ごく普通の、幸せな毎日
私の名前は風上伊緒
ごく普通の女子高校生。
テストでも平均以上を取って、演劇部にも毎日行って、毎日復習と予習をして、時々数少ない友達と遊びに行ったりして……
どこにでもいるような凡人。夢も特に考えたことがない。
一つ違うとしたら、「感情がない」。正確にいえば「感情が表に出ない」だけど。
昔から周りによく言われた、それで離れていく人も少なくなかった
でも、母さんと親友の|美香だけはずっと一緒にいてくれた
私は、二人がいるだけで十分幸せだった。
「一緒の大学行こうね!!」美香とそう約束したから、毎日一生懸命勉強している。
なのに、どうして……?
桜が咲き始める静かな夜、私の平凡な日々に傷が入った。
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僕の名前は瑞凪怜。
一人称は「僕」だけと、性別は女だ。見た目は中性的だから、よく逆ナンされちゃうけど(笑)。
二年前、事故で両親が他界してから「神奈」という大学生?のお姉さんに引き取ってもらってる。
とても頭がよくて、料理がうまくて、自慢の姉貴なんだ!
僕の目が生まれつき変なことも受け入れてくれた。最初は驚いてたけど、
「仲間だね。私も左右で色が違うの」って、カラーコンタクトで隠していたきれいな青色と赤色の瞳を見せてくれた。僕も、桃色と紫色の瞳を見せた。
今まで「気持ち悪い」とか「バイキン」とか罵声しか浴びたことのなかったこの目を、そして僕自身全てを、姉貴は受け入れてくれた。
なのに…なんで……?
中学の卒業証書を持って帰ってきた家には、不気味なほど静寂が広がっていた。
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「ふぅ……今日はここまでにしよっかな……」
みとの名前は櫻井美都。黒枯教育大学に通う、薬剤師候補二回生。
不治の病「ロット=フラワー」のワクチン開発に勤しむ裏で、政府に隠れて先輩と禁忌の研究を行っている。
密告の可能性がある以上、内容を簡単に言えるわけがない。
今日も夜中にひっそり、二人で研究に勤しむ。
「先輩!遅れてすみませんみとです!!……ってあれ?先輩?」
いつもはこの時間にいるはずなのに……先に準備しておきますか、、
「ん?昨日片づけたよね…?」
机の上に書類が散らかっている。おまけに何個か実験器具が割れて床に散乱してしまっている。
「え…なにこれ?」
血がついた水色のリボン。このリボンは、いつも先輩が付けていた物。先輩の身に何かあったんじゃ……、
付いた血の跡をよく見ると、文字みたいになっていた。
『 Run away 』
「逃げろ…?どうしよ……とりあえず帰って、明日いろいろ隠そっかな、、」
今となっては後悔でしかない。さっさと痕跡を消して、どこか遠いところへ逃げていたら、
「こんなことにはならなかったのにな…笑」
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「歌いすぎた…喉が痛い……」
「もー何してんの(笑)」
あたしの名前は藤原菫。で、一緒にいるのはマブダチの茜。
今日も茜とカラオケに行って、推しの永遠ちゃんのオリ曲たくさん歌ってきたんだ!
おかげで喉がらっがらなんだけどね……。
お察しの通り、あたしたちはドルオタってやつで、そこそこグッズも集めてたりする。
「まって!今日8時からのテレビでとわちゃんゲストで出るらしいよ!!アイドル特集だってさ!!」
「マジで!?絶対見る!!!」
茜は情報収集力が半端ない。とわちゃんの情報は大体茜からもらってる。ほんとどこからそんなに情報が湧いてくるんだよ~、その力分けてほしい…。
「あやっばい、門限過ぎそう!!ごめん、近道していい?」
「え?いいけど……近道なんてあるの?」
「最近見つけたんだ~、ちょっと暗いんだけどね。でも結構短縮できるの!!」
そのまま茜に着いていった。やめたほうがいいんじゃないって言えたらよかった。
でも、こんなことなるなんて、誰も想像できやしないよ……。
【 黒枯街-Kuroko gai- 】
水仙国の都心部にあたる場所。五つの街の中で最も人口が多く、栄えている。
多くのビルや娯楽施設、飲食店が立ち並ぶので、毎日たくさんの人で賑わっている。
瑞凪怜、櫻井美都、藤原菫の出身地。