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第2話 緊急会議

 

(静かだ……)



 私は今、地下牢獄に閉じ込められている。

 どうやら私のもつ【闇の魔導士】という職業が問題だったらしい。

 詳しいことはわからない。何の説明もなくここに連れてこられたのだ。






「鑑定!」



 1人に対して魔術師3人……多いな。

 それに――隠されてはいるが、騎士の後ろで倒れている者たちのことも気になる。死体か?

 クラスメイトたちはおそらくこのことに気づいていない。



「こ、これは……」



 魔術師たちの様子が変わった。

 驚きと焦り、恐怖の感情が顔に出ている。



「コイツを捉えろ! 殿下! コイツは悪魔です!」



 叫び声と同時に、私は複数人の騎士に取り押さえられた。

 抵抗したところで何も生まれない。私は大人しくしていた。



(ひそひそ……)



(黒崎が悪魔?)



(あれやばくない……?)



(確かにもともと何考えてるのか、わからなかったけど……)



 クラスメイトたちの視線が刺さる。

 私のことより自分の身を心配しろよ、とは思ったが。

 まあ、どうでも良い。



「なに!? 悪魔だと……なぜそんな奴が召喚されたんだ!」



 殿下さんの表情が険しい。

 悪魔とはそんなにも恐ろしい存在なのか。



「いかが致しましょう、殿下」



 表情1つ変えない私の様子が、火に油を注いでしまったらしい。

 皆さんの顔が憎悪の色に染まっていく。



「くっ、牢屋に入れておけ!」



(はは殿下……そんなに睨んでも何もしないですよ)



 これからどうしようか。考える時間が欲しい。

 ああ、牢屋なら静かか。落ち着いて考えられるだろう。






 ローダ王国、王都:アステリア。

 今夜、王城にて召喚者たちの歓迎舞踏会が行われる。

 主催者はこの国の王、アイン・アステリア・ローダである。


 召喚の儀は、第3王子のヴァイス・ローダが独断で行ったようだ。

 それを聞いた国王が謝罪の意を込めて歓迎舞踏会の開催を計画した。


 今回の件について話し合うため、当事者である第3王子と国王、宰相と騎士団長、魔法師団長が集った。

 議題は『27人の召喚者たちの処遇』と『悪魔と呼ばれた黒崎凛の処遇』についてである。



アイン:「ヴァイス! お前はなんてことしてくれたんだ! 勝手に召喚の儀など……しかも、異世界

     人を追放しただなんて……」



 国王は愚息のしでかしたことの重さに耐えきれず、頭を抱えながら嘆いた。

 彼は王位に就いてからひたむきに努力を続け、平穏な国を築いてきた。国民からも愛されている優秀な統治者だ。

 だが、そんな彼にも悩みがあった。息子たちとの関係である。特に第3王子のヴァイスは自由奔放が行き過ぎて、手に負えなくなってきていた。そして今日、彼は最悪のカタチで問題を起こした。



宰相:「陛下! お体に障ります! 落ち着いてください」



 この国の宰相、ドレーク公爵が国王をなだめる。

 問題に対して実際に対処するのは宰相である彼だ。この件に関して誰よりも腹を立てている。

 だがここで感情的になっても意味がない。だからこそ誰よりも冷静でいる。彼もまた優秀な人材だ。



ヴァイス:「何故ですか!? 魔王が復活した今、祖先を見習い、勇者召喚を行うのは必然でしょう! 

      しかも27人もの勇者を召喚出来たのです! 私のおかげだ! 感謝されることはあって

      も、責められる筋合いはない!」



 自分の行いをまるで反省していない様子。むしろ褒められると思っていたらしい。まるで癇癪を起こした子供のようだ。



魔術師団長:「私に断りも入れず、部下を犠牲にしておきながら何を言うのです! いくら王族といえ

       ど、許されることではありませんぞ!」



 勇者召喚の儀の際、魔法を発動した魔術師たち30人は召喚と同時に亡くなった。あのとき、黒崎凛が見た死体は彼らだったのだ。ヴァイスは彼らの上司である魔術師団長ルーカス侯爵に無断で儀式を行ったようだ。

