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番外編:バレンタイン〜後編〜

おはようございます、こんにちは、こんばんは


お越しいただきありがとうございます。後編です。

よろしくお願いいたします。

 バレンタイン当日の朝を迎える。早々にミリアンの屋敷へお邪魔した。バルザックにはマーリーと街へ出かけると伝えて。お土産を買ってくる約束もして。これで怪しまれないはずなのだ。


 嘘をつくのは心が痛む。それでも驚かせたい。

 そうして作り終え帰路に着いた。上手に出来たと顔をほころばせながら……。しかしそんなアイリスを待っていたのは、目の笑っていないバルザックだった。


「やぁイリィ随分と帰りが遅いようだね」

「えっと……マーリーとの買い物に夢中になってしまって、時間を忘れていたの。遅くなってごめんなさい」


 チョコレートを渡すシチュエーションを考えていたのだ。ああでもないこうでもないと楽しくなり、ミリアンとの会話に花を咲かせて。時間があっという間に過ぎていた。


「本当かい? おかしいなぁ。ガイルが屋敷でイリィを見かけたって言っているんだけど」

「えっ?」


 思いがけず目が泳ぐ。


(不在だと聞いていたのに、いたの!? まさか見られていたなんて)


「もしかして僕に隠れてガイルと会っていたのかい? 悪い子だね」

「ちっ違っ!! ガイル様とは会っていません」

「疑わしいなぁ。嘘ついてたら僕、何するか分からないよ? イリィのこと信じてたのに。それより僕の前であいつの名前出さないでくれるかなぁ」


 (何が正解なの? どうすればいいの)


 バルザックがゆっくりゆっくりと近づいてくる。アイリスの心臓は、太鼓にでも成り代わってしまったかのように大きく響く。この際渡すシチュエーションなんてどうでもいい。


「本当に会ってないの。実は今日ミリアン様に誘われて、チョコレートを作りに行っていたの」

「チョコレート?」


 バルザックがあと数センチと迫ったところで歩みを止める。首をかしげるあたり噂を知らないようだ。


「うん。西の国ではバレンタインと言って、恋人や家族にチョコレートを贈るの。それでね大切な方には手作りがいいと聞いたの。だからバクに贈りたいと思って……嘘ついてごめんなさい」


 するといつの間にかゼロ距離になっていた。体を引き寄せられ、両腕で包み込まれる。温かい体温を感じ、耳元では息遣いが聞こえた。


「手作り――どうりでイリィから甘い香りがするわけだ」


 匂いをかがれていることに気づき、たちまち体が熱くなる。そこまで香りが移っているとは思わなかった。おかげで疑いが晴れそうなので、ホッと胸をなでおろす。


「シェフの方に教えてもらいながら、沢山作ったからかなぁ」


 何気ないひと言にバルザックの肩が揺れる。不意に目線が合うとまたしても目が笑っていなかった。


「ねぇそのシェフってもしかして男の人?」

「えっ……うんそうだよ」

「ふーん。そいつと浮気でもしてたのかなぁ」


 とんでもない勘違いをされていることに気づき慌てる。


「違うよ! その人はお父様よりも年齢が上な方で、妻子持ちなの」

「へぇ? 男と会ってたことには変わりないよね。まぁイリィは間違っても浮気なんてしないか」


 ブンブンと音がしそうなくらい首を上下に振る。からかわれているようにしか思えなかった。ホッとしたのも束の間。アイリスは耳に温かい感触を覚える。声にならない声が口からこぼれ落ちた。耳を甘噛みされたのだ。両手で耳を押さえ、急いで距離を取る。


「私はチョコレートじゃありませんわ!」

「なぁーんだ、甘くて美味しいのに」


 これでは心臓がいくつあっても足りない。


「とっとにかく。はい! こっちが本物のチョコレートなの」

「ふふっありがとう」


 緊張しながら目をつむり差し出す。しかし一向に受け取らない。そっと目を開けると、ただそこで目を細め微笑むバルザックがいる。仕方なく箱を開けて見せる。


「お口に合うといいのだけれど、一生懸命作ったの」

「あぁ。とっても美味しそうだよ。食べさせてくれるかい」

「えっ……あっうん」


 少し恥じらいが混じる。

 箱の中から一番美味しそうなものを選んでそっと摘む。恐る恐る口元へ運んだ。大きく開いた口の中へ一粒のチョコレートを放り込む。するとアイリスの手首を掴み指先もろとも口の中に含んだ。


「へあっ!?」


 指先から体中に熱が伝わっていくのを感じた。すかさず手を引っ込める。


「ふふっかーわいいなぁ」


 甘い雰囲気に耐えきれない。両手で顔を覆い隠すと、部屋へ逃げ帰った。風を切りながら走るその様子に、周りの使用人たちが驚いている。そのことには目もくれずに。

 扉を開け勢いよくベッドにダイブする。そして枕に顔を埋め足をばたつかせた。


「バクの意地悪ぅ……」


 バルザックは去っていくアイリスを愛おしそうに見つめながら呟く。


「あーぁ、一生部屋に閉じ込めておけたらいいのに」


 その願望をアイリスが知る日は来るのだろうか――。

最後までお読みいただきありがとうございました。


実はバルザックの愛称を決める時、悩んだんです。そして思いついたのが「バル」でした。酒場を彷彿させてしまうのですが「ザック」よりはいいかなと。リュックサックを思い浮かべてしまうので、ちょっと私的にNGでした。しかしアイリスに愛称で呼ばせようと思った時に困ったんですよね。もう「バック」しかない。これではカバンになってしまうと。そして縮めればいいじゃん。と「バク」になりました。カバンよりは動物かなと。バクは悪夢を食べると言われているので、こちらの方がしっくり来ました。実在のバクは悪夢は食べないらしいですが。

愛称ありきで名前は考えていないのですが、少しは意識した方が良さそうですね。


それではまた別の作品でお会いできたら嬉しいです!

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