐに忘れられるかわからないけどね。でも本格的に後を継げば忙しくなるだろうしさぁ。余裕がなくなれば、自然とアイリスのことを考えなくなるかなって。どう?」
「わたしは……出来るなら、彼と一緒にいたい」
「なら決まりだね!」
こうしてバルザックの元へ、縁談が申し込まれることになったのだ。バルザックからの申し込みにしなかったのは、断られる可能性を考えてのこと。男親は娘には甘い。「娘はやらん」などと言われてしまえば、計画は破綻する。逆でも同じことになる可能性はあるが、確率的に低いと判断したのだ。まさかこの判断がアイリスの命を永遠に奪うことになろうとは知る由もなかった。
これで全て上手く行く。バルザックには確信があった。けれど縁談を受けた数日後最悪な結末を迎えることになる。バルザックは絶望の淵に立たされたのだ。
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今年最後の投稿です。来年は沢山の作品を投稿したいと思っております。今年は色々とくすぶっていましたので。色々な構想はありますが、形になるまでの道のりが長くて……。読んでくださる方がいると思うと、それだけで嬉しいです。今は例え少なくても。欲を言えばもっと……ですが、コツコツと続けていけばいつかは実を結ぶと信じています。明らかに場数が足りないですし、力量不足感は否めませんが。葛藤しながらも人は成長していくものなので、見守っていただけたら嬉しいです。
明日は投稿出来るか分かりません。するとしても夜遅い時間になるかもです。
また次のお話でお会いしましょう!




