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1、物語の記憶①

おはようございます、こんにちは、こんばんは

お越しいただきありがとうございます。読みにくかったらごめんなさい。


今回の作品は、ヤンデレっぽい感じなものを書いてみたくなり出来た作品です。


どうぞよろしくお願いいたします。

 アイリスの前世は、家族や友達に恵まれず孤独だった。そんな時に沢山の漫画に出会う。この世界の物語は、何故だか不思議とよく憶えている。それ以外は、断片的にしか覚えていない。「ようやく自分の居場所を見つけられた」という思いは強く残っているのだ。


(どうして前世よりも物語の方を憶えているんだろう。印象的な話ではあるけれど)


 この物語は、バルザックが妹のアイリスを池へ突き落とすところから始まる。ところがアイリスに服の一部をつかまれ、互いに池へ落ち記憶を失う。そしてアイリスに惹かれていく。だがバルザックは、跡継ぎのことを考える必要があった。想いを諦められなくなる前に結婚を思いつき、気心の知れた幼馴染と婚約をする。


 その直後にアイリスが不慮の事故で亡くなるのだ。そこでバルザックは真実を知る。アイリスと血縁関係がなかったこと。そしてアイリスもバルザックが好きだったことを。その後のバルザックは予定通りに婚姻を結んだものの、心が崩壊。アイリスに囚われて亡骸を生涯大事に囲っていた――。というのが大まかな内容。狂った愛の形が描かれていた。


(よりによって死ぬ運命のアイリスに転生するなんて……。とはいえ、これまでの記憶があるのよねぇ。それにしても、アイリスを突き落としたくなるぐらいの兄妹仲って一体何したんだろう)


 アイリスの記憶は少しずつ馴染んでいく。ただ、物語と現実の区別がなんとなく曖昧なのだ。無意識のうちに感情移入しすぎてしまったのだろうか。海の中を漂っているような、ふわふわした感覚に陥っている。


 今日起こった始まりの物語。題して『兄妹転落記憶喪失事件』。何とも禍々しい名前だ。幸か不幸かアイリスは憶えている。多少の違いはあれど、それがやはり物語通りの展開だと告げている。


(これって二人とも記憶喪失にする必要あったのかな)


 たいてい記憶喪失ものはどちらか片方だけというのがお約束。


 このまま何もしなければ、物語通りバルザックはアイリスに恋をする。そして、アイリスの死がきっかけで狂う。アイリスは今世で死ぬつもりはない。もしそうだとして絶対に狂わないと言えるのか。きっかけなどいくらでも転がっている。


 狂った愛は物語だから楽しめるもので、実際に向けられるとなると、考えるだけで悪寒が走る。今のところバルザックはアイリスを実の妹と思っているはずだ。何故悲恋の物語なんて読もうと思ったのか。疑問は残る。この問題さえクリアできれば、いやな結末は回避出来るはず。


「お嬢様? お嬢様!」

「うん?」

 

 考えることが多すぎて、呼ばれたことに気づいていない。


「……何度もお呼びしましたのに! とにかくお嬢様がお目覚めになられたことを、旦那様と奥様にお伝えしてまいりますね」


 マーリーはひと言伝え、足早に出て行く。アイリスは心の中で謝った。そして思い返す。


 これまでの記憶を忘れているなら、初対面の異性にほかならない。兄妹だと言われても、実感はわかない。だからだろうか。想像してみる。そこで突然見知らぬ異性が目の前に現れて、四六時中一緒に過ごすようになったらと。そして優しくされたなら好きになる可能性があることを。『こんな形で出会いたくなかった』と考えるのは自然なことだと。


 結ばれないと分かっていても、側にいたい。思うだけは自由なのだから。現実を目の当たりにし、追い詰められて逃げる。この選択は仕方ないことなのだ。不意にアイリスの心に切ない気持ちが響く。バルザックに拒絶されて胸がよじれる思いが込み上げてきた。


(何だか上手く呼吸が出来ないわ。どうして?)