 部下を見殺しにした第3王子に対する怒りと、団長としてきちんと指導ができていなかった後悔から感情が爆発した。



王国騎士団団長:「ルーカス! 落ち着け! 不敬だぞ! 殿下も落ち着きください。今は起きてしまっ

         た事象よりも、これからどうするかです。それが決まってから殿下の処遇を考えまし

         ょう」



 王国騎士団団長グレイスの鶴の一声で会議室が静かになった。

 彼の放つオーラは敵・味方問わず萎縮させる。



ヴァイス:「くそっ……」



 さすがのヴァイスもグレイスには敵わないようで、不服そうにしながらも大人しくなった。

 その様子を見た他の大人たちも冷静さを取り戻した。



アイン:「ふう……そうだな。話を進めよう」



 そこからの話し合いは順調に進んでいった。


 今夜開催される歓迎舞踏会の内容は早々に決定し、準備等は王城で働く者たちに任せることになった。

 いくら国王の指示とはいえ、1日で舞踏会の準備するのは不可能に近い。皆、舞踏会に向けて招待状や会場設営などに追われ、忙しなくしている。王城勤務のプライドにかけて成功させようと意気込んでいるようだ。


 続いて、召喚された勇者たちへの対応について。

 まずは勇者たちの衣・食・住を揃えなければならない。

 それからパーティー編成だ。勇者として生きていくならば修練が必要になる。彼らのスキルに適した師匠と訓練所を探さなければならない。決めることが山積みである。

 追放されてしまった者たちについては、情報不足により対処不可能と判断され、とりあえず様子見ということになった。ヴァイスいわく顔もまともに覚えていないらしい。


 そして――闇の魔導士、黒崎凛の処遇について。

 かつてこの国は災厄の悪魔によって滅亡しかけた過去がある。その正体は、初代勇者パーティーの1人であった闇の魔導士。力に溺れた闇の魔導士は自我を失い、殺戮者として多くの命を奪い、国を崩壊させた。だが不幸中の幸いか、【闇の魔導士】は召喚された勇者にしか授けられない特殊スキルであった。そこでローダ王国では2度と同じ災厄を起こさないよう、勇者召喚の儀を禁忌魔法としたのだ。



ドレーク:「これが1番厄介ですよ。闇の魔導士が召喚されるなんて……」



 宰相の顔に疲れが見える。

 長時間の話し合いはさすがに堪えたようだ。



ルーカス:「ですが彼女はまだ何もしていない。力を制御できれば問題はないしょう。私が責任を持っ

      て預ります」



 彼は闇の魔導士を引き取ろうと考えているらしい。

 魔導士を扱うのは魔法の専門家である自分が妥当であると考えたのであろう。



グレイス:「初代の闇の魔導士は、魔王討伐後に暴走したのだろ? 力の制御の問題なのか?」



 眉間にシワを寄せていたグレイスが口を開いた。

 魔術師団長のことは同じ国を護る存在として信頼しているが、今回の件に関してはかなり警戒しているようだ。



ルーカス:「導き手がいれば問題ない。それにこっちの都合で異世界から呼び出したというのに、突然

      投獄するなんてあんまりではないか!」



 人情に厚いルーカスは、黒崎凛の境遇に同情しているらしい。

 何としてでも助け出したいという強い意志を感じる。



ヴァイス:「私のせいだと言うのか! 悪魔だと騒いでいたのは騎士たちだ! 私は最悪の想定を考えて

      判断したまでだ」



 再び彼の怒りに触れてしまったようだ。

 先程まで大人しくしていたのが噓のようにまた騒ぎ出した。



グレイス:「それはつまり私の部下たちのせいだと?」



 グレイスがヴァイスを睨みつける。

 部下をコケにされて気分を害したらしい。



アイン:「闇の魔導士には危険性がある。それに変わりはない。私は国王だ。国に少しでも危険が及ぶ可

     能性があるというならば……彼の者は処刑するべきだろう」



 会議室が重たい空気に包まれる。

 国を案じての判断だが、黒崎凛のことを考えると心苦しいものがあるのだろう。判断を下したアインですらも苦い表情をしている。

 第3王子のヴァイスだけが当然だろうという表情をしていた。



ルーカス:「陛下! それはあんまりです!」



 最後までルーカスだけが国王の判断に反対していた。



お読み頂きありがとうございます。

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