 これは転生前のアイリスの記憶。好きでいることさえ許されないのだと言われているようだ。本気でバルザックのことが好きだった。かと言って今のアイリスが、バルザックと幸せになる未来を想像しなかったと言えば噓になる。狂わない確証が持てたとしてもそう単純な話ではない。バルザックはとても不憫である。真実を知らない方が幸せなこともある。だから幼馴染との幸せを願うほかない。気づかぬうちに、アイリスの頬は濡れていた。


「お嬢様! もしかしてどこが痛みますか」

「えっ?」

「泣いてらっしゃるので」


 マーリーがいつの間にか戻ってきていた。


「いいえ、大丈夫よ。ただ目に少しゴミが入っただけなの。タオルをもらえる?」


 なんとか誤魔化す。マーリーの表情は怪しいと言いたげなのだが。


(何なのこれ。まるで疑似体験しているみたい)


 胸を鷲掴みにされたよう。そのことを悟られないように平気なふりをした。


 思い出す限りバルザックは、アイリスのことを思ったまま、子孫を残すためと婚姻を結んだ。場合によっては独身を貫き、養子を迎えることも出来たはず。そこでとある考えに辿り着く。最愛のアイリスを死に追いやったのはアイリス自身であると。認めた途端、心が乱気流にのみ込まれていく。悔しさ、怒り。何もかもどうでもよくなる。


(バルザックが責任を感じることなんて、どこにもないはずなのに。本当にバカなアイリス)


 そのような状態で婚姻を結んだからだろう、円満とはいかない。跡継ぎになる子供が生まれても、妻や子に愛情が注がれることもない。


 屋敷には特別な部屋があったと語られている。アイリスの亡骸が綺麗なまま眠っている場所。愛の矢印は、最後までアイリスにのみ向けられていた。


(アイリスが生きていたら、どうなっていたのかな)


 今は余計なことを考えてる暇はない。あり得ない展開。不幸な道のり。元凶はバルザックがアイリスに恋をしてしまうこと。幸せな生涯を過ごせるはずが、狂わせたのはアイリスだ。だから未来を知るアイリスは考える。


(これってアイリスに責任があるじゃない)


 どの道義理とはいえ兄妹だ。この世界の婚姻事情は分からないが認められるとは限らない。それならいっそのこと、深く関わらないことだ。ただ事実として、アイリスは前世で愛を得られなかった。では何故この物語が選ばれたのだろうか。はっきり憶えているのは、この物語だけなのが引っ掛かる。あとは前世の欠片がほとんど拾えない。愛の物語など沢山あったはずなのにだ。


(人生を生き直すには丁度いいのかな。お兄様との関係はこれから始まるもの)


 少し思考を巡らす。一途な愛の形を表している。と言えば聞こえはいい。バルザックは果たして本当に幸せだったのだろうか。たどり着いた答えは、誰も幸せになっていないのではというもの。そこで脳裏に、誰かの声がよぎる。


「愛されてこそ幸せになれる――か」


 無意識に口からこぼれ落ちる。


「何かおっしゃいましたか」

「うんん。何でもない」


 相変わらずマーリーは、疑いの目を向ける。誰の言葉だったかは思い出せない。それを聞いたとき、首がもげるほどに頷いた。人は愛されたい生き物なのだから。こんな結末では、バルザックと婚姻を結ぶ幼馴染がかわいそう。兄夫婦の元へ生まれてくる子供のためにも、アイリスは自分の幸せを見つけるべきなのだ。生まれるべき子供をなかったことには出来ない。問題が起きなければ幸せな生活が待っていたのかもしれないのに。


「そうですか……もし何かありましたらおっしゃってください」

「えぇありがとう」


 一途さは切なくも美しい。そう思わせる最期だった。けれど現実では怖い。だから思う。バルザックが家族三人で笑う姿を見届けたいと。その傍らで、アイリス自身も愛し愛される幸せを手に入れたい。その為には、協力者が必要になる。その人物にはマーリーになってもらいたいと思う。そんな思考を巡らせている時だった。寒くもないのに背筋がゾワッとした。身震いをして、腕をさする。


「お嬢様! もしかして風邪でもひかれたのですか」


 マーリーの言葉に少し肩がピクリと動く。まるで一挙一動を見逃すつもりはないと言われているようだ。


「――違うの。急に起き上がったせいかなぁ。少し寒さを感じただけ」

「そうでしたか。では念のため温かい飲み物をご用意いたしますね」

「えぇありがとう」


 アイリスは、バルザックのことを心底嫌っていたわけではない。胸の奥に残る感情がある。それは池へ落ちる直前。バルザックに対する切なさと寂しさ、そして恐怖心だ。心がざらつく。


 バルザックの態度は冷たかった。庭でお茶を飲んでいるだけなのに、迷惑そうな目を向けられていたのだ。二度とあんなに冷たい目で見られるのは嫌だ。そこでふと思い出す。ブローチの存在だ。部屋の中を見渡しても見当たらない。


「ねぇマーリー。お兄様も池へ落ちたと言っていたよね」

「はい! バルザック様がお嬢様をつきぉ……」

「うん?」


 何か不穏な言葉が聞こえた気がした。


「いえ! お嬢様につきあって、一緒に落ちられたのです」

「つきあってっておかしなこと言うのね。まぁいいわ。近くにブローチは落ちてなかったかしら。昔お兄様にプレゼントしたものなんだけど」


 明らかに別の言葉を口にしようとした。けれど誤魔化しきれていない。それでも何事もなかったかのように会話は続けられていく。


「あぁ赤味がキレイなルビー色のブローチですよね。お嬢様の瞳にそっくりでとっても美しかったですよね。それでしたら、バルザック様の元にございますよ!」

「えっ……」


 アイリスは驚きを隠せない。


「もしかして何か問題でもありましたか」

「そんなことないの。ただ一緒に池へ落ちたような気がしたから、どうなったのかと思っただけよ」


 池へ落ちたのは間違いない。けれど目が覚めたタイミングでは、アイリスの手元にあるはずなのだ。そもそも記憶喪失になっていない時点で、物語とはズレている可能性がある。それよりも気にするべきなのは、ブローチの色味だ。初めて目にしたときは、赤味がキレイなルビー色をしていた。しかし今のタイミングは、少し黒味をおびていたはず。


(おかしいわね。見間違え? 記憶違い? とりあえず直接この目で見る必要がありそうだわ)


 あのブローチには何か秘密があるような気がする。アイリスが最後に見たブローチの色は黒ずんでいた。物語が進むにつれて徐々に黒くなっていったのだ。黒くなる原因は分からない。そう考えていた時、再び背筋がゾワリとする。嫌な予感がする。いや――おそらく大丈夫だ。物語は始まったばかりなのだから。

最後までお読みいただきありがとうございます。


今日はクリスマスですね。クリスマスと言えば何を思い浮かべるでしょうか。私は毎年思い出す苦い経験があります。それは学生の頃のことです。学校の行事でクリスマス会を開いたんです。プレゼント交換をすることになって、当日準備しました。そして順番にプレゼントが回って来ます。すると、何と自分が用意したプレゼントが自分に回ってきたんです! 思わず「私のだ」とつぶやきました。そしたら隣の子が交換してくれたのです。その子には感謝しかありません。。きっと心の中で「自分のが回って来たらどうしよう」と思ってたんだと思います。「おかえり」と言えるメンタルは持ち合わせていませんでしたから。これはおそらく引き寄せの力ですね。


本編とは全く関係ない話をしてしまいすいません。また次の話も読んでくれたら嬉しいです。似たような話が続きますが、その次の回から動き出す感じになります。

